23.使役召喚の儀式
シオン先生から簡単に使役召喚の儀式の説明をされ、Sクラスは魔法陣が描かれている運動場に移動した。
建物の中にも同様の部屋はあるが、Sクラスの生徒ともなると、どれだけ大きくて強い魔物が召喚されるか分からないからだ。
精霊が召喚される時もあるが、大抵が魔力量に比例した魔物になる。そのため、破壊されるかもしれない屋内は適していないとのこと。
なお、Sクラスは全員、喚び出せて当たり前と思われているクラスになる。
使役召喚の儀式は、魔法陣の上に手を置き「オカポエエアイイコイマナアリロイポエハハイナウ。エホイケマイイムアオウ」と詠唱するだけ。
これまた長すぎて、うんざりする。失敗しないようにと、時間があれば呟いて練習していた。
「教室でも伝えたように、魔力の半分を使用する。気分が悪くなったり貧血を起こしたりする場合もあるが、一時的なものだから心配するな。もし自分で動けないようなら手を挙げるように」
やりたい人から順番にということで、勢いよく手を挙げた。早く自分の相棒に会いたくて仕方がない。それなのに、シオン先生は一瞥しただけで「フリージア以外にはいないのか?」と生徒達を見渡している。
「わたしからではダメなんですか?」
「お前の使役魔物は予想できないからな。魔法陣を壊されたら困る。お前は最後だ」
「最後……早く会いたいのに……」
大袈裟に肩を落として見せたけど、シオン先生の同情を引いて順番を変えてもらうことはできなかった。小さく息を吐き出されるだけだったし、わたしを見ないように隣に立っているアセビに視線を投げていた。
「丁度いい。アセビ・サンスベリア、手本になってやれ」
「分かりました」
焦った様子も不安そうな雰囲気もない普段通りのアセビが、魔法陣まで歩いていく。クラスメート達は固唾を飲んで、アセビの一挙手一投足を見守っている。
跪き、魔法陣に手を置いたアセビが詠唱をすると、魔法陣は青く光り出した。
眩くて目を閉じてしまいそうな光が鎮まると、魔法陣の真ん中に白い大蛇が鎮座している。白い大蛇は、鋭い赤い瞳でアセビを見て、鼻で笑っていた。
この後は、魔物が触れさせてくれ、尚且つ手を舐めてくれれば契約完了となる。油断しているところをガブっという事例も少なくない。
感嘆の声が上がる中、無事に契約完了をさせたアセビが大蛇と戻って来たので、ハイタッチをして4人で喜び合った。
ゲームと同じで、アセビは白きモノの召喚に成功した。
アセビだけではない。この使役召喚で、イキシア殿下も白い鷹を召喚する。
ローダンセとクフェアは白きモノではないが、ローダンセは狐と、クフェアはトナカイと無事に契約を済ませる。
アマリリスは……
あれ? アマリリスが、誰と契約をしていたのか思い出せない。
同じようにカルミアの使役魔物を覚えていなかったが、召喚されたハリネズミを見て、「あのハリネズミの針で怪我させられるんだったわ」と、その時のスチルが脳裏に甦った。
ガーベラはリスを、ツワブキはモグラを成功させていて、ローダンセとクフェアはゲーム通りだった。アマリリスは、ゲームのフリージアと同じで白狼がいるので儀式を行わなかった。
そして、イキシア殿下の順番がやってきた。
白きモノが現れて喜ぶんだろうなぁと想像しながら眺めていたら、イキシア殿下の詠唱が終わった途端突風が吹いて、魔法陣を覆うように紫色の竜巻が起こった。
シオン先生まで唖然と見ている中、竜巻が爆発したように消え失せると、真っ赤で大きな鳥が現れた。熱を帯びた紫色の瞳で、イキシア殿下を見つめている。
「鳳凰……すっご! 殿下、鳳凰喚んじゃったんですか!」
興奮して叫んでしまっただけだけど、石像になってしまった全員の呪いを解除できたようだ。みんなの時間を止めるなんて、さすが鳳凰。圧巻である。
イキシア殿下の震える手が鳳凰に向けて伸ばされ、鳳凰は自ら顔を手に擦り寄せている。嬉々としてイキシア殿下の手を舐めている姿に、「綺麗な男子だからだ」と合点がいった。本当の本当に羨ましい。
クラスメート達の成功を見守り続け、ようやく順番が回ってきた。
胸を弾ませながら魔法陣前に到着する間に、シオン先生が生徒全員を離れた場所に避難させていた。イキシア殿下で鳳凰だったので、何が出てきてもおかしくない状況の安全対策だそうだ。
空を見上げて大きく深呼吸してから、四つん這いになり、魔法陣の上に手を置いた。
みんなの召喚儀式を眺めていて感じたことだけど、たぶん呪文を唱えれば自動的に、魔法陣が魔力を半分吸い取るのだろう。
だったら、みんなと同じ魔力半分だなんてケチくさいことは言わない。ゲームでは半分で白狼だったのだから、全てを注ぎ込めば、きっと家族以上の半身に近い存在になってくれる魔物が来てくれるはず。
全部だ、全部。契約ができた後に倒れたっていい。とにかく、わたしの全てを使って、後悔のない使役召喚をする。そして、来てくれた子を全身全霊で愛すんだ。




