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第七十六話 木陰の光と話し合い

今日もラウール達は冒険者ギルドに向かった。


ダンジョンを一日で制覇したため、疲労も残っていた。だから朝一番とはいかなかったが、昼食にちょっと早い時間には冒険者ギルドについた。


今日の目的はミノタウルスの魔石の納入依頼が達成になるのか確認をする事と、【木陰の光】が無事に冒険者ギルドに来たかを確認するためだ。



冒険者ギルドのドアを開けるとすぐに駆け寄ってくる女の人がいた。



「昨日はありがとう。私の顔を覚えてる?」



目の前には【木陰の光】のビビアンさんがいた。

【木陰の光】は二十五歳くらいの見た目で、よく言われる『バランスの良いパーティー』の『回復役』ような格好をしている。



「覚えていますよ。あれから無事に戻れましたか?」


ラウールは返事をした。


「少し時間はかかったけど無事に戻れたわ。ありがとうね。それで、今日はデボルトに言われて……私が代表して冒険者ギルドで待っていたの。」



「そうなんですね。それでご用件は?」



「ご用件なんて、お礼をするってデボルトも言ってたでしょ。だからこの後一緒に来てほしいのよ。」


ビビアンさんがお願いっといったポーズをした。



「ちょっと用事を済ませてからでよければ良いですよ。でも、お礼なんていらないのに。」



「あれだけしてもらって、お礼もしないなんてできないわよ! それに、命の恩人にはもっと対等に話してほしいな? そんなに丁寧に話さないで!」



ラウールとサクラはその言葉を聞いてもう少し砕けた口調で話そうと決めた。


だが話し方よりもまずは受付で用件を済ませて来ると伝え、一旦ビビアンと別れた。

ビビアンは「じゃあ休憩スペース」で待っていると離れて行った。



ラウールとサクラは受付を見て、シトカさんを探し、シトカさんの受付の列に並んだ。



・・・



「シトカさん。昨日の依頼は達成になりましたか?」



「挨拶もなしに……いきなりーーなんて、依頼は達成よ。ちょっと損をすると思うけど。」



「ちょっと損って?」



「依頼達成を主に交渉していたので、魔石の価格がSランクの魔石としては安くなったのよ。それでもある程度は高額だけどね。依頼主は喜んでいたわよ、良い魔石を普通より安く手に入れることが出来たから。」



「……それは良かった。それくらいなら良いです。じゃあ【黒猫】が依頼達成という事で手続きをしてもらえる?」



そう言われたシトカは、完了手続きをしてから冒険者プレートをラウール達に返した。



「これで完了です。今日は他に何か依頼を受けて行く?」



「今日はこれで帰ります。【木陰の光】とちょっと用事があって。」



「色々と聞いたわよ。そのことはまた今度ね聞きたいわね。 次に来た時のあなたたちを楽しみにしているわ。」



手続きを終え、ラウール達はビビアンと冒険者ギルドを出た。




ビビアンさんは僕たちにーー【木陰の光】が拠点にしている家へ案内してくれた。


パーティーメンバー四人で一緒に住んでいる。

拠点を移すつもりがないのなら、家を持つほうが良いと教えてくれた。


そして家の中に招待され、皆が揃っていると言う一室に向かった。


招待された部屋では、ビビアンさんを入れて四人が揃っていた。

みんな大きな怪我もなく元気そうだ。


僕が皆を見ていると、一歩前にアランさんが出てきた。



「ありがとうラウール君。おかげでこの通り命があるよ……本当にありがとう…………。」


そう言ってアランさんは僕の手を握った。握ったきた手は力強い。



「いえいえ、目の前であのくらいの怪我を負っているとそのままにはしておけませんよ。」


・・・


「それが普通じゃないんだよ……。いくら余裕があるとはいえ……ボス部屋の前で無駄な魔力を使ってくれる冒険者なんて……少ないからな。」



ぽかんとした表情を浮かべてしまったかな。

僕の考え方とは違った。

やはり困っている人をそのままには出来ないからね。



「さすがに目の前で困っている……助けることが出来る人がいたときは、助けるでしょ~。」



「それが普通ではないんだ。あの場面は見捨てるところだ。何といっても、少しの油断で自分が死ぬかもしれないのだからな。」



そんなものなのだろうか?やっぱりここまで来ても前世の意識がとれていないのだろうな、と僕は考えていた。


するとデボルトさんが会話に入ってきた。



「本当にありがとよ! あの時の約束をここで果たす。これが俺たちの全財産だ。これで足りないのなら、もう少し待ってくれ。」



そう言って僕の目の前にお金が入った袋を出した。しかし、元々お金を貰うとは思っていなかったので困る。



「受け取れませんよ……というか、いりません。」


そう言って、お金の入った袋をデボルトさんに押し付けた。



「なぜだ? ただで人を助けるなど……」



「いいんです。あなたたちは悪い人ではないでしょ?こうやってわざわざ僕を呼んでまでお礼をしてくれた。お礼の言葉だけで良いんです。もし気がすまないのであれば、僕たちが困っていることがあった時に……その時に協力してください。」



目の前の四人は驚いた表情をした。



「いいのか、本当に? 普通であれば高額な謝礼を請求する状況だぞ……」



デボルトさんの言葉を聞いた後も僕達は、「それで良い」と返事をした。




僕はそれ以上お金の話をするのは無粋だと言って、お互いのパーティーについて話そうと提案した。


【木陰の光】Cランクで、この街を拠点とし、主にダンジョンの依頼を受注していた。そして、パーティーメンバーで怪我人が出たため、少しの間冒険者活動を街中主体にしていた。そして復帰後一番に選んだダンジョンであんな目に合ってしまったと説明してくれた。


ラウール達はAランクとCランクの冒険者で、旅をしながら面白い依頼や、珍しい依頼がないか探している事。自由に過ごしたくて冒険者になった事。そして目立ちたくないことを話した。



それを聞いたクムートさんが口を開いた。



「目立ちたくないって……あれで?……サクラさん……思いっきり目立っていますよ。」



サクラは目を見開いた。


「へっ!?」



「俺達と会うまでに、大勢の冒険者に見られなかった? さすがにボス程に強い魔物はいなかったけど、一撃で魔物を退治している姿を見た冒険者で……噂になっているぞ。あの……黒い悪魔はなんだって?」



「ぶふぉ!!」


僕は噴出した。



死神でなく…………悪魔!



「ぶふぉ!!」



サクラがそう呼ばれている状況を想像して……もう一度噴出した。


この世界の悪魔と言うのは、魔物を指すものではない。魔族もいるが、魔大陸にいる魔族と言う種類の種族だ。

そしてこの世界の魔王は、魔物の王だ。だから、悪魔と言う言葉は、怖い者を指すときに人族にも使われる言葉でもある。



「らう~る?! ……やってしまったのかしら?」



「やってしまったねサクラ。悪魔と死神とどっちがいいのかな?」



首を激しく横に振り、サクラは僕に向かって言った。


「どっちも嫌よ!! 何この物騒な名前!? 二つ名になっちゃうの~!!」



そこにビビアンさんが


「冒険者ギルドで聞かなかった? 私達はあなたたちより後に冒険者ギルドに報告に行ったけど、もう黒い何とかってみんな言ってたわよ?シトカさんは何か言わなかった?」



あの時のシトカさんの様子は……これのことか。



「私は黒い悪魔……ラウールは漆黒の翼……私たちは【黒猫】……黒いね…………腹黒い。」



「サクラ、そこでなぜ腹黒い……。そして僕の二つ名も……とばっちり!」



「「「「漆黒の翼~!」」」」


【木陰の光】のメンバーは驚いている。


話を聞くと、道具使い兼荷物運び情報網でうわさが流れていると言う。


クムートさんは道具使い兼荷物運びだと言う。


そのクムートさんに届いたうわさ。


あるAランク道具使い兼荷物運びが言っていたと。


【漆黒の翼】を馬鹿にするなと。


【漆黒の翼】は自分の害になる者には容赦はないと。


【漆黒の翼】は実はいい奴だと。


あの者には誠実であれ……と。



それを聞いた僕達はがっくりと肩を落とした。


しかし【木陰の光】のメンバーは興奮して色々とこれまでの旅の事を聞いてきた。


僕達は夕飯までごちそうになってから宿屋わかばにもどった。



クムートは教えてくれた、情報の発信源と言われる者の名を…………





デーブン……何してくれる!!





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