90 見せたいものがある
メッセージはキュートモード。
文字データに変換した言葉が流れる。
情報量が少ない分、微弱な電波で送れるが、近接した状態でないと届かない。
一種の非常用通信モードで、ターゲットにのみ送ることができる。
ただ、アクセス用のIDは必要だ。
俺のそれを知る者は多くない。
東部方面攻撃隊のメンバーのみといってもよい。
すぐに次のメッセージが来た。
-----話がある
-----見せたい
-----ものがある
「誰だ」
それには応えず、メッセージが続く。
-----今夜
雑踏の中で送ってきたということは、政府に盗聴されたくないということだろう。
キュートモードは政府の盗聴に比較的掛かりにくいといわれている。違法だが、使っていない者の方が少ない。
-----十時
-----西門を出ろ
きわめて短い文章が流れて、また間をおく。
-----北へ
-----走れ
ンドペキは歩きながら、それとなく辺りを見回した。
目を合わせる者はいない。
知った顔はない。
マスクをしている者もいるが、キュートモードで声を掛けるためのゴーグルをしている者は……、いない。
-----信頼
-----していい
やはり、どこかでこちらを見ている。
-----途中で
-----合流する
-----誰にも
-----言うな
-----ひとりで
-----来い
これで、メッセージは途切れた。
ンドペキは迷わなかった。
死を望んでいる身。
この誘いが危険に満ちたものであろうが、トラップが待ち受けていようが、構わない。
メッセージは、見せたいものがあるという。
興味がある。




