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87 どいつもこいつも!

 ンドペキは部屋を出た。

 チョットマの部屋はそれほど遠くない。


 わすか四時間前に会った。自分の方から話すことは何もない。

 しかし、「何もない」ということを話さなくては。


 ハクシュウから新たな情報や指示があるかもしれない。

 それをチョットマから聞くのは癪に障るが、仕方がない。




 部屋を出るなり、いやなものに出会った。

 フライングアイ。

 やけに近接して飛んでいる。


 む!

 話しかけてくる!


 イライラさせてくれる!


 叩き落とそうかと思ったが、自分の今の状況を考えると、ここでトラブルに巻き込まれるのは得策ではない。

 無視するに限る。




「チョットマのパパです。娘がいつもお世話になっています」


 はぁ?

 なんだ、この目ん玉親父は。


 相手にせず、通り過ぎようとした。


「お話しておきたいことがあります。実はあなたの部屋には」

 思わず足を止めた。

「立ち止まらないで。歩きながら話しましょう。あなたは話さないで」



 目ん玉親父はイコマと名乗った。


「手短に話します。ハクシュウ隊長にもご了解を得た上で、今日のシリー川の会談を見物させていただいておりました。街に帰ってきてから、チョットマは一直線にあなたの部屋に向かいました。そうして私も、あなたのお部屋を拝見することになりました」


 怒りがこみ上げてくるのを感じた。

 あいつ、こんなやつを連れていやがったのか。



「あなたの部屋には、情報収集機器が取り付けられています。微細な電波が判別できました。奥の壁、あれ一面が盗聴器だと思われます」


 クソ!

 もう、厄介ごとに巻き込まれているのか。




 ンドペキは平静を装って往来を歩いているが、付かず離れず数メートルほど後ろをふわふわとついてくるフライングアイ自体が疫病神のように感じた。


「あなたは賢明でした。あの装置は生の音声を拾うタイプのものじゃありません。電波化した信号を拾うものです。もちろん電波化した声も」



 こいつ、本当ことを言っているのか。

 それとも、罠か。


 部屋の違和感を感じたのは事実だし、盗聴器の存在を疑ってみたことも事実。

 現に、チョットマが帰ってから、心配になって調べてみたが見つからなかった。

 こいつの言うように、簡単に見つけられるものではなかった。



「このことはすでにチョットマには伝えてあります。こうしてあなたの耳に入れるつもりだということも」


 ンドペキは自分のイライラした気持ちが、爆発しそうになってくるのを感じた。



 ここ数日!

 どいつもこいつも!

 なにもかもが!


 わからないことだらけ。

 面白くもない。

 くそったれの洞窟に、くそったれの会談!


 なにがパリサイドだ!

 レイチェルがどうした!


 それになんだ!

 この目ん玉親父は!

 ひそひそ背後から呟きやがって!



 ゴーグルの中の顔は怒りで膨張していたが、幸い道往く人には見えない。

 短剣の柄に手が触れたが、無理やり握りこぶしを作ると、このフライングアイを切り付けたい衝動を抑えた。



「では、今日のところはこの辺で。以後、お見知りおきくださいますよう」

 フライングアイはすーっと舞い上がると、どこかに飛んでいった。



 -----イライラは抑えて


 フライングアイが消えると同時に、また声がした。


 -----わたし


 ンドペキの横を、女がひとり、追い越していった。


 -----さっきのフライングアイと同じように、歩きながら話すわよ

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