Dual Note
デュアル・ソウル―ひとつの体に住む、ふたつの魂。
ひとりは13才の少年。もうひとりは52才の淑女。
ふたりの葛藤とその行方を、あなたの魂で見届けてください。
ブラックコーヒーのような「老い」に、ミルクのような「恋」を混ぜて、カフェオレ小説にしました。
―…あのね。…ぼく。ぼくね、怖いんだ…
いつか、ぼく、消滅しちゃう、そんな気がして…
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ぼくとわたしは、決して二重人格なんかじゃない。
二重人格ってのはね―あの、専門的な話になっちゃうんだけど…あ、易しく話すからさ、それと、あんま重くならないようにしゃべるからさ…あの、聞いて?
…―あぁ、聞いてくれるの?ありがと(ニコ)、じゃ話すね。
二重人格ってのはね、解離性障害の一種なんだ。つまり、ひとりの人間の中に、ふたつの魂があって、それらが完全に「解離」してるって事なんだよ。
ふたつの人格は交代で現れて、それぞれの記憶が無い。だから、知識や技術を習得しても、お互いに共有する事ができない。
確かにぼくらは、「デュアル・ソウル」―ひとりの体の中に、ふたつの魂がある。
“ぼく”は13才の少年。“わたし”は52才の淑女。
いましゃべってるのは―そう、ぼく…の方なんだけど。
ぼくとわたしは、お互いの記憶がある。知識や技術も共有している。
それに、交代で現れる時もあるけど、ふたりが混在してる時もあるんだ。
だから、ふたつの魂は、完全に解離してるわけじゃない。
う~んと、ヘンな話ね、魂が、こう、二股に分かれてて、その根っこの部分が繋がってるんだよ。
大本の所が重なってるから、記憶も、知識や技術も、全部、同じものを持ってる。
いちいち話し合いをしたり、メモやノートで記録を取らなくていい。
それぞれのタマシイが感じている、痛覚や、喜怒哀楽、考えた事、覚えた事、好き嫌い、幸・不幸、それらが、何の努力も無しに、何のツールも無しに、瞬時に伝わるんだ。
めちゃくちゃ仲のいい双子って、話し合わなくても理解できちゃったり、同時に痛みを感じたりするんでしょ?
それってさ、たぶん、魂の奥深い所で、ふたりはヒモみたいなもので、繋がってるんじゃないのかな?
ぼくらは、もっと太ぉーい根っこで繋がっているから、更に強固なシンパシーを作れる。
二重人格の場合は、障害によって、「本望でない解離」が起こっちゃってる感じ、でしょ?
ぼくらは―…これは、自分では決して認めたくはないんだけど…
自分で、自らの意志で、自由気まま好き勝手に、ふたつのタマシイに解離させているんだ。
たとえば、紫の事象があったとする。それはね、理屈や見方によって、赤紫にも青紫にも、どっちにも成り得る状態なんだよ。
それでも、人生上どうしても、「赤」か「青」か決めなくちゃいけない時がある。
そんな時、君はどうする?
ぼくらは、ふたつのタマシイに解離させて、同時にこう言わせる。
ぼく 「これは赤」
わたし「これは青」
あとは、時と場所、状況によって、“ぼく”と“わたし”を使い分ければいい。
赤が必要な場面ならぼく、青が必要な場面ならわたしを、その都度、臨機応変に、メインに持ってくるんだ。
たとえば、黒い森の悪い魔女が「鏡よ鏡、世界でいちばん美しいのは誰?」って聞いてきたら、ダークサイコなぼくがメインになって「魔女さま、あなたです」って答える。ははっ、淑女のわたしがメインになったら「それは白雪姫さまです」って答えて、大問題になっちゃうからね(笑)。
たとえば、ぼくら(ぼくとわたし)の旦那様が「鏡よ鏡、世界でいちばん愛してるのは誰?」って聞いてきたら、わたしがメインになって「もちろん貴方です、あはっ、当たり前でしょ(ニコ)」って答えるよ。ぼくがメインになって「他の男性に懸想してます」なんて答えたら、それこそ大問題になっちゃうでしょ?
そうやって、緑の時も、オレンジの時も、灰色の時も、事あるごとに、ふたりに解離させて、ふたつの事象を同時に成立させるんだ。
いつの日からかぼくらは、曖昧な事象をそうやって解決するようになった。こうして出来上がっちゃったのが「デュアル・ソウル」だよ。
でも、だけど―…さ。
みんなだってそうでしょ?
いつだって人間は皆、自分Aと自分Bで戦ってる。主観的な自分と、客観的な自分で、正反対の意見を言い合う時もある。脳裏の中で、天使と悪魔が同時にささやく、なんて事もあるよね。
そんな時、みんな思うはずなんだ。「どっちも正しい」「どっちも欲しい」
個体がひとりだと、それは成立しない。―…だけど、個体がふたり、なら?
恐ろしい事に、どちらも成立させることができるんだ。それが、ぼくら。デュアル・ソウルの持ち主、だよ。
―…ぼくらはね。今、魂の中で、「紫陽花」を育てているんだ。まだ咲いてない、硬い緑の蕾のやつだよ。
紫陽花ってのはね、土壌のPHが酸性だと青い花、土壌のPHがアルカリ性だと赤い花が咲くんだ。
この場合の土壌、つまり今のぼくらの魂が、どっちのPHに偏ってて、この先どっちの花が咲くのか―
それは…ぼくらにもわからない。
それにね、魂のPHなんてのはさ、色んな人の言動が降り注いで沁み込めば、その影響でいっっくらでも変わるんだ。
概ね日本の紫陽花はね、青く咲くんだよ。
ふっ、日本人は生真面目で、倫理とか正義とかが美徳だと思ってる人種、でしょ?右に倣えって感じで、「賛成(酸性)」の土壌だから、そこから生えた紫陽花は、紫の性質を持っているのに、みぃんな一様に青く咲くんじゃないかな(笑)。
だとしたら…そうだな、“わたし“はつまらない女だから、育てた紫陽花は青く咲くって思ってるよ。―ふふっ、ぼくはね、この紫陽花は―赤く咲くって思ってる。
知ってる?日本ではね、青はススメ、赤はトマレって決まってるんだ。
でもね、あなただって身に覚えがあるでしょ?
横断歩道を渡る時、車が来なかったら?―たとえ信号が赤でも、渡っちゃわない(笑)??…それとも君は真面目に、青まで待つタイプ、なのかな。全く、どっちが正解、なんだろうね。
…しかも、その間には黄色なんてのがあるから、いつだって人生はややこしいんだ。更にはね、あなたのすぐそばに、オールマイティーの歩道橋なんてのが、見える事もあるよね。
結果論、ぼくらの統合者はね、「歩道橋」を渡ったんだ―…ずるい、よね。
つっても、よくわかんないよね。
じゃ、実際に、“ぼく”と“わたし”がどんな人格か、どんな生き方をするのか、そしてどうやってそのふたつを統合するのか。
―…教えてあげるよ。
小説を書き始めた時、5パターンのエンディングを考えていたのですが、
13才の少年と52才の淑女 ふたりとトコトン話し合いまして…
今日、全く違う「6つ目のエンディング」を思いつきました。
ふたりのタマシイがどちらも幸せになるハッピーエンドになります♡
どうかあなた様の魂で ふたりの行く末を見届けてくださいマセ☆




