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出戻りマーメイド  作者: 未羊


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第81話 こういう時は神頼み

 バレンタインの翌日からというもの、海斗の様子はなんともおかしかった。

 あれだけ私に合わせてくれていたというのに、少しずつだけど自分のペースで走るようになっていた。突然のことで私は理解ができなかった。

 なので、私は次の日曜日にちょっとお出かけをすることにした。


『なるほどのう。それでわしに相談しに来たというわけか』


「ええ。あんまりこういうのは得意じゃないでしょうけれど、相談できる相手ってなかなかいなくてね」


 私がやって来たのは、田均命の神社だった。

 こういう相談ならおじいちゃん先生とか平川さんとでもできるだろうけれど、私のマーメイドとしての勘が強く働いて気乗りがしなかったのよ。それで、他人には見えない存在として、神社の神様を頼ることになったわけ。

 ちなみに、当の田均命は頼りにされることを嬉しく思っているようで、あごを触りながらにこにこと微笑んでいる。


『して、いかような相談なのだ』


 私の様子を見て何かを察したのか、さっきまでとは打って変わって真面目な表情になっている。こういうところはさすがは神様かなって感じがするわね。


「うん、海斗のことで相談がね」


『海斗? ああ、おぬしが気にかけている(おのこ)のことか』


 田均命は、すぐに海斗が誰か分かったようだ。てか、気にかけているっていう言い方がもうなんだかね……。

 はあ、神様相手じゃ隠し事は厳しいか。

 私は大きなため息をつく。


『それで、その男のことで何の相談なのだ』


 私の態度を気にすることなく、田均命は私に声をかけてくる。

 向こうから声をかけてきたことで、私はいよいよ本題を話せるというものだわ。


「うん、一週間前から、なんだか様子がおかしいの」


『い、一週……? 何日前の話なのだ』


 意外と一週間という表現が通じなかったわね。

 なので、七日前だと言い直すと今度は通じていた。


『ふむ、そんなに前からなのか。して、どのようにおかしいのだ?』


 様子のことを尋ねてくるけれど、なんていう風に言えばいいのかな。私は違和感があるけれど説明のしづらさになんとも困ってしまった。


「なんという感じかな。ちょっと私のことを気にかけなくなった感じかな」


『ふむ……、距離を取り始めたのかのう。だが、こういうことは弟の方が詳しいじゃろう。わしでは、ちょっと不適切やもしれん』


 私が真剣に相談を持ち掛けたというのに、田均命は自分では無理だと言い出してしまった。でも、代わりの相談相手を提案しているだけマシかしらね。

 まあ、お手上げというのならこれ以上の滞在は無意味ね。


「ありがとうございます。では、波均命様に相談してきますね」


『お、おい……!』


 言葉に従って去ろうとすると、田均命が止めてくる。

 自分では無理、弟を頼れと言っておいてなんで止めるんですかね。

 私は疑いの目を向ける。


『ぐぬ……』


 私のジト目には敵わなかったらしく、田均命は諦めたようだった。


『お、弟にあとは任せたと伝えておいてくれ』


「はい、そうさせてもらいます」


 私は実に無慈悲に、田均命の神社を後にしたのだった。


 そうやってやって来た、波均命の神社。

 こちらは人がそこそこやってくる田均命の神社と比べて、いつも閑散としている。いや、まったく人がいないといった方がいいだろう。

 これでよく消えずに信仰を保っていられるなというくらいの閑散っぷり。私は感心してしまうわ。


「波均命様?」


『おや、小娘か。どうしたというのだ』


 私が声をかけると、あっさりと姿を見せてくれる。

 さすがに相手をしてもらえる私が来ると、その顔はちょっと嬉しそうに見える。


「ちょっと相談事があるんですよ」


『ほうほう。では、こちらに座って話を聞こうではないか』


 そういって、自分の神社の本堂の入口に腰掛けるように促してきた。

 寒い中あんまりじっとはしたくないけれど、神様相手にわがままも言えたものじゃない。なので、私は波均命の隣にそっと腰を掛けた。

 私からの話を聞いて、波均命はちょっと考え込んでいたようだ。


『ふむ、様子がおかしいのは、その一週間前からで間違いないのだな?』


「ええ、間違いないわ」


『ふむ。その中で、何か思い当たるようなことはないか?』


「特にないわね。強いて言えば、バレンタインデーがあったくらいかしら」


『ほう、そのばれんたいんとやらは一体何なのかな?』


 波均命は、バレンタインデーについて興味津々に聞いてくる。古い時代の日本人だからか、分からなくて当然かな。

 なので、私はしっかりとバレンタインデーについて説明をする。

 私の説明を聞いた波均命は、腕を組んで何か考え始めた。一体、どうしたというのかしら。


『うむ、可能性としてはばれんたいんとやらに乗じて何かあったやもしれんな』


「何がなの?」


『ほれ、俺の結界をかいくぐって中に入った何者かのことを話しただろう。その存在が小娘を敵視しているのなら、重々考えられる話だ。まあ、推測でしかないから、今度その男をここに連れてこい。詳しく調べてやろう』


 波均命はそう言って、私に海斗をここまで連れてくるように頼んできた。

 よくは分からないけれど、なんか信じられる気がするのでその言葉に従うことにしましょうか。

 波均命と約束をした私は、一度神社から家へと戻ることにしたのだった。

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