第1話 人違いって、そんな理不尽な……
「すみませんでしたー!!」
こんにちは、町屋太郎です。
俺は何もない空間で、おねーさんに土下座されています。
目の前に広がるおねーさんの、ケツ。
……デッカァ。
「人違いで、死なせてしまいましたー!! 本当は隣町の町田太郎さんのはずだったんですー!! ごめんなさーい!!」
おねーさんが顔を上げる。
胸 デ ッ カ ! ! !
後、めっちゃ美人!!
……というか、今この人なんて言った!?
「……俺は死んだのか?」
「はい、町屋太郎さん。あなたは、車にひかれそうになった小学生の女の子を助けて死にました」
「本当は、町田太郎さんって人のはずだったんですよね?」
「……名前が似てるし、隣町だし、目と鼻の穴と耳が二つあって口が一つで性別が同じなので間違えました」
「大体の男が該当するのでは!?」
「ちなみに、町田太郎さんは男の娘です」
「しらんよ!?」
落ち着け、KOOLになれ町屋太郎。
良く名前を「町家」と間違えられて、訂正する時みたいにKOOLに。
……COOLじゃね?
……ついでに今回の名前間違えられって、致命的じゃね?
「本当に、申し訳ありませんでしたー!! 許してください。何でもしますから!!」
「ん? 今何でもするって言ったよね?」
「はいっ」
俺は少し考えて、おねーさんに近づいていく。
そして、胸を揉んでみる。
や ー ら か ー い ー ! !
「えっ、それは……」
「……これでチャラってことでいいです。どうせ生きていてもつまんないと思ってたので、ちょっと早くなっただけですから」
「……もし生きていれば、来年あたりに小動物系後輩スポーツ少女に告白されて、お付き合い。会社の付き合いで買った宝くじが1等当選。退職して株を買ったら大暴騰。それを元手に会社を作って大成功。103歳まで生きて、息子夫婦と孫夫婦。それにひ孫3人に囲まれて天寿を全うしたんですけどね」
「あんた、大分やらかしたな」
「……ぐすっ」
俺のなかでこの人を「綺麗なおねーさん」から「ダメ女」に格付けを変更した瞬間だった。
「……お詫びと言っては何ですが、あなたを異世界に転移させます。そこで本来生きるはずだった寿命を全うしてください」
「なんか、ラノベみたいになってきたぞ!?」
「ちなみに、スキルも授けます。なにせ、私は女神ですから」
「ダメ神みたいだけどな」
「……泣きますよ。本気で。ついでにゲロをまき散らかしますよ。スプリンクラーみたいに。スプリンクラーみたいにっ!!」
「強調表現いらんっ!!」
もう、俺は疲れた。
ツッコミを放棄したいぞ。
ここまでのやりとりをラノベにすると1000文字くらいか。
そろそろ読んでる読者が飽きる頃だろ……。
「あの、そろそろ、本題良いですか?」
「あくしろよ」
「語録辞めていただけませんか?」
「いちいちツッコむな。長くなる」
「……ふぇぇぇん」
俺は頭を掻いた。
「……ダメ神様よ。とりあえず、その『スキル』っていうの説明してくれないか」
「わ~い! やっと話を聞いて貰える~。バンザーイ」
そう言いながらダメ神は、バラエティー番組で「罰ゲーム」が書かれた紙が入った抽選箱みたいなものを胸の谷間から取り出した。
どうやって仕舞っていたかをツッコんだら負けな気がするので、スルー。
「この中には99個の『スキル』が書かれた紙が入っています。太郎さんが死んだら、私がこの中から1枚引いて読み上げます。それが太郎さんの『スキル』になります」
「……何でそんな中途半端なんだ? 100とか124とかのキリが良い数にしないのは何でだ?」
「なんで2の7乗なんですかっ! せめて8乗でしょう!」
「256は多いだろうが!! 良い感じに124ってごまかしたんだから、話進めろ。そろそろ人類が別の生物に進化するぞ」
「何それ、こわ」
……女を本気で殴りたいと思ったのは、人生で2度目だ。
「ちなみに中途半端な理由なんですが、すでに太郎さんは1つスキルをお持ちです。確認する方法は、<スキルウィンドウオープン>と唱えてください」
「……めんどくさ。まぁ良いか。<スキルウィンドウオープン>」
=========<スキルウィンドウ>=========
1.死者蘇生
死んだ時点・地点で蘇生する
============================
「太郎さんが『本来生きるはずだった寿命』をこれで全うすることが出来ます」
「日本にこれで帰れるのでは?」
「無理です。管轄が違うので」
「縦割り行政!?」
「どこの世界もそんなモノです」
「世知辛い……」
大人って大変なんだなぁ。
一応、神様らしいコイツでもそうなんだから、人間社会も大変なんだろうな……。
まぁ、俺は死んだんですけど。
「詳しいことは、使いながら覚えていってください。では、これでチュートリアルを終わりますね」
「説明らしい説明無いんだけど」
「世の中そんな物です」
「理不尽!?」
目の前の馬鹿女は無駄に良い笑顔を浮かべる。
「『習うより、慣れろ』って言うじゃないですか」
「最低限の説明は必要でしょうが!!」
「うるさい! ばーか! ばーか! 名前が似てるのが悪い! もういい、さっさと異世界へGo!!」
俺の足下に大きな穴が開く。
「このばかおんな~」
ドップラー効果と共に、俺の体は穴の中に落ちていった……。




