481 チョットマの懐に入っておりましたので
イコマはレイチェルの部屋を訪問した。
急ごしらえの扉が設置してある。
隣の部屋は空室だが、そちらにも扉がある。
アヤの部屋として準備された部屋である。
どちらも下に隙間が開いている。
フライングアイが自由に出入りできるように配慮してくれたのかもしれない。
レイチェルと話そう。
どうして、アヤがエーエージーエスに放り込まれることになったのか、それを聞かねばならない。
「入ってよろしいか」
「どうぞ」
女が座っていた。
入ってきたのがフライングアイだと知ると、包帯の隙間に覗く目を丸くした。
「始めまして」
イコマはチョットマのパパだと自己紹介した。
レイチェルとチョットマは会っていないはず。
チョットマとは誰かと聞いてくるだろう。
それをきっかけに、街の様子などを話そうと思っていた。
が、あてが外れた。
レイチェルは、黙ってチラチラと視線を送ってくるだけだ。
前振りなしに、街の様子を話すことにした。
「街の様子をお話ししましょうか」
「ええ、ありがとうございます」
見る限り、市民は平穏である。
ただ、街中で武装することは厳しく禁止され、武器などの店は閉ざされている。
また、防衛軍や治安部隊の巡回は頻度を増している。
レイチェルは唇を引き結び、黙って聞いていた。
「あるバーに、将軍と呼ばれる人が飲みに来ていました」
さすがに、レイチェルが目を剥いた。
「誰ですか?」
「存じません。私はチョットマの懐に入っておりましたので、姿を見ておりません」
依然としてレイチェルは、チョットマとは誰かとは聞かない。
本題に入ろう。




