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遺跡浮上

 で、騎士が俺達を案内した神官に向かって何やら話をする。

 すると神官の方も事情を説明している様だった。

 やがて二人は俺達を職業神殿の部屋に押し込むと、各々報告をして行く。


「何があったんだろう?」


 割とすぐに、その答えは聞く結果となった。

 騎士と神官が出て行って数分後にギルドの代表がやって来る。


「えー……異世界人の皆さま、落ちついて話を聞いて頂けないでしょうか?」

「何かあったんですか? 神官も騎士も説明してくれずに部屋に案内されたんですけど」

「情報が錯綜しているからです。ですが、これはお伝えした方が良いとギルドが王に直接許可を頂いて来た次第です」


 なんだ? 何か異常事態でも起こったのか?

 それこそ、厄年の事件が起こったとか。

 その割に、ギルドの代表の態度に深刻さが無い。


「今から少し前、具体的には皆さまが聖剣の間に入った頃、各地の遺跡に変化があったと伝達が来たのです」

「それって……」


 偶然の一致で片付けるのはさすがに無理がある。

 黒本さんを初めとしたクラスメイトの一部が何かを感知したのと同じって事だよな?


「例えば、我が国の海にある遺跡が浮上した等、各地でそのような報告を受けた次第です」

「おお! もしかしてあの遺跡に挑む事が出来る様になったとかじゃね?」


 萩沢が興奮気味に立ち上がって言い放つ。

 まあ、ノリで言うなら間違いないかも知れない。


「ええ、ですから異世界人の皆さまを聖剣の間に案内した事による変化だと私達は考えております。もちろん、確定事項ではありません。そこで……皆様の中で調査をして頂ける方々はいないかとご依頼を出したいと思っている所です」

「もしかして遺跡の封印を解く剣だったとか?」


 ああ、ありそうだな。

 で、各地の遺跡で条件を達成すると伝説の剣が手に入る感じ。

 そういうゲームをやった事がある。


「よっしゃ! やってみっか!」


 依藤がやる気を見せる。


「遺跡に挑戦か……夢が広がるな」

「おうよ!」


 クラスのみんなも異世界に慣れたのか、揃って楽しげな表情をしてる。


「とはいえ、十分に注意しないといけない。石橋を叩いて渡るつもりで調査に出よう」

「「「おおー!」」」


 なんて感じで割と話し合う暇も無く、遺跡調査の依頼をみんなで請ける事になった。

 まあ、どっちにしても依藤達が調査に出かけて俺達は城下町での日常って感じなんだけどさ。


 結果で言えば、遺跡が浮上したと確認に行った訳だけど……中に入れなかった。

 まだ何か足りないって事で、黒本さんが遺跡前で発見された碑文を調べに行った。

 俺も依藤に付き合って、転移で強化合宿に行った海岸へ行った。


 確かに、水面に遺跡が浮上していた。

 俺達が遺跡だと思っていた所は、どうやら一番高い所だったみたいで……海上に城みたいな建物がそびえ立っている。

 海底から盛り上がってきたっぽい。


 何か……凄いな。

 で、入口っぽい所の扉を開けようとしたけど、ビクともしなかった。


「美樹が来るまでは無駄足になりそうだ」

「だな……」


 入り口に書かれた文字を見ると日本語っぽい文字に見えるのだが、俺達には読めなかった。


「進展があったら報告するから、羽橋はいつも通りにしていてくれ」

「ああ」


 ついでにLvを上げてもらい、俺は茂信の工房に戻った。

 で……黒本さんが遺跡に到着して碑文を読んだのだけど、解読は出来なかった。

 少なくとも読めるように作られた文字ではなかったそうだ。




「結局お手上げか?」


 茂信と萩沢とで工房に腰掛けて話をする。

 今や国は遺跡が動き出した事で随分と冒険者達が活気付いているとの話だ。

 俺も依藤と一緒に水中にあった遺跡を見に行った時は冒険者達が野次馬をしていて驚いた。

 どこの世界にも野次馬っているんだな。

 後は冒険者達はみんな揃って息まいて遺跡に挑もうと謎ときに躍起になっているらしい。


「どうなんだろうな?」

「もしかしたら侵入する方法があるのかもしれない」

「で、各地の謎を解いた者が最終的に聖剣の所有者になるって事かねー……」

「かもな。おっと、そろそろ日本に買い出しの時間か」


 俺はポイントを事前に金銭に変換させるためにポイント相転移を作動させる。


「ガウガウ」


 クマ子が俺におねだりを始める。

 これは日本で玩具か食べ物を買ってきて、って態度だな。

 しょうがないな。今日は蜂蜜でも買ってきてやるか。

 この前は起き上がりのビニールだるまを買ってきたし、まだ使えるだろう。


「ああ、はいはい。今日はクマ子の好きな蜂蜜を買ってきてやるぞ」

「ガウー」

「ニャー」


 あ、ミケが羨ましそうにしてる。

 魚でも買って与えるべきか?

 チャリッと日本円に変化させた所で、萩沢が俺を見て尋ねてきた。


「前々から思っていたんだけどさ」

「ん?」

「どうした?」


 茂信も一緒に萩沢に尋ねる。


「羽橋のその能力ってポイントを金銭に変えるって能力なんだよな?」

「ああ」


 もはや当たり前の様に俺はポイント相転移を使ってポイントを金銭に出来る。


「その気になれば」


 調度良いか。

 俺は百万ポイントを円に変換させて一万円札の束にして萩沢に見せる。


「こんな事も出来るぞ」

「おお……百万円だ! ……頬を叩いてくれ」


 ……しょうもない事を。

 俺は萩沢の頼みを聞いて頬を札束で叩いて見せる。


「ありがとうございます! おう! おー……すげー! 本当に百万円だ!」

「今の俺達からするとそんなに大金でもないだろ。萩沢、お前の作った人化薬だって百万ポイント使うんだし」

「わかってるけど! 札束だとやっぱり違うんだよ!」


 確かに俺も札束にしてみて、金の重さを実感してしまった。

 一日神殿で働くだけでこれが15束……。


「ってそうじゃなくて、羽橋のその能力ってポイントを金に変えるだけの能力なのかって話だよ」

「ん? 何かあるのか?」


 俺の返答に、茂信も改めて考え始める。


「幸成、そういえばお前、変な夢でそのポイント相転移を指摘されたとか言ってなかったか?」

「ああ、そんな夢を見たな」


 可能性がある様な夢だった気がする。

 特に気にしない様にしてたけど……確かに何か出来そうな雰囲気はある。


「正式名はポイント相転移って言うのか?」


 萩沢が今更になって答える。


「転移売買じゃなかったのか」

「そうだが……」


 説明がおせー! って萩沢が言い放つ。

 いや、別に良いじゃないか。

 そもそも前にも説明したはずなんだが。


「相転移って意味、羽橋はわかってるか?」

「本来の相転移だろ?」


 相変態とも呼ばれる、変化する相を現す言葉と言うべきか。

 統計力学だったかな?

 相はある特徴を持った系の安定な状態の集まりとして定義されるんだったか。

 気体から液体、固体へ変化、逆に固体から液体まで変化したりする全ての工程を含めて相転移と呼ばれる事もあるらしい。


「つまりポイントという気体を金銭って固体に相転移させたと思えば何も不思議じゃないだろ?」

「まあな。だがな、羽橋のその能力ってポイントを金に金をポイントにするだけの能力なのか?」

「その言い方だと別の物にも変化しそうな匂いがしてくるな」

「ああ、出来るかどうか試してみなきゃわからねえけどさ……経験値とか魔力に相転移出来るのかって思ってさ」


 俺は腕を組んで考える。


「出来るかもしれない。最初出た時はまだ森で、日本で物を買える事をどう誤魔化すかって考えながら実験したんだ」

「ポイントを金に出来ないかって感じか?」


 萩沢の問いに俺は頷く。


「結果的に日本の物をポイントで買えるって話で落ちついてそのまま進んだんだよな」

「ああ」

「まあ発想は間違っていなかったし、結果的には得をした。今もその能力のお陰で面倒な日本の金銭の調達をせずに済むんだし、文句はねえよ」


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