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1話 不澤家と幼馴染二人 1

➖自室➖


 早朝、アラームが鳴り響く。アラームを止めそのまま二度寝でもしようとしたらドアが開けられ布団を剥がされる。


雨歌(うか)兄さん、今日は入学式でしょ?」

「あと、5分だけ」

「ふ〜ん起きないんだぁ。じゃ私の好きなことしていいよね?」

「うわぁ!! (そら)それはなしでしょ」


 足を掴まれて逆さ吊りにされてしまった僕の名は不澤雨歌(ふさわうか)で平均な男性よりも小柄な人間だ。昔から惹き寄せる体質との事で色々なことを多く経験してきたので案外図太い性格をしていると僕は思っている。


「雨歌兄さんが起きないのが悪いんだよ?」

「そうだろうけど、この起こし方はどうなのよ」


 僕を起こしに来たのは義妹の空、昨日やっと中学生になった十二歳の女の子だ。僕と違う点といえば足が八本あるってこと以外は普通の女の子だ。種族はスキュラってことになっているけど、父親が鬼だからハーフだね。

 

 一応兄である僕よりも背が高くて、少しだけ悔しい。僕の身長が143cmなのは母親からの遺伝だから仕方ないけど、本当に悔しい。


 顔は……クール系の美人で、髪はショートヘアにしてある。髪と目の色は名前と同じ空色でよく儚そうって言われているらしい。見た目とは違って結構活発的なので、その評価は驚きだ。だってストーカー被害に遭ったとしてもコンクリートを素手で破壊して撃退したって話を聞かされた。その時に思ったね、鬼の血もしっかりと受け継がれているって。


「雨歌兄さん降ろすからちゃんと準備してね」

「ちゃんとするよ」

「先にリビング行っておくよ」


 流石に起こす時に足を掴まれて逆さ吊りにするのはやめてほしいんけどなぁ。しかもスキュラの足って吸盤があるから跡が残ったりするからやめてほしいんだよ。なんてことを言ったら「雨歌兄さんが起きないから悪い」って言い返されてしまうしね。



 新しい制服に着替え終わり変なところがないかを鏡で……そういえば部屋に鏡がないのを忘れていたなぁ。まぁ別に気にするほどではないだろうからアレだけど大きめの鏡を買うのもありかな? 流石にもう高校生にもなって反対なんてされないだろうし・・・されないよね?


「雨歌ちゃん、制服似合ってるわよ」

「母さん、ありがとう。だけど少し大きくない?」

「成長すると思うから大きめに作ってもらったんだけど……」

「もう中一から変わってないんだけど……」


 リビングに入ると母さんがこちらに来て制服を確認してきた。スキュラ族の涼音(すずね)さんで空ともう一人、海兎(かいと)という鬼の血を色濃く受け継いだ双子の母だ。こちらも僕よりも身長は高く力も強い。ちなみに足は二本で髪や目の色は空と同じだ。顔立ちもよく、モテるらしい。


 双子以外にも姉2兄1はいるが鬼と人間のハーフだ。僕は純粋な人間だからなのかはわからないけど異種族によく絡まれるけどモテることはない。姉と兄は血の繋がりはあるが、母方だけなので種違いってやつらしい。よく分からないけど中学の先輩から教えてもらったので間違いないだろう。


「雨歌兄、そこの変態に何かされてなかった?」

「海兎……大丈夫だよ。あと、空は変態なんかじゃないだろ」

「・・・そうか」


 海兎はどこか納得していない様子だったが大人しく椅子に座ってしまった。僕と母さんはポカンとするしかなかった。一体、二人の間に何があったのかは分からないが……昔はあんなに仲良かったから普通に仲を戻してほしい。ってか君は元気っ子だったよね? キャラ変したのかな。


「雨歌ぁ〜〜。あだっ」

夕夏(ゆうか)ちゃん、危ないことはダメよ?」

「うぅ〜お義母さん。雨歌をぎゅーとされてくれないの?」

「雨歌ちゃんは今日は入学式でしょ?」


 背後から僕に抱きつこうとしてきた人は長女の夕夏姉さん。僕にものすごく甘くてことあるごとに抱きついてこようとする。母さんがいる時は止めてくれるので助かっている。助けてくれるのはありがたいんだけど、抱きかかえるのは違うんじゃないかな?


 夕夏姉さんは羨ましそうに親指の爪を噛まないでくれない? 普通は頭にフライパンをぶつけられているんだから痛がろうよ。そこのリアクションが一切なくて僕の今の状況にあるってどうゆうこと!! ってなるから。


「お母さん……雨歌兄さんを降ろして」

「ダメよ、空ちゃん」

「な、なんで?」

「だって降ろしたら抱き着く気でしょ?」


 母さんにそう言われて空は顔を背けた。もう少し上手く誤魔化すことは出来ないのか。ちなみに物理的に僕は口を塞がれているので喋ることが出来ない。抜け出そうともがいてはいるけど、僕は普通の人よりも非力だから抜け出せない。


伊月(いつき)兄が迎えに来てくれるって話だったはず!!」

「あら……そうだったわね。雨歌ちゃん、ご飯を食べてましょうね」


 やっと解放された。朝食を摂る前に海兎にありがとうってお礼を言うと照れたのかそっぽを向かれた。少し悲しい。そういえば父さんはどうしてはどうしても仕事が休めないらしく僕が起きる前から出て行っているのは知っているけど、(あお)兄さんと梨奈(りな)姉さんが居ないのはなんで?


 二人は生徒会に入っているって話だったけど休みって言っていたような覚えがあるんだけどなあ。記憶違いかもしれないから別にいっか。父さん以外は普通に入学式に来れるわけだし特に何か言わなくてもいいよね。


「雨歌、準備は出来てるか?」

「伊月!! 来るのが早くないかな」

「俺が親友の顔を見たくて早く来たんだが何か問題あるのか?」

「なっ! もん……問題はないです」


 くそぉ、普通に恥ずかしくなるようなことを何事もないように言いやがって。彼は津堂伊月(つどういつき)で此処に来る前からの友達だ。伊月も異種族ではあるが稀少な種族ということは知っているがそれ以外はわからない。まぁ長い付き合いだから別に気にしてないからいいけどね。


 初めて出逢った時は絶対に誰も近付かれないような雰囲気を出していたのに、中3の時はファンクラブなんてモノが出来ていたくらいには人気があった。モテたいって訳ではないけど……少しは寂しかった。まぁ僕は親友だからファンよりも距離は近いから。別にいいんだよぉ〜


「そういえば緋華(ひいろ)から何か連絡あったか?」

「ないかな」

「珍しいな。アイツなら絶対に連絡を寄越すと思っていたが」


 紫藤緋華(しどうひいろ)さんは僕と伊月の幼馴染で一つ年上の獣人だ。灰色狼って言っていたけど耳や尻尾、髪や目の色は灰色って言うには少し色が濃いような気がする。伊月とは親戚って言っていたが種族は違うってことだった。不思議だけど、そういうことも別にある世界だから特に疑問に思わなかった。ん?


「伊月、一部だけ髪の色が落ちてるよ」

「マジか……安物はダメだなぁ」

「ヘアカラースプレーあるけど」

「使わせてもらうわ。部屋にあるんだよな?」

「うん、場所はタ_もういってるよ」


 伊月はアルビノという病気で色素が薄く生まれてきたらしい。髪だけが白髪で、瞳は赤という珍しい組み合わせで産まれたみたいだった。種族的にはってことだったけど、伊月はそれが嫌だったみたく小学生になってからはカラコンをつけ、髪は染めた。本人次第だから口出しする気はないけど、何故に黒にしているのか気になるよ。


 そういえば緋華さんに自慢していたけど、アレは一体どうしてやったのだろうか。伊月があそこまで自慢するのはなかったと思うけど……というか何を自慢していたのかは僕には一切分からなかったからなぁ。その後、殴り合いの喧嘩になったから本気で止めに入ったけど止まらなかった。


「雨歌ちゃん、約束は守ってね?」

「は、はい」

「楽しんではほしいけど危ないから絶対によ?」

「絶対に守ります」

「ふふふ」


 母さん怖いよ。僕は惹き寄せる体質のせいで死にかけたことがあったことから極力一人行動はしない事を母さんから約束付けられた。絶対ではないのでプライベートは守られてはいるんだろうけど、ほとんど一人の時間がないのはしんどいとは思うけど家の中でだとあるからマシかな。


 もし破ってしまったら家で軟禁するって言われたしみんなして、母さんの言葉に同意したから本気でやってくる。

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