特別長編 悪の剣 罪の重さ①
※本編では描かれなかった、最終決戦前の出来事を描いた特別長編です。
「罪の重さ(前編)」
朝。
教室。
いつもと同じ時間。
いつもと同じ教室。
だが、一つだけ違っていた。
窓際、一番後ろ。
ショウイチの席だけが空いている。
誰も座らない。
誰も触れない。
教室には重い空気だけが流れていた。
担任が静かに教室へ入る。
「……ホームルームを始めます。」
その声にも力はない。
しばらく沈黙が続く。
やがて担任は小さく息をついた。
「皆も知っていると思いますが……昨日、本校二年の生徒、ショウイチ君が亡くなりました。」
教室が静まり返る。
涙を流す生徒もいる。
俯く生徒もいる。
だが——。
教室の後ろ。
リュウガは退屈そうに机へ頬杖をついていた。
その隣でタイガが小声で笑う。
「マジで死んだんだな。」
リュウガも鼻で笑う。
「勝手に死んだだけだろ。」
二人は笑いをこらえていた。
その言葉を聞き、ソウタは拳を強く握る。
(……ショウイチ。)
脳裏によみがえる。
『大丈夫か?』
初めて声をかけてくれた日のこと。
自分がいじめられていた時。
ショウイチだけは助けてくれた。
『もうやめろよ!』
その一言で。
リュウガたちの標的は自分からショウイチへ変わった。
それからだった。
毎日の暴力。
土下座。
スマホで動画を撮られ、笑われる。
教科書は捨てられ。
靴は隠され。
誰も助けてくれなかった。
先生も。
学校も。
何も変わらなかった。
そして——。
ショウイチはいなくなった。
ソウタの目から一筋の涙がこぼれる。
その時だった。
リュウガが振り返る。
「おい。」
ソウタの肩が震える。
「次、お前だから。」
タイガが笑う。
「ショウイチの代わり。」
「今度はお前が楽しませろ。」
教室中が静まり返る。
誰も止めない。
止められない。
リュウガは机を軽く叩いた。
「放課後、逃げんなよ。」
チャイムが鳴る。
ホームルームは終わった。
だが——
ソウタにとって、本当の恐怖はこれから始まる。
――続く。




