第九十四話 第三都市のダンジョンに入ってみた
第三都市のダンジョンは一つだけなので、そのまま【第三都市のダンジョン】。
そして交易都市群サザは、一つの都市に一つのダンジョンがあるのであった。
他にも都市の外れにダンジョンはあるが、古くからあるダンジョンの周りが発展し都市になったと言う歴史がある。
僕とサクラで今日は直接ダンジョンに来ている。依頼を達成するのは、後から素材採取した物の提出で良いだろうと考えていた。
テザン皇国も交易都市群サザも、ダンジョンの入り口で名前を言うだけで入ることができた。所属している組織がある場合は伝えておいた方が良いそうだ。
僕とサクラは名前を名乗り、冒険者プレートを提示してダンジョンに入った。
第三都市のダンジョンは階層の構造がランダムで平原から洞窟がたなど幅広い地形が現れる。
階層によって出現する魔物のランクは決まっているようだ。
だからこそ、様々な冒険者がこのダンジョンに挑んでいる。
ある者は様々な魔物と戦い経験を積むため。
ある者は魔物の素材を採取するため。
このダンジョンはそういった経験を積むために挑む冒険者も多い。
そして僕達にとって幸運なことは、偶数階に転移陣があったことだ。
これでボス戦を繰り返す時間が短縮されると喜んだ。
普通の冒険者は、一度Sランクの魔物と戦うとインターバルが必要だが、僕達はチートだ。
普通の冒険者には出来ない短時間での周回プレイが出来ると思っている。
安全第一な生き方も、ロマンにはかなわない……
「ラウール? 今日はどの辺までいく?」
サクラが一階で聞いてきた。
「ん~……一先ずは夕方まで行けるところまで行こうか。結構広いみたいだから時間はかかるかもね。おそらく今まで挑んだダンジョンで、一番攻略難易度が高いんでないかな?」
そう言いながらも、魔力、気配察知を駆使し順調に攻略が進んでいる。
まだまだ低階層……魔物も余裕で倒すことが出来る。
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昼食を摂り先程までと変わらぬペースで先に進んだ。
現在は十階。
このままであれば今日中に二十階近くには到達できると思う。
まだ魔物はEランク程度……余裕だ。
そんなこんな順調に攻略を進めているうちに、外の時間では夕方になっただろう。
「サクラ、今日は二十階の転移陣で一旦帰ろう。もう夕方になるしね。」
そう僕が伝えるとサクラは同意したため、二十階の転移陣で入り口に戻った。
「意外に簡単だねラウール。このままのペースなら一週間もかからずにボスまで行けそうだね?!」
「そうだね。この後の階層の魔物の強さや階層の広さにもよるけどね。」
そう言いながら僕達は宿屋に戻り休んだ。
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ダンジョンに潜り五日後、四十八階までたどり着いた。
「これは確かに稼げるね。Aランクの魔物が定期的に現れるなんてね。Sランク冒険者は魔物の卵がでなくても十分な稼ぎになるね……。サクラは大丈夫?」
「もちろん大丈夫よ! これくらいなら……傷もつかないわ!」
さすがにサクラも余裕だった。
Sランク冒険者と言っても、僕たちの強さはランクだけでは判断できないレベルになっている……
ランクを超越してしまったと僕は思っている。
しかし僕は慎重な男だ。
自分は強いと思っていても、命を大事にが基本だ。
「どうする? 一回くらいならボスと戦う時間はあると思うけど、殺ってみる?」
「……ラウール……今日は帰って休みましょ。明日は朝から挑んで、連戦することにしましょ。四十九階がどれくらい広いかはわからないけど、四回位はボスと戦う時間があるんじゃない?」
「そうだね、ここまで駆け足で来たからね。宝箱も最低限しか開けてないし、四十九階はもう少し探索しつつも、先に進もうか。」
この時点で中ボスはSランクの中でも弱いと言われている魔物が出現していた。
僕はこれはさすがにSランクの冒険者パーティーでないと、攻略は出来ないと感じた。
……
一度宿で休み、朝が来た。
「じゃあ今日は一度ダンジョンを制覇しましょ。それで魔物の卵がでなければ、周回しましょうねラウール。」
「こちらこそ頼むよサクラ。油断せずにね。」
そんな朝のやり取りの後で、ダンジョンを攻略しに向かった。
四十九階は宝箱も豊富だが、Aランクの魔物も複数出現していた。討伐できる冒険者なら稼ぎは万全だ。
しかしリスクも高い……
おそらく僕達の中でも、一階分での稼ぎは過去最高だろうと話ながら、ボス部屋の前までやって来た。
四十八階を終えて転移陣。
四十九階を攻略し、上に階段を登るとボス部屋のみ。
これなら攻略を繰り返すことは簡単だ。
あとはボスがどの程度なのか確認したら万全だと僕は考えた。
「サクラ……このダンジョンで初めてのボス戦だから、油断せずにね。」
「わかってるわよラウール。ラウールこそ油断しないでね。一回目だけは……余裕をみせないで全力よ。」
そう言いながらボス部屋の門を開けた。
……
ボス部屋の中には、【ゴブリンロード】がいた。
「確かにSランク! 殺ろうサクラ!」
「行こうラウール!」
そう言って僕達は全力で魔法を唱えた。
僕は風の魔法を……
サクラは火の魔法を……
ただ全力で……
……
……
僕達は目の前の光景に絶句した。
火災旋風…………
これは、やり過ぎた……
……
目の前ではゴウゴウと炎が踊っている……
全てを焼き尽くすように……
僕とサクラは魔力を纏い、熱さは防いでいる。
「やり過ぎたねサクラ……」
「そうみたいねラウール……。誰もいないから適当詠唱もなかった……無詠唱なんだけどね……」
……僕達は炎が収まるまで立ち尽くしていた。
……ゴブリンロードは、存在感もなかった……




