第19話 昇級試験で死ぬって、そんな理不尽な……
「弱いっ!! 弱すぎるっ!!」
こんにちは、町屋太郎です。
俺は今、ギルドの昇級試験場の床にぶっ刺さっています。
ちょうど映画「犬神家の一族」みたいな感じです。
……2006年のリメイク版が最後ってマジ? 今の若い子知らないよ!?
「タロウ・マチヤ。お前大丈夫か?」
「はい、余裕です。余裕過ぎて、避けるの忘れました」
「……はぁ」
あ、試験担当してくれてるギルド長が呆れてるよ。
なんか、会議が無くなったから暇! とか言ってたな。
そう言えば、新しいスキルが2つ増えたな。
=========<スキルウィンドウ>=========
1.死者蘇生
死んだ時点・地点で蘇生する
(中略)
24.銭泥棒
周囲5m以内に落ちている硬貨の種類が分かる
25.無敵蚊:NEW
蚊に刺されなくなる
=============================
すげえ。
まさかの(中略)が実装されてる!!
やればできんじゃん、アホ女神。
特別にバカ女神くらいまで昇格してあげよう。
<昇格しているんですか、それ?>
バカ女神のツッコミはスルーすることにして、とりあえずこの「無敵蚊」とかいう、謎スキル使ってみるか。
「ギルド長、すみませんでした。少し手を抜いていました」
「……随分余裕だな」
「えぇ、なのでここからは本気で行きます。スキル発動<無敵蚊>」
「なに!? 無敵化だと!? 死角すら消えると言うことか!!」
「えぇ、死角ですか? 特にありません。無敵ですっ!!」
こんにちは、町屋太郎です。
俺は今、映画「犬神家の一族」状態で床にぶっ刺さっています。
これをお笑いの世界ではテンドンといいます。
「……強くなってねーじゃん」
「蚊に対して無敵になるだけ、要するに、蚊に刺されなくなるだけなので」
「しょーもねー……」
「でも、今のギルド長みたいに相手をビビらせる位には使えますよ」
「……」
「能力はそれだけでは無く、使い方って奴です」
なんかそれっぽい、格好いいことを言ってみた。
床にぶっ刺さったままだけど。
とりあえず、床から脱出っと。
「流石に痛いですってっ!! 俺じゃなかったら死んでますよギルド長!!」
「逆に、なんで生きてんだよ」
「生きてて悪いかこんちくしょー!!」
床に刺さっていたときにスキルは確認済み。
ちなみに、3回死んだから3つ増えたよ!!
スキルがふえるよ!!
やったねたろうちゃん!
=========<スキルウィンドウ>=========
1.死者蘇生
死んだ時点・地点で蘇生する
(中略)
26.微発光
暗闇でほんのり光る
27.しゃっくり
しゃっくりをする(自他は問わない)
28.ソニック・レフト:NEW
左足だけ早くなる(右足はそのままの速度である)
=============================
さて、ギルド長の強さは大体分かった。
だいたい0.8剣道部の田中ってとこだろう。
ちなみに今のシュマは0.7剣道部の田中だ。
なお、俺は正攻法なら0.95田中。卑怯な手を使って良いなら1.2田中だ。
――勝つだけなら楽勝なので、折角ならギルド長に「うぉ!?」と思わせるような勝ち方をしようか。
「すみません。今度の今度の今度こそは本気で行きますっ!!」
「……まぁ、やる気があるのは良い事だ。ほぼ不合格だが、かかってこい」
俺は新しいスキル<ソニック・レフト>を発動する。
「なんだと!? 片足跳びで高速移動だと!!」
「……そういう、謎スキルなもので」
右足が普通の速さのままなら、右足を使わなければ良い。
そうすれば、デメリットなど存在しないも同じ。
「スキル発動<銭泥棒>」
「試験場を片足跳びで移動しながら、小銭を拾っているだと!? 気持ち悪っ!!」
よし、これであのスキル発動条件が準備できた。
「スキル発動<パン入手>」
俺は右手に隣町のパン屋ですぐに売り切れる事で有名なクリームパンを持っている。
ちなみにシュマの大好物だ。
今朝は3個食べて、「太りました……」って言ってたな。可愛い。
このスキル、便利だけどお金無くなるんだよな……。
「食らいやがれ!!」
<誤字ですか!?>
いや、あってる!!
俺はギルド長の口に、クリームパンを押し込んだ。
「旨いな!!」
「そうでしょ!!」
「だが、何の意味がある!?」
「俺の相棒のこと忘れてませんか!!」
「何だと!?」
「シュマはスキルで『毒』をあつかえますよ」
「……なに?」
俺は距離を取り、一つ深呼吸。
流石に片足けんけんは疲れた。
「今は美味しいパンでしたけどシュマにこれを毒にしてもらってたら、ギルド長死んでましたよ?」
「……」
「ちなみに、パンの代わりに爆発物を咥えさせることもできました。そしたら終わりでしたね」
俺は満面の笑みを浮かべる。
「これで、合格ってことでどうですか?」
「……」
ギルド長は残りのクリームパンを見つめる。
そして、口に放り込みよく噛んでいる。
ちなみに、数えたら一口で30回。
うーん、健康的。
「……なるほどな。お前の言いたいことは分かった。よーくわかった。分かりすぎるほどに分かった」
「……ちなみに、<キノコ判定>ってスキルも持ってます。これでパンの代わりに毒キノコでも良かったんですけど、トイレとお友達になるのは可哀想だと思ったのでやめました」
「…………こわっ!?」
ギルド長の額に冷や汗が浮かんでいる。
「ちなみに聞かせてもらう。最初、床に2回刺さってたのは?」
「油断させるためにわざとやりました」
嘘では無い。
何なら<柏手>でびっくりさせて、そのすきに<石拾い>で石をかき集める。
そして<指弾強化>で疑似流星群をやろうと思ってたから。
面白スキルが引けたから辞めたけどね。
「……合格だ。お前のような怖い奴は『大』では惜しい。折角だ、『権』までの昇級を認める」
「いよっしゃー!!」
俺は小躍りしながら試験場を後にする。
廊下で滑って転んだけど、死ななかったのでセーフ!!




