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20.お疲れ様会

「アセビ様? どうしたの?」


お昼休憩になり、いつものガゼボで昼食を取ろうと腰を下ろしたら、立ったままのアセビがスイーツを並べはじめたのだ。今日は一際大きなカバンだなと思っていたけど、クッキーやマドレーヌ、ガレットにフィナンシェ、カヌレなどが入っていたなんて思わなかった。


「昨日は、みんな頑張ったでしょ。だから、お疲れ様会だよ。フリージア、何が食べたい? ケーキは持って来られなかったけど、好きなスイーツがあればいいな」


好きなって、全部好きだよ!


今世でも甘味を食べられているけど、前世の駄菓子とかファミリーパック的な味でね。それも美味しいよ。大好きだよ。


でもね、こういう賞味期限短いですよっていう高級路線のお菓子は食べられていなかったから、物悲しさがあったの。絶対、いいバターと小麦粉と卵を使ってるよね。


ううっ、なんて贅沢なお昼休み。泣いちゃいそうだよ。


「アセビ様……ありがとう……」


「もー、フリージア、なに泣いてんの。お疲れ様会やで。昨日のは全部、笑い話にして楽しもうや」


「ああ、もう全部笑い話だ」


「そうだよ。雨じゃなかったら、絶対当てられていたのにとかね」


「それを言うなら、雨じゃなかったら、追いついて切れていた」


「それ、お疲れ様会ちゃうくって反省会やん。間違ってんで」


「あっ」とわずかに目を見開いた2人は、顔を見合わせて苦笑いをしている。


場を盛り上げようと、気を遣ってくれる友人たちの存在に、心が温かくなる。


涙が溢れたのは、お菓子の匂いに感動してなんだけどね。申し訳ない。


「アセビ様。わたし、カヌレが食べたい。でも、先にお弁当を食べなきゃ。寮母さんに悪いもの」


「そうなると思って、私は今日お弁当を持ってきていないんだよ。みんなから少しずつ分けてもらえたら、スイーツを食べられる余裕ができるでしょ」


「アセビ様、マジで天才やん」


「ああ、完璧な計画だ」


アセビが「もっと崇めてくれていいよ」と顎を上げて腰を反らすほど胸を張るから、ガーベラがすかさず「ナルシストを褒める気はない」とツッコんでいた。


2人のやり取りが面白くて笑うと、3人に柔らかく微笑まれた。その笑顔に、本当に大好きな友人たちだと、感謝の気持ちで胸がいっぱいだった。



「カヌレも美味しかったけど、ガレットも最高に美味しいね」


バターたっぷりで、本当に美味しい。いくらでも食べられちゃう。


「私、フリージアに聞きたいことがあったんだけど、聞いていい?」


「なに?」


「殿下の瞳の色が変わった時って、殿下は怒っていた? 魔力が上がるなんて聞いたことがなくてね。何がキッカケなのか知りたいんだよね」


「怒っていたというより、無我夢中って感じだったかな。わたしが聞き取れない詠唱も多かったし。わたしも攻撃魔法の1つでも覚えていたらよかったって思ったもん」


「んー、やっぱり殿下に詳しく聞くしかないのかな」


「本人も覚えていなさそうだけどね。瞳の色が変わっているのに気づいたのは、わたしだったから」


本当のこと、言えなくてごめんね。アセビが喜びそうな話が、たくさんあるんだけどね。でも、話さないって約束したからさ。アマリリスのことが関わってくるし……


白狼とアマリリス、どうなっているんだろうな。仲が良いといいんだけどなぁ。ゲームでは、ほっわほわの可愛い犬で、穏やかな性格だったから大丈夫だと思うんだけど。アザラシカットで可愛かったなぁ。


「アセビ様も紫色の瞳になりたいん?」


ガーベラの声に、今は白狼のことを考える時間じゃないと、思考を切り替えた。


それに、白狼とアマリリスのことは、イキシア殿下が動いてくれるはずだ。わたしが動くべきことじゃない。というか、ディセルファセカ邸に行けるわけないんだから、何もできることがないのだ。


でも、来週の使役契約の時には会えるかもな。連れて来るよね?


「なれるならなりたいよ。フリージアの緑色は未知数だけど、紫色は白きモノと契約できるって言われているからね。私も白きモノと話をしてみたいんだよね」


それなら大丈夫だよ。秘密だけど、アセビは白きモノを召喚するからね。


アセビ、ものすっごく喜ぶだろうな。ゲームに登場しなかったガーベラとツワブキは、何を喚ぶんだろ。わたしには、どんな子が来てくれるんだろ。あー、本当に来週が楽しみだな。


「ん? フリージア、何ニヤついてんの?」


「来週、どんな子が来てくれるのかなって考えてたの」


「うちは無事に契約できるなら、どんな子でもいいわ。変な子は来ーへんって分かってるし」


「どうして?」


「うち自体が性格悪ないもん」


堂々と断言するガーベラに、わたしは瞳を瞬かせた。「そんな理由かーい」だ。アセビは「だったら、私も問題ないね」と笑っていて、ツワブキは「そもそも良いも悪いもないだろ」と真面目に返している。


「絶対に性格の良し悪しあるって。ツワブキには寡黙な魔物が来るよ」


「そうか。五月蝿いよりはいいな」


「その理屈だと、ガーベラのところに来てくれるのは、賑やかな魔物だね」


「いやいや、うちもツワブキと同じで、おっとりした子が来るって」


「「それはない」」


見事に3人のツッコミがシンクロし、みんなでお腹を抱えて笑った。



放課後になり、アセビと一緒に図書館に移動したが、珍しくローダンセの姿はなかった。


アセビ曰く、イキシア殿下が拐われたことで、アセビも両親から怒られたそうだが、ローダンセとクフェアに至っては激怒という言葉が可愛いと思うほど叱られているらしい。


「相当疲れているように見えたからね。クフェアは言わずもながら、ローダンセも集中特訓されているんじゃないかな」


2人が疲れているなんて、全然気付かなかったよ。イキシア殿下は今日も声が麗しいとしか思わなかったって。だってさ、イキシア殿下が紫色の瞳になったことで、あのグループずっと囲まれてたから、「大変そうだなぁ。外行きの声も最高だなぁ」って感想しか出てこなかったんだもん。


やっぱりアセビは、イキシア殿下達と親友なんだな。話している姿見てないのに、きちんと交流してるんだもんね。こっちにばっかり居て寂しくないのかなって気にしていたけど、学園以外の時間で遊んでいるのなら大丈夫かな。


ローダンセがいないので、今日は魔法の話(主に呪文について)中心で盛り上がった。アセビはもっと話していたいと残念がっていたが、閉館時間が決まっているので仕方がない。いつものように「またあしたねー」と手を振り合って図書館前で別れた。






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