告白と青年
チャイムが、空に響く。校庭に、部活動の準備をする生徒がチラホラ見える。
祐太郎は急に襲ってきた腹と体の痛みに耐えながら、香織の返事を待った。あまりにも急な不自然な痛みであったが、緊張の所為だと解釈した。
「えっ……祐太郎君……だよね?」
驚いた顔をして言い、少し俯いた。
香織は顔を紅潮させると、しどろもどろに言う。
「私こういうの初めてだし……今まで男子と話したことなかったからちょっと、そういうのよくわかんなくて……」
祐太郎は腹を抑えた。フラフラする。今にも倒れそうだ。だが、告白はまだ終わってないと喝を入れ、掠れ声で喋る。
「彼女じゃなくても、友達からでもいい!一緒に映画行くとか!」
香織はいよいよ顔を真っ赤にした。
「別に、い……いいけど……」
「あ!ありがとう!じゃぁ空いてる日メールで送っ」
「そうじゃなくて……」
祐太郎は焦った。完全なミスリードしちまったのか?そうだよな、いいって嫌って意味と良いって意味があるからな。ああ、駄目だ、死ぬ。
祐太郎は目の前が霞んで見えなくなって行くのを感じた。
「別に……彼女でもいいよってことだよ?」
耳を疑った。ハッと目が覚める。つまり、そういうことか?告白成功ってパターンか!
「じゃあ、映画館に行く日程とかメールで送るね」
「ああ!」
雲一つ無い青空に、太陽がさんさんと輝いていた。香織は浮足立ちながら屋上を後にすると、祐太郎は力尽きて地面に倒れ込んだ。
翌日、映画館で二人は会った。
ホットパンツを履き、アメリカっぽい白いシャツを着た香織姿は祐太郎にとって刺激的だった。
香織はモジモジしながら挨拶する。
「お……おはよう」
大胆な格好に似合わず恥ずかしがる彼女は、祐太郎には刺激が強すぎるようだった。
「お……おはよう」
他に言う言葉も見つからず、照れながらとりあえず言葉を発す。
暫くすると慣れて来たのか、香織は大胆になってきた。
「こーゆうの憧れてたんだよね!ゆーたん!
あ……あの、カップル席下さい」
今まで侮蔑の対象でしかなかったカップル席を手に入れてしまう事に、祐太郎は何の抵抗も無かった。寧ろ喜びであった。
祐太郎にとって、少なくとも記憶の中では最高の日であった。
映画館では香織が寄り添ってアピールしてくる。学校生活では想像出来ない程、積極的だった。
ただ祐太郎は小心者なため、終始緊張ぎみであった。しかし自分でも頬が緩むのを感じ、退屈な恋愛映画の内容など微塵も頭に入らなかったのは言うまでも無い。
隣に居る香織が宿敵であり、憎むべき仇である事など、祐太郎は微塵も判る筈も無かった。
それは香織にとっても同じ事であった。




