幕間
「全員そろったので、始めよう」
男の声が響く。
暗く静かな空間に響く。
「今回の件ではっきりしたみたいね」
「そうですね。彼は当たりで間違いないでしょうね」
「陛下もすっかり気に入ったのでしょう?
「ええ。今度はいつ会いに来ているのか、楽しみになされています」
「あそこに入るにはノルンの許可も必要なわけだからノルン方面も間違いないわね」
「過去、あそこを通れたものは誰一人として外れてはいません。今回もほかの事を複合的に考慮してもまず間違いはないです」
「だいぶ無理をしたみたいね。下手をすると陛下の身に危険があったかもしれないのに」
くすりと楽しそうに女が笑った。
「彼でも相手できると踏んだから通したんですよ。ただ、思った以上に弱くて欠片を使わせるまでにはいきませんでしたがね」
「そういう意味では君はだいぶ無茶をしたな。ワイバーン二匹を一人で相手をさせるとはな」
「ええ、そうですよ。最後に欠片を使ったからいいものをあのままだと死んでいた可能性だってあったはずですが」
「でも彼は生きた、そういうことよ。始祖竜とやらせた貴方には言われたくないわ」
「可能性の低かったあのときと今回は違う。今回はあくまでも確認作業だ。あそこまでの無理をさせる必要はなかったはずだ」
「無理をさせないと力を引き出せないわ。特に年を重ねた欠片持ちはね。自分の中の限界値を良く分かっているから、可能性に縋り付かない」
「……今回は不問とするが、次回はこのようなことがないように。彼が確定した以上失うわけにはいかない」
「巨人族派、神族派ともども動きが活発化しているものね。貴方のところに言ったのはどっちだったかしら?」
「あれは手飼いのものではないみたいですね。確定がない状況で手ごまをうしないたくなかったので、適当に見繕ったのだと思われます」
「利害が一致したわけね。彼らにしてみれば、開放するためには鍵の存在が必要だもの。それが存在するかどうかの確認がしたかったのだろうな」
「これから先は彼を甘言で手名づけようとする人間が増えるだろうな」
「そのための陛下のご友人というわけだな。ただでさえ疑り深い彼のことだ、陛下のご友人になった以上そういった輩がよってくるのは良く分かっているだろう。利用することは考えても信用することはないだろう」
「そうね。それ以前に他の人間も寄ってきそうだけどね」
「こちらに来て僅かな時間で、単独で始祖竜の翼をもぎ取り、ワイバーン2体を討ち取る。普通の戦跡ではないわね」
「欠片もちなら当然ではあるが、それを知らない人間には想像を絶するものではあるからな」
「あら、欠片持ちでも早いわよ。年齢で考えると確かに遅いけれど、期間で言えば最短よ。それだけ溜め込めた、というわけでもあるけれど」
「よく精神が持ちましたよね。生存本能と欠片の精神侵食で揺れるわけですから。たいてい二十歳を越える頃には精神異常をきたしているわけですから」
「欠片は欠片を呼び寄せる。大きく肥大化した欠片はそれだけで精神汚染へとなる」
「力を手にする代償とはいえ、普通の精神であれば手を出したいとは思えませんね」
「まあ、手にするのは本人の意志とは関係ないわけだから、どうしようもないわ。自分の身に受ける不幸なんて自分で選べるわけではないわけだから」
「見立てたところ三割ほど蓄えているだろうが、まあ、そのことは構わないだろう」
「ええ、そうね。これからしばらくはどうするのかしら?」
「しばらくは、様子見だ。自分から望んで死ぬこともないだろうし、彼をどうするといっても準備も整っていない」
「特にニダヴェリールを抑えるのは苦労しそうですね。当代が無能力者ですのし、先代の件もありますし」
「それなら大丈夫よ。どんなに嫌でも選択肢はないもの。当代なんかはせっかく手に入れた権力を失うかもしれないから尚更でしょうが、他に選びようがないもの。降りかかる不幸を自分で選ぶことなんて出来ないもの」
「政局が不安定にならない程度に早急に準備をする、それで一致で構いませんね?」
「ああ、それで構わないだろう。君もくれぐれも無茶をしないように」
「分かっているわ。後のことも考えないとね?」
「分かっているのなら構わない、それでは解散としよう」
「ええ、それではまた」
「はい、また」
その言葉とともに三つの人影は消えた。
最初からそこにいなかったかのように。
とりあえず、連続更新は終わりです。
書き溜めもほとんど使い切りましたので、これからしばらくはちょっと休んでから考えます。
書き溜めしてから一気に投稿するのか、ちょこちょこするのかはまだ未定です。
ただ、出来るだけ早くにアップしたいとは思いますので、がんばりますのでよろしくお願いします。
詳しくは後で活動報告に書こうかと思います。




