29話 古びた■■■■■■1
➖リビング➖
緋華さんから伊月が少し急用で出て行ったと聞いた時は心配した。けど、何事もなかったように帰って来たから安心した。ただ何かを悩んでいるような感じだった。まぁ何か僕に出来ることがあるのなら言ってくれるだろうから待とう。
「雨歌、大丈夫か?」
「何も問題ないよ。伊月こそ用事は大丈夫なの?」
「ソレは済んだ。雨歌……少し二人で話せるか?」
「問題はないけど」
「・・・緋華、起きろ」
「あだっ!?」
緋華さんは伝えに来てくれた後、僕を抱きしめながら寝落ちした。寝る前に「雨歌くんは守る」って言ったのに寝るのはどうなんだと思うのは内緒だ。痛がる緋華さんを僕から引きはがすと伊月は……僕を担ぎあげて自室まで運んだ
➖自室➖
ベッドに投げ捨てられたと思ったらそのまま押し倒された。ん? 何故? とは思ったが伊月の表情を見るに何を怯えている感じだった。帰って来た時に何かに悩んでいたような感じだったのはコレなのかもしれない。
「雨歌……」
「何?」
「俺はお前に嫌われたくないし、失いたくない」
「うん」
「だから今から聞く質問に答えてくれ」
「分かった」
「お前の母親はどんな状態だった?」
母さんはいつも通りだけど? って言おうと思ったけど、あっちの母かぁ。何も変わっていないからそう答えた。伊月は「そうか」って言って次の質問を言ってきた。研究所のことは覚えているのか? って覚えているに決まっているでしょ。
「なら、お前に接触したのが1番多いのは?」
「研究所長ってのをしている人」
「こんな奴か?」
「この人だけど、どうして伊月は写真を持っているの?」
「・・・指名手配犯だからだよ」
指名手配されているんだぁ。白衣に真っ赤なドレス、金髪で長さは腰くらいまであって、お嬢様みたいな口調で、いい人だと思っていたけど……研究所長している時点でアレか善人ではないよねぇ。それにしても服装を変えてないならすぐに捕まると思うんだけどなぁ?
「あの研究所はブラックプラネットだったか?」
「何それ? 確かガーデンって言っていた筈」
「ガーデンか。頭が痛くなる」
「大丈夫?」
「問題はない。誰から聞いた?」
「職員がそう言っていたのを覚えていただけ」
何を考えているかは分からないけど僕には難しいことだということは分かる。正しい名前は分からないとも言っていたけど、言った方が良かったかな? まぁ伊月がしんどそうにしているし、またの機会でもいいかな。
「・・・伊月、お疲れ様」
「はぁ、マジで疲れたから少し膝を貸してくれ」
「分かった。ご飯が出来るまでならね」
「それでいい」
素直に甘えて来たってことは相当疲れたんだろうねぇ。僕に出来ることなら伊月や緋華さんにはしてあげたいからなぁ。遠慮しないでおいてほしい。
➖雨歌くんの部屋➖
―紫藤緋華視点―
リルーナ・ファングに伊月が殺されなくて良かった。雨歌くんが悲しむからどうしたものかと伊月に取り付けた盗聴器で聞きながら考えていた。最悪の場合は私が頑張って雨歌くんを抱えて逃げないとって思っていたけど、良かった。
それにしても雨歌くんに聞くような質問ではないと思うんだけど? 兄様と何やらコソコソと連絡を取り合っているみたいだけど、何を企んでいるんだろ? それにブラックプラネットって……狂っている奴らの集まりじゃないの。アイツらはまだ動かない筈なのに。
あのリルーナが雨歌くんと同系列の研究所で産まれたって私でも知らなかった。しかもボスが殺されているって…………私が知っているのと違う。禍ツ神も出てくるのも早かったし、蟲毒や天狐も私が知っているのと違う。
ありえないことでもないけども私の知っている世界ではないのは確かだけど……この二人のイチャつきだけは全く変わらない。私もあの中に加わりたいけども今回は伊月と雨歌くんだけにしておこう。私は何も出来てないしね。
そういえば伊月は研究所の場所が分かったんだろう? 私も探しまわっていたのに何も分からないままで終わるんだよね。
「・・・妖力だよねぇ~」
私も独占欲は強い方だけど……伊月よりはマシだと思うんだよね。ある程度は自重がいる訳だし、強すぎて相手の身を亡ぼすってのも知っているしね。それはソレとして私も動かないとね? 他の奴らが動く前に雨歌くんと伊月を守らないと。
あのイカレ集団であるブラックプラネットが動いているのであれば確実に雨歌くんが狙われる。伊月はなんとか撃退出来るからいいとしても雨歌くんには無理だからね。私でも対処が出来る奴は……アレだけかぁ。いやだなぁ。
➖???➖
―???視点―
「へっくっしょんっっ!!」
「汚いですわよ!!」
「すまんすまん、誰かが噂でもしているんだろうな」
「全く用があるとおっしゃるから通したのですよ」
「そうだった。あの女を俺にくれ」
「はぁ!? ワタクシが苦労して育てた蕾たちを汚したのにですか?」
「へっ、いいじゃねぇか」
この男はよくもまぁワタクシの蕾たちを横取りしておいて謝罪もないのですから。まぁ同じ仲間としては実験の成功を祝福はいたしますが、それだけです。綺麗な蕾たちになるはずだったのに……ワタクシの花もこの男のせいで失ったと言っても過言ではありませんしね。
「おいおい、娘に関してはお前がしたんだろうが!!」
「同じことです。あと心を読まないでください。気持ち悪いですわ」
「ひでぇ。まっそんなことよりも研究施設はどうなりそうだ?」
「大っぴらに動けるわけがありませんよ」
「まぁだろうな。ほとんど、捨てたしな」
忌々しいですわね。ワタクシが使わせていただいた研究施設が……部隊の名前は忘れましたがザコ共に押さえられたのは痛かったですわ。泣く泣く周辺の施設は放棄しましたわ。あの津堂伊月とか言う原点種には苦しんでもらわないと。
「やめとけ。俺らは手も足も出せねぇよ」
「・・・ボスの命令ですものね」
「あぁ、逃げるしかねぇ」
「はぁ……周りをどうにかしないとですわね」
「思い出したわ、『下手に動くなよ』だとよ。あとコレ手紙な」
それだけ言うと男はワタクシの箱庭から出て行きました。それを先に言ってほしいものです。おそらくは彼の忠告でしょうから受け取っておきますか。手紙は……ラブレターではなさそうですわね。残念です。
私は古びた■■■■■■を一人で指しながら……紅茶を飲み干しました。悪くないですわね。案外、思い出の品を触るのは。




