71 頬ずりしようとも、手を握ろうとも、キスしようとも
言い終わらないうちに、娘は駆け出してきた。
飛びつき、抱きついてきた。
「おじさん、ごめんなさい!」
イコマは娘を思い切り抱きしめた。
腕の中の感触を確かめた。
そして、「アヤちゃん!」と繰り返した。
もう、もう間違いない!
頬ずりをした。
思わず唇が触れた。
アヤがその唇を押し付けてきた。
涙の味がした。
そっとアヤの体を離し、目を覗き込んだ。
見つめ返してきた目は、彼女が子供だったときのように、かつて同じ部屋で寝ていたあの頃ように、無垢な信頼感で満ちていた。
心を震わせた思い出の日々……。
そして、彼女が大人になってから見せていた、ひたむきな愛情も、瞳の中に溢れていた。
もう一度、アヤの頬を、目元を、口元を、髪を撫でた。
その手にアヤの手が添えられた。
なにも言葉にならなかった。
どんな言葉も、今は空虚。
言葉だけではない。
頬ずりしようとも、手を握ろうとも、キスしようとも、今の喜びは言い表せない。
心の震えを抑えることはできなかった。
「ごめんなさい、私……」
イコマは水色の髪を撫で続けた。
「おじさんを守るなんて、偉そうなこと、言っておきながら、忘れて……」
言葉を搾り出した。
「ううん。信じていたから……」
「おじさん、私ね……」
両手を頬に添えて、また瞳を覗き込んだ。
「何も説明しなくていい」




