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30歳から始まる魔法生活  作者: 霧野ミコト
第二章 開かれた神話
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第三話 急造コンビネーション

「私も戦います」


「ですから、陛下は……」


『ホーリーチェイン』


最後までは言えなかった。


いきなり彼女の足元から光り輝く太い縄のようなものが出てきたと思うと、鎌を構えた男の方に向かっていった。


まさか、本当に魔法が使えるとは思っていなかったので驚いてしまったが、のんびりさせてくれる暇はない。


サミュー殿下が魔法を唱える頃には、既に大振りの剣の男の方はこちらに肉薄してきている。


『ナインズソード』


光の剣で牽制を入れる。


「ちっ!さすがは、巫女といったところか」


「攻撃魔法はないから心配するな。結界魔法が主で、攻撃魔法も今使っている捕縛魔法ぐらいだけだろう」


どうやら、向こうは彼女の能力を知っていたみたいだ。


『アークライトジャッジメント』


だけど、それでも、彼女の気が向いてくれるのなら助かる。


僕だけに意識が集中しないだけ、戦いやすい。


確かに格上の相手ではあるが、勝機がないわけじゃない。


始祖竜を相手にした時のような絶望的な状況なわけでもないし。


慌てて、二人が攻撃範囲内から抜け出した。


『ホーリーチェーン』


だが、それを図ったかのようにサミュー殿下が光の呪縛を放つ。


「ぐっ」


『ブレイブバスター』


まさか、それをよけるとは思わなかったが、それでもチェックメイト。


無理やり避けたため、体勢は崩れて、隙だらけだ。


そして、一筋の光が鎌を構えていた男を捉える。


威力は十分だろう。


残るは、大振りの剣の男だけなのだが、


「くっ」


思い切り踏み込むと前方へと飛ぶと身体をひねり、後方へと向きなおすと、先ほどまで自分がいたところは、直径1メートルほどの小さなクレーターが出来ていて、その中心に探していた男がいた。


鎌の男を倒すために一瞬だけ意識が向いていた隙に、間合いを詰められていたみたいだ。


ぐっと剣を持つ力を強める。


鎌の男の方も強かったが、この男は本格的に強い。


完全に格上だというのが見て取れる。


それを考えると、よく鎌の男を押さえられたものだ。


「ヒイラギ様、よけてください!」


不意に叫び声が聞こえた。


わけが分からなかったが、飛び退く。

その場にいるのが危険だということだけは分かったのだが、飛ぶと同時に身体をひねって確認をしてみれば、多少ダメージがあるにはあるが、しっかりと鎌を振り下ろしている倒したはずの男がいる。


十分だと思っていたダメージでは足りなかったらしい。


やはり、魔力の少ない僕程度の力を込めた魔法では簡単に倒れてはくれないみたいだ。


『烈波雹弾』


おまけに、簡単には見逃してくれないみたいで、追撃の攻撃をしてくれる。


『ナインズソード』


なんとか、光の剣で撃ち落とす。


「ちっ」


だが、全部撃ち落とす、というとこまではいかずに、何発かは被弾してしまった。


防護服があるから、ダメージはそこまでひどくはないが、思った以上に、手ごわい。


二対二になれば、勝機があると思っていたが、そう簡単にはいかせてくれないみたいだ。


格上で、コンビネーションも使える二人と、こっちは急場しのぎのコンビで、コンビネーションもへったくれもない。


やはりこの場面で、モードカタストロフィが使えないのが痛い。


使えれば、確実に勝てると言うのに。


こんなぎりぎりの戦闘なんて、命がいくらあっても足りないからやりたくないというのに。


とりあえず、サミュー殿下の元まで戻る。


その彼女は、祈りの彫像の前を陣取っている。


彼女がそこまで守るものだということは、それだけ大事なものだということなのだろう。


「僕が引きつけます。そこを押さえてください」


「分かりました」


『ナインズソード』


光の剣を呼び出し、構える。


とりあえず、勝機はまだある。


まだ、向こうは僕たちのことの力を過小に見積もってくれている。


その隙をつけば、うまくいく。


『ホーリーチェイン』


彼女も再び光の縄を呼び出すし放つ。


「甘い、『烈波雹弾』」


『アークライトシールド』


放たれた氷の礫は、光の結界で防ぐが、鎌を構えた男が既に肉薄してきている。


『爆塵炎舞』


『ブレイブバスター』


光の結界はあっさりと砕け散ったが、カウンター気味に魔法を放つ。


「ふん」


だが、当たらない。


あっさりと炎の一撃にのまれてしまう。


身体を少しだけひねり、僕の魔法分だけ相殺されて威力の弱まった攻撃をよける。


「くっ」


とはいえ、それでも、威力は十二分、防護服が一部焼け焦げる。


バックステップで、その場を離れ、


『衝波絶氷斬』


『アークライトシールド』


迫りくる追撃を受け止める。


『ホーリーチェイン』


「ちっ」


そこを狙って、彼女の光の縄が追いかけるが、捉えられない。


逆に防御ががら空きになってしまっている。


『紅刃炎覇斬』


『アークライトジャッジメント』


当然そこを狙って攻撃をしかけられるが、魔法で援護し、寄せ付けない。


『シャイニングブレード』


そして、更に追撃。


滑るように跳躍すると、袈裟切りの一撃を放つ。


当然、僕レベルでは、彼らに届かないのはよくわかっている。


その一撃はあっさりと受け止められ、背はがら空き。


『竜牙滅氷斬』


隙だらけで、狙われるのは当然のこと。


だから、僕は飛び出した。


背にある翼をはためかせ、その場を離脱し、


『ナインズソード』


新たな光の剣を呼び出し、放つ。


僕にとっては、タイムラグが全くない、一番使い勝手のいい魔法。


とはいえ、一番のキーポイントはディバインオーラとエンジェルウィングの補助魔法だ。


これがあるから、スピードの点で、こちらが上回ることができて、なんとか互角の展開を繰り広げられている。


放たれた光の剣は二人めがけて突き進むが、当たってはくれない。


あっさりと回避される。


だが、それは想定内、というかよけてもらわないと困る。


なんのために、本来僕の意思決定がない限り、なくならないはずのナインズソードをここまで無駄玉のように連発してきたと思っているのだ。


『ホーリーチェイン』


彼女の魔法で、僕に対する気がそれる。


まさしく、好機。


避けられた九つの光の剣は空を舞い、二人は彼女の魔法に対して回避運動を取る。


『ナインズソード・レイン』


九つの剣が不意に、砕ける。


それは、本来の姿。


先ほどまでの姿は、消えないはずの九つの剣を発動させるたびに、既に発動させていた九つの剣を吸収させて、発動しているのが一つだけと勘違いさせるための仮の姿


今、ここにある45本もの光の剣こそが、本来あるべき姿なのだ。


「なっ」


「しまっ」


チェックメイト。


「ホーリーチェイン」


不意打ちの広範囲魔法攻撃でたじろいだ鎌を持った男をついに、彼女の光の縄が捉えた。


これで、彼はもう動けない。


終わりだ。


『衝波絶氷斬』


「え?きゃあ!」


捕まえたことでほっとしたのだろう、彼女は隙だらけだった。


慌てたせいで、せっかく捕まえていた光の縄がほどける。


これで、形勢逆転、だと彼らは思っただろう。


さっきも、言ったように終わりだというのに。


『ディバインカタストロフィ』


僕にとっての正真正銘、最強の魔法を放つ。


「なっ!!」


目標は、鎌を持った男。


驚き、慌てて、回避しようとするが、もう遅い。


完全に捉えた。


チャージの時間が十分に取れていないけれど、それでも威力は今度こそ十分だろう。


経ちこめる煙の中から、ぴくりとも動かない鎌を持った男の姿がある。


まあ、意識を失ったせいで、鎌や防護服は消えてしまっているが。


「収束充填系の魔法か。あの短時間で、これだけの威力を出すとは、お前、何者だ?動きは素人だが、さっきの分散魔法と言い、広範囲魔法と言い、素人レベルの術ではない」


『ホーリーチェイン』


「ふんっ!!」


詰めのつもりの魔法だろうが、それはあっさりとよけられた。


「さあ、何者だろうね。でも、そんなことはどうでもいいだろう?取引をしよう」


本来、この場面は追撃の魔法を打つべきだが、それはやめておく。


「彼が倒れて二対一。普通に戦えば、若干僕らの方が分がいい」


二対一になったが、それでも彼がかなりの実力者であることは限りないし、今のでこれ以上油断することもないだろうし、何より僕の魔力も魔法を多発しすぎて、残りはそんなに多くはない。


快調ならまだしも、病み上がりで身体の調子はお世辞にも良いとは言えない以上、むしろここまで来れたのが、うまくいきすぎたのだ。


「ただ、僕にだって、切り札がぐらいまだある。それを使えば、君を確実に倒せる」


とはいえ、それも、この状態の話で、モードカタストロフィを使えば、結果は逆になる。


二対一の状況ならば、モードカタストロフィの状態であれば、コアクリスタルが壊れる前に、確実に倒せる自信はある。


「ただし、その代わりに、僕が受ける負担も大きいし、後々響く。僕としては、そんなのは御免被りたいから、この場は引いてくれないだろうか」


ただ、そうなると、今度は予定通りに動けなくなる。


それに何より、彼には言わないが、倒せる自信はあっても、絶対とは言い切れない。


もし、コアクリスタルが壊れれば、それまでだ。


もう、僕には戦う手段はなくなり、同時に居場所も失ってしまう。


だから、それは何があっても、避けなければいけないし、使わずに済むんだったら、出来るだけ使わないようにしたい。


だからこその提案だ。


「お前が、その切り札を持っているという、証拠は?」


「ない。だが、君は頷くしかないと思うよ。この状態で切り札を出されれば、君の負けは必至。たとえなかったとしても、君が分が悪いには違いない。ならば、せっかく提示してくれているんだから、ここで逃げた方が、賢い選択だ」


「確かに、そうだな」


そう言った彼は苦笑する。


「しかたあるまい、ここは、退却させてもらう」


そして、彼はいまだ気を失っている鎌を持っていた男を担ぐと、消えていった。


文字通り、最初からそこにはいなかったかのように、一瞬で姿を消した。




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