特別読切 ノワール ―黒いコートの男―
ノワール ―黒いコートの男―
冒頭
──数週間前。
人斬り影虎・政宗は、白虎との決着をつけた。
巨大犯罪組織・黒影社は壊滅。
しかし、その代償は大きかった。
ニュース映像が流れる。
「本日未明、国内最大規模の犯罪組織『黒影社』が壊滅しました。」
「現場では組員数百名の遺体が発見され……」
「警察は事件の全容解明を進めています。」
パトカーが次々と現場へ入っていく。
その中に一人の警察官がいた。
黒崎恒一。
恒一は無言で現場を歩く。
壊れた建物。
血痕。
折れた刀。
誰もが息をのむ惨状。
若い刑事が震えた声で言う。
「……一人で、こんなことができるのか。」
恒一は静かに答える。
「できたんだろう。」
「現実に。」
その視線は遠くを見る。
「法では止められなかった悪……。」
「本来なら、警察が裁くべきだった。」
「それでも……。」
「誰かが止めるしかなかったのか。」
夜。
恒一は一人、自宅のベランダに立つ。
街の明かりを見つめながら呟く。
「警察だけじゃ……救えない人がいる。」
その言葉が、彼の人生を変える。
数日後。
相馬修司の整備工場。
「こんな時間に珍しいな。」
恒一は少し笑う。
「頼みがある。」
「悪人を追える装備を作ってくれ。」
相馬は驚く。
「……本気か?」
「本気だ。」
数日後。
黒い警察用防刃ベストを染め直した簡易スーツ。
フードの付いた黒いロングコート。
黒い手袋。
目だけが見える簡素な黒いマスク。
その上にフードを深く被った姿。
武器は警棒とワイヤーだけ。
防具とワイヤーは、相馬が急ごしらえで用意した試作品だった。
まだ"ノワールナイト"ではない。
未完成だった。
夜。
女性の悲鳴。
「助けて!」
男がバッグを奪って逃げる。
その前へ、一人の黒いコート姿の男が立つ。
「……返せ。」
「誰だ、お前!」
「……名前が必要だな。」
少し考える。
そして静かに言う。
「なら。」
「……ノワール。」
男が殴りかかる。
恒一は警棒で攻撃を受け流し、足払いで倒す。
ワイヤーで腕を拘束。
「逮捕する。」
翌朝。
ニュース。
『黒いコート姿の謎の男が強盗を取り押さえました。』
『警察は、この謎の人物について調査を進めています。』
学校。
ユウキがスマホを見る。
「……黒いコート?」
「……政宗?」
マサトも覗き込む。
「まさか……。」
ユウキの表情が少し明るくなる。
しかし写真を見る。
そこに写っていたのは刀ではなく警棒。
「……違うか。」
ユウキは少し寂しそうに笑う。
「でも。」
「また、この街を守ろうとする人が現れたんだな。」
二人は少しだけ空を見上げた。
夜。
ビルの屋上。
黒いコートが風になびく。
恒一は街を見下ろす。
「まだ未熟だ。」
「それでも……守る。」
「この街の闇は、俺が引き受ける。」
彼は静かに歩き出す。
街の闇へ。
黒いコートだけを翻して。
――終
ここまで読んでくださった皆さん、本当にありがとうございました!
『悪の剣』は、自分にとって初めて最後まで書き切った長編作品です。
政宗やユウキたちの物語を最後まで見届けていただけたなら、とても嬉しく思います。
そしてこの作品は、本編だけでなく、特別編や読み切りも含めて、一つの物語として描きました。少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。
また、この世界の続きを描く『ノワールナイト』も執筆予定です。よろしければ、そちらも読んでいただけると嬉しいです。
またどこかでお会いできる日を楽しみにしています。
本当にありがとうございました。




