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続魔獣の壺  作者: 夢之中
24/28

作戦始動


宇宙歴20年、3月6日午後、安全な場所


ルードフは、総合指令室にいた。

作戦開始まで、あと1時間。


ルードフ:「避難は完了したか?」

音声:「現在の避難状況は96.5%です。

   およそ1時間で避難完了予定です。」

ルードフ:「そうか。

     作戦に変更はない。」

音声:「作戦開始まで、59分です。」

ルードフ:「作戦開始10分前に知らせてくれ。」

音声:「作戦開始10分前にお知らせします。」


ルードフは一通り指示を出し終わると、

昨日のゼロスとの会話を思い出した。


-----


ルードフ:「お前は、魔獣は不死身だと言った。

     しかし、神の槍の攻撃で消滅したではないか?

     これでも不死身だと言うのか?」

ゼロス:「それは、人間の考える不死身ってことだよね。」

ルードフ:「人間の考えるとは、どういう意味だ?」

ゼロス:「そうだ。

    一つ質問しよう。

    人間は、肉体を失ったらどうなる?」

ルードフ:「死ぬに決まってるだろう。」

ゼロス:「そう、それが人間の考える死だ。」

ルードフ:「まさか、魂とでも言うのか?」

ゼロス:「ふーん。

    まさか君からその言葉が出てくるとは思わなかったよ。

    君も見たよね?

    黒い霧の中から生まれる魔獣を。」

ルードフ:「まさか、、、。

     あの霧が魔獣の正体だとでも言うのか?」

ゼロス:「うーん。

    半分正解で、半分不正解かな。」

ルードフ:「・・・」

ゼロス:「君達の言葉で言うと、あの霧から生まれた。

    かな?」

ルードフ:「生まれた?」

ゼロス:「教えられるのは、ここまで。

    そうだ、特別にあと1つだけ教えよう。

    あの霧は人間も生み出している。

    つまり、人間がいる限り、

    全てを消し去ることはできないんだ。」

ルードフ:「どういう意味だ?」

ゼロス:「どういう言う意味って?

    そのままの意味だよ。

    そうだ、一つ昔話をしよう。」

ルードフ:「・・・」

ゼロス:「君達の歴史が始まる遥か昔。

    そう、人間と魔獣の間で最後の戦いが行われたんだ。

    6人の英傑が魔獣の王の城に乗り込み、

    見事に魔獣の王を撃退した。

    そして、巫女達の力によって封じ込められた。」

ルードフ:「巫女?」

ゼロス:「そう。

    巫女のみが魔獣の王を撃退できるんだ。

    しかし残念ながら、もう巫女はいない。」

ルードフ:「なんだと。

     魔獣の王とやらは、

     もう撃退できないとでも言うのか?」

ゼロス:「そう慌てる必要は無いよ。

    僕が巫女の代わりをしよう。」

ルードフ:「何の戯言だ。

     貴様がこの災いを招いたのではないか。」

ゼロス:「僕は人類の滅亡を望んでいる訳では無い。

    さっきも言ったように、これは救済なんだ。

    この星の人類を少しでも長く存続させることが、

    必要なんだ。」

ルードフ:「なるほど。

     我々は囮と言う訳か。」

ゼロス:「やっと理解したようだね。」

ルードフ:「貴様が何を企んでいるのかは分からん。

     しかし、貴様の手を借りるつもりはない。

     我々のみでこの窮地を乗り切って見せる。」

ゼロス:「それは、残念なことだよ。」

ルードフ:「最後にひとつ聞かせてほしい。」

     貴様は何者だ?

     神か悪魔か?

     それとも別の何かなのか?」

ゼロス:「僕かい?

    僕は全能ではないよ。

    全能であったなら、こんな回りくどいことはしない。

    君達と何も変わらないんだ。

    ただ一つ違う事は繋がっていることかな。」

ルードフ:「繋がっている?」

ゼロス:「残念ながら、これ以上は答えられないんだ。

    最後に忠告をしておく。

    魔獣王の城の攻撃は止めた方がいいよ。

    それは人類の寿命を縮める事にほかならないからね。

    まあ、こんなところかな。

    また会えることを楽しみにしているよ。」


-----


ルードフ:(奴の目的は一体何なんだ?

     それに奴の言っている事は事実なのか?

      :

     奴の提案を受け入れるべきなのか?

      :

     いや、それはまだだ。

     ただ一つ言えることは奴を処刑することは出来ない。

      :

     まさか、それが目的か?

      :

     いや、あの言動、死を恐れているようには思えない。

     それよりも、もう少し情報を引き出す方が得策か。

      :

     )


音声:「居住ドーム04の駐留部隊から報告です。

   423部隊6名が避難誘導中に未確認飛行生物と

   接触した模様です。

   報告によると、体長は2m程度。

   胴体は人間と同様に四肢をもち、

   背中には蝙蝠のような翼を有しています。

   頭部は、犬のように鼻と口が飛び出しています。

   体毛は長く身体中を覆っています。」

ルードフ:「なるほど。

     (異世界で見た生物とほぼ同じか。)」


音声:「作戦開始まで、あと10分です。

   避難状況は99.9%になりました。」

ルードフ:「あぁ、もうそんな時間か。

     作戦フローの確認。」

音声:「作戦開始、1分後にミサイル発射。

   10分後に神の槍射出。

   着弾は15分後となります。」


今回の作戦は、神の槍と核による同時攻撃である。

同時といっても完全に同時ではなく、発射位置の違いによる

時間差が発生する。


ルードフ:「未確認建造物の衛星からの映像を映してくれ。」

映し出された映像は、古代の城のような建造物だった。

その上空を魔獣が、まるで蚊柱のように空を埋め尽くしていた。


   :

   :

   :


音声:「作戦開始、5分前です。」

ルードフ:「・・・」

音声:「居住ドーム04の駐留部隊から報告です。

   423部隊6名が避難誘導中に未確認飛行生物1匹と

   交戦した模様です。」

ルードフ:「それで?」

音声:「ハンドレーザーで応戦しましたが、

   死者3名、重症2名、軽傷1名です。

   未確認飛行生物は無傷の模様です。」

ルードフ:「ハンドレーザーが当たらなかったのか?」

音声:「最高出力で135発命中しましたが、

   体毛を焦がしたのみのようです。」

ルードフ:「体毛の覆われていない部分への

     命中は無かったのか?」

音声:「7発の命中が確認されていますが、

   行動を阻害するほどの傷を与える事はできませんでした。」

ルードフ:「そうか…。

     (やはりハンドレーザー程度では、

     役に立たないという訳か。)

      :

     (これ以上戦力を消耗するわけにはいかない。)

      :

     全兵士に緊急通達。

     交戦は禁止する。」

音声:「全兵士へ交戦禁止を通達しました。」


   :

   :

   :


音声:「作戦開始1分前です。

   作戦中止は10秒前まで可能です。

   カウントダウンを開始します。

   50,49...」


ルードフ:(この作戦で一掃する。)


音声:「10,9,8,7,6,5,4,3,2,1,作戦を開始します。

   なお作戦中止はできません。

     :

   未確認建造物の発光を確認。

   急激に光量が増加しています。」

ルードフ:「映像を。」


映し出された3D映像には、魔獣の城を中心に6つの塔らしき

建造物が映し出された。

各塔の最上部がうっすらと光を帯びていた。

その光はルードフの見ている間にも徐々に光量を増していった。

魔獣達は光を避けるように移動している。


ルードフ:「あの光は?」

ルードフは、その光に目を奪われた。

光は強く、そして大きくなっていった。

最終的には、魔獣の王の城、6つの塔を包み込んだ。

それは幻想的でもあったが、不安と恐怖も呼び起こした。


ルードフはゼロスの言葉を思い出した。

---

最後に忠告をしておく。

魔獣の王の城の攻撃は止めた方がいいよ。

それは人類の寿命を縮める事にほかならないからね。

---


ルードフ:(まさか、神の槍や核攻撃をも防ぐとでもいうのか?

     ありえん。)


   :

   :


音声:「神の槍の射出カウントダウンに入ります。

   30,29,28,...,3,2,1,射出。」


ルードフは射出映像を眺めながら静かに呟いた。

ルードフ:「人類は決して負ける事は無い。」


   :

   :


ルードフは、魔獣の王の城の映像を見ていた。

しかし、正体不明の光に包まれ、

その実像を見る事は出来なかった。


音声:「着弾まで、10,9,8,7,6,5,4,3,2,1,着弾。」

ルードフ:「???」

音声:「ミサイル着弾します。

   5,4,3,2,1,着弾。」

ルードフ:「なんだ?

     一体なにが起こった。

     何故何も起きない?」

音声:「正体不明の光が急速に減光しています。」

魔獣の王の城を包んでいた光は、すぐに消え失せた。

魔獣の王の城は何事も無かったように今もそこにあった。


音声:「アポロ01からの通信が途絶えました。

   現在調査中です。」

アポロ01、それは神の槍を発射した軍事衛星だった。

ルードフ:「なんだと!!

     直ぐにアポロ01の映像を表示。」

直ぐに映像が切り替わった。

しかし、そこにはアポロ01の姿は無かった。

ルードフ:(消滅?)

音声:「アポロ01は、何者かの攻撃により破壊された模様です。」

ルードフ:「破壊だと!!

     一体どうやって?」

音声:「破壊時の3D映像を再生します。」

再生された映像は、突然爆発したようにしか見えなかった。

音声:「解析の結果、

   高速で高温の棒状物質が衝突した模様です。」

ルードフ:「高温の棒状物質!?

     まさか。。。

     本作戦に参加した全ての基地の映像を表示。」

表示された基地映像を見てルードフは驚いた。

ミサイルを発射した基地の上空に

巨大なキノコ雲が映し出されていた。


HDDが故障し復旧に時間がかかってしまいました。


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