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第七十五話 闘牛の迷宮依頼達成報告

なんで今回に限ってボスがミノタウルスの変異種なの……



ようやくデボルトの怪我が治ってから初めてのダンジョンだったのに……



普段の【闘牛の迷宮】だったら私達で余裕で攻略できる場所なのに。



今回に限って初めてのミノタウルスの変異種……



あっ、アランに攻撃が……


あっ! クムートが大怪我をした……


回復魔法を何度も唱えクムートの傷は回復した。


だけどクムートを回復している間にも、デボルトがミノタウルスの攻撃を受けている……



ミノタウルスは実力差をわかっているのか……手を抜いている?


ほどほどに傷つくように攻められている感覚だ……



あっ! デボルトが!



あっ!アランの盾が……腹部に斧が……



クムートが……アランに攻撃をした後に動きの止まっているミノタウルスに何かを投げつけた。


パフッ



ミノタウルスが頭を振り、何かを振り払おうとしている……



クムートが「逃げるぞ!」と叫んだ。



デボルトがアランを抱え「撤退だ!」と叫んだ。



私たちパーティーは何とか門から外に出ることが出来た。



ーーーー


ーーーー



アランに命の危機が迫っている……


だけど私にはもう魔力がない……


傷を少しでも回復出来たら……


クムートも回復アイテムを全て使いきっている……


どうしよう、私にはもう何もできない……



私が失意に陥っていると……


「僕は回復魔法が使えますが、手助けは必要ですか?」


そう、男の子の声が聞こえた。



気休めでもいい……アランを回復してほしい。


そんな思いで、パーティーのみんながお願いした。


ダンジョンの外に出ることが出来たらいくらでもお礼をする。


本心からそう思った。



するとその男の子は詠唱を始めた。


そして『回復』と唱えた後、信じられない出来事が。



アランの傷が完全に回復している……


初級回復魔法?


私の知っている回復はこんなに効果が高いものではない……


何が起きているの?



男の子にデボルトは中のミノタウルスについて説明をした。


Sランク相当の魔物だと思うから、引き返したほうが良いと。



しかし男の子は先に進むと譲らない。


流石にそこまで覚悟をした男の子を止められるものではない。



その男の子はAランクと言った。


そしてもう一人女の子?がいた。


初め気づいたときには『ひっ!』と声を上げそうだった。


私たちとは違う雰囲気を纏った顔をしている。


けっして変な容姿ではない。


むしろ好ましい、かわいいと思える顔だが、やはり見慣れた顔ではない。


その女の子が持っている武器……


身に纏う装備品……


まるでレイス……死に導く者……死の神、死神!!



あの子達の無事を祈りながら、私たちは帰還するために転移陣を目指している。



どうか無事でラウール君。


死なないでサクラさん。



冒険者ギルドでお礼を言いたいから……




~~~~~



ラウールとサクラは、冒険者ギルドで依頼達成の報告をしていた。



「シトカさん。迷宮を攻略して、ボスのミノタウルスの魔石を持ってきました。」



一瞬目を見開きシトカは驚いた表情をした。



「速いですね……通常なら数日はかかると思うのだけど……。じゃあ魔石の提出をお願い。」



そう言われたラウールはシトカの目の前に、ミノタウルスの変異種の魔石を置いた。



「……ラウールさん!? これはもっと上位の魔物の魔石ではないの? この質は…………Sランクの魔石?」



「そうなんですよーー変異種が出て……僕たちの前に入ったパーティーが怪我をして出て来ていましたよ。多分もう少ししてからここに来ると思うので、確認してください。あと……サクラ、冒険者プレートを見せてあげて。」



「わかったわラウール。はい。」



そういってシトカにサクラは冒険者プレートを渡した。



シトカは冒険者プレートを謎ボックスに入れると、また目を見開いている。



「確かに……ミノタウルスの変異種……」



「そう、ミノタウルスの変異種だったよ。ちなみに黒ね。全力を出さないと危なかったよ。」



「危ないですむもの……ですか……」



「僕達の魔法は軽くはじかれたから、全力で魔法を使いました。今までで一番の強敵でしたよ。おかげさまで、僕達の強さはまだまだだと思い知らされました。もっと強くならないと、危険な依頼は受けられませんね。」



シトカはラウールを見つめていた。



何を言っているんだこの子は……Sランク相当の魔物に全力で行くのは当然ではないか。それも、怪我をするところでした? 無傷? どこの高ランク冒険者ですか……。普通のAランク冒険者であれば、何十人必要な魔物かわかっていないのですか……。



「ラウールさん、そんな問題じゃないのよ。Sランクを二人で討伐した? Sランク冒険者でも二人で討伐は無理なのよ……。Sランク以上の魔物は、今までの法則と違って、魔物一匹に対して人間三人で討伐できる魔物ではなくなるのよ……」



しまった!これくらいできると思って、目立ってしまったか?そうラウールは考えたが、もう取り返しはつかない。



「でも、サクラが最後は首を切ったんですよ……。ミノタウルスも調子が悪かったとか?」



「……調子って……。魔物が調子が悪くても、ダンジョンですよ? ダンジョンのボスに調子の波はありません!! それも首を切った? 黒のミノタウルスはちょっとやそこらで切れませんから~!」



そこもか~。また失敗したと思ったが、ここは出来てしまったで通すしかないと思ったラウール。


「きっとサクラの大鎌が良かったんですよ。切れ味抜群な武器だからこそですよ。」



「大鎌? 今日報告にあった、ダンジョンで大鎌をもって魔物を狩っている者がいたと言う……」



はっ!とサクラが反応した。サクラはここでその話を大きくしたくない。


そこでサクラが口を開いた。



「そんなことより、これで依頼は完了でいいの?」



「そんなことって……。これは、依頼主に確認が必要よ。ミノタウルスの魔石が欲しいと言う依頼だから、変異種でも良いのか聞かないといけません。」



「そうなの? じゃあ今日中には結果はわからないのね?」



「ごめんなさいね。明日以降になると思うの。それか、もう一度ミノタウルスの魔石を手に入れて来るかね。」



それを聞いたラウールはさすがにめんどくさいと思った。



「シトカさん。依頼主に確認をお願いします。もう一度行くかはそれを聞いてからにします。出来ればランクに合わない金額でも、依頼が達成になったらそれでいいので。サクラもそれでいい?」



「いいわよラウール。……じゃあシトカさんよろしく。」



二人はうまくごまかせたと思った。

強さも大鎌の姿も。



「わかりました聞いておきます。ただ、戻ってくる冒険者に話も聞いておきますので……。気になるから……」




~~~~~



冒険者ギルドから宿屋わかばに戻ったラウール達は祝勝会ではなく、反省会を開いた。


二人とも交渉事が下手なことが原因だった。


どうしてもそのまま話してしまうラウール。


誤魔化そうとしてもうまく次の言葉が出ない二人。


ロマンを追ってしまったサクラ。


どうしたら気ままに、それなりに旅ができるのかと考えていた。


快適な旅は望むところだが、目立つことはしたくない。


しかし今後もロマンを追う事もあるだろう二人。



「サクラ……大鎌はやめる?」



「嫌よ! これだけは譲れない。」



「だったら黒い装備を止める? ローブでなく鎧とか?」



「それも嫌よ、動きにくい。だって、【黒猫】から黒をとったら…………ただの猫よ。」



「黒い髪だけでいいじゃないか。」



「頭だけ黒い猫を黒猫って呼ぶ? 嫌よ、せっかくラウールと初めて決めた名前なのに。」



「……そうだね、思い入れがあるものね。じゃあ、ここまでの行動を僕達の常識ラインにしよう。これ以上は目立つことはしない。黒ローブと大鎌まで。ニャンの者は人のいない時に。」



「そうね! けど、ニャンの者はやらないわよ!」



サクラは拒否した。


ラウールは勢いで押せると思ったのに。


自分は恥ずかしいけど、人がやっているのは見ていたいと。



そして考えた。


いつかまた不意打ちでニャンの者を出させようと……




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