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21.どうなってるの?

お昼休みに食べきれなかったお菓子を全部もらっているので、寮母さんもいるかなぁなんて思いながら、足取り軽く学生寮に向かっていた。


わたしは、みんなで分けようって断ったよ。でも、アセビは「私は作ってもらえばいいから」、ツワブキは「もう十分だ」、ガーベラは「フリージアの部屋に食べに行くから」って遠慮するから、全部引き受けただけだからね。ガーベラにも、お世話になっている寮母さんにも、きちんと渡すよ。


言い訳をつらつら並べながら、学生寮の門が見えた時、1人の女性のシルエットが確認できた。


Oh、デジャブ……


ウキウキしていた気持ちを落ち着けさせ、深呼吸しながら近付く。


険しい面持ちを向けていたのは、前回同様、アマリリスだった。


「ディセルファセカ公爵令嬢様、わたしをお待ちでしたか?」


「そうです。あなた、本当に帰寮時間が遅いのですね」


「すみません。図書館で閉館時間まで勉強しているんです」


「だからって、こんな時間に1人は危ないですよ。いくら学園でも、女の子は1人になってはいけないのですから」


ん? あれ? もしかして普通にお喋りできる?


「心配してくださり、ありがとうございます。しかし、わたしよりもディセルファセカ公爵令嬢様の方が魅力的ですから、ご自身の心配をされてください。だって、本当にお綺麗ですよね。ふわふわしていて気持ちよそうですし。絶対にモテていますよね。馬車までお送りしましょうか?」


「なっ! そんな話をしに来たんじゃありません! あなた、不敬ですよ!」


一気に距離を詰めすぎてしまったらしい。反省。ごめんなさい。だから、真っ赤っかになって怒らないで。照れている姿も綺麗だけどね。アマリリスの澄まし顔が、わたしの1番のお気に入りなんだよ。


「すみませんでした。それで、お話とは何でしょうか?」


「もう! 何ですの!」


アマリリスは分かりやすく深いため息を吐き出して、場の空気を冷めたものにした。さすが公爵令嬢である。


「イキシア様のことです。注意しましたのに、どうしてイキシア様に近付くのですか?」


「えっと、申し訳ありません。殿下とは挨拶くらいしかしていません。挨拶もアセビ様がされているので、横にいるのにしないわけにはいけませんので」


「そのことじゃありません……その、昨日一緒に拐われましたよね。その時のことを言っているんです」


いや、待って。あれ、本当に想定外の事故! それに、元はと言えば幼い白狼のことで、アマリリスのせいって言い方はちょっとアレだけど、アマリリスが幼い白狼と出会うのが遅かったら起こらなかったハプニングだったんだよ!


「わたしも殿下を危険に晒してしまった自分が不甲斐ないと思いますが、一緒に拐われたからといって、もう本当に生き延びることに必死でしたし、魔物を倒せた後も放心状態でほとんど話していませんから、仲良くなった感覚がありません。殿下に対して感謝の気持ちのみです」


「そう言っているだけじゃありませんの? あわよくばって思っているんじゃありませんの?」


「思っていませんよ。それに、殿下とディセルファセカ公爵令嬢様の間に割り込める令嬢なんていませんよ」


「だから、あなたがっ……」


んー、突っ込んでみようかな? 前回は取り付く島なさそうだったけど、今日はまだ昨日の動揺を引きづっているのか、前回より話しやすいんだよね。


「ディセルファセカ公爵令嬢様、『花束をあなたに』をご存知ですよね?」


へ? えー! キョトンとされたんだけど! え? なんで? どうして? あたしが瞳を瞬かせたいよ!


「何かの本でしょうか?」


「あ、えっと、はい、恋愛小説です」


本当は乙女ゲームだけど……これ、本当になに? どうなってるの?


「えっと、『地下鉄』とか、『路線バス』とか、『飛行機』『スマホ』『PC』とか知りませんか?」


「あなた、私をバカにしているのですか?」


あ、よかった。ゲームのタイトルと覚えていなかっただけだったんだ。


「おかしな言葉ばかり並べて、それら全てが小説とか言いませんよね?」


違ったー!


え? え? 本当に? アマリリスは転生者じゃないってこと?


え? 待って。だったら、今までの行動はなに? 攻略対象者と仲良くなっていて、白狼と使役契約していて……魔道具だってそうだよ。転生者じゃないなら、ただの奇才ってことになるんだけど……


「違います……ちょっと気が動転していたみたいです……あの、ディセルファセカ公爵令嬢様は、どうしてわたしを警戒されているんでしょうか? わたしは確かに緑色の瞳をしていますが、それだけです。平民の中でもお金持ちではありません。何がどうひっくり返っても、王侯貴族の方と結ばれないと思うんです。それなのに、どうして街の治癒師が夢のわたしを、警戒されるのでしょうか?」


「それは……私とあなたが相容れない存在だからです。あなたは私が嫌いでしょ?」


「いいえ。好きかと問われたら『分からない』になりますが、嫌いかどうかならハッキリと答えられます。『嫌いではありません』」


唇を噛んで俯くアマリリスは、どう考えても「花束をあなたに」を知っていると思う。


でも、転生者じゃない。ってことは、アマリリスに近しい人が転生者で助言しているってこと?


「だとしても、私とあなたは相容れないのよ」


自分に言い聞かせるように呟いたアマリリスは、勢いよく顔を上げた。気丈に振る舞っている。そんな表情をしている。


「私は、これ以上イキシア様に近付かないでと忠告をしに来ただけです。アセビ様達に対してもですね。友人だとしても、一定の距離を保つのを忘れないようにしなさい。言いたいことはそれだけです」


話し終わる前に、アマリリスは走り出してしまった。前回みたいにすれ違う時に謝罪は聞こえてこなかったが、泣いてしまいそうなアマリリスの面持ちがはっきりと見えた。


あー、もー、訳分かんない。アマリリスが転生者の線は消えた。いや、とぼけられている可能性も……あるの? あんなに辛そうにされて?


分からないから、アマリリスの家族、または近くにいる人が転生者という線が濃くなったと思ってはいよう。


だとして、どうしてその人は、イキシア殿下ルートを攻略させようとしているんだろ? 攻略対象者からアマリリスを遠ざけようとしなかったんだろ?


アマリリスの周りを調べることも、ディセルファセカ公爵邸に行くことも、わたしにはできないしなぁ。


うーん、どうしたものか……何も閃かないから、アセビからもらったお菓子で糖分補強しとこう。






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