18 あの日、立ち話、してたじゃない!
チョットマはヘッダーを外し、ついでにハイスコープも外した。
インナキャップはもちろん被ったまま。
この男に、素肌を見せるつもりはない。
街の中でいつも身につけているインナキャップは、もう少しオシャレなマスクだが、今被っているのは戦闘用のもの。
高性能のナノカーボン製。
真っ黒な海坊主のような代物で、目の位置には平面的な樹脂が嵌まり、口にはシリコン製のフィルタ。
まるで妖怪人間。
少し恥ずかしいが、一応は礼儀を示して。
「サリの行方を捜してる。なにか、知らない?」
この男は、サリのことを知っているはず。
以前、サリとこの男が街角で話しているのを見かけたことがある。
「サリ?」
だが、男はとぼけてみせた。
「誰のこと?」
チョットマの心に、ずしりと怒りの感情が湧いたが、それをぐいっと押し流すと、穏やかに声を出した。
きっと、目は釣りあがっているだろう。
「私と同じ隊に所属する兵士」
「君と同じ隊? そんな人は知らないな」
じゃ、あれはなんだったのよ!
あの日、立ち話、してたじゃない!
しかし、チョットマは問い詰めたりはしなかった。
プレイボーイね、と思ってるなんて受け取られたら、さっき湧いた怒りを抑えきれなくなる。
「もう、いい」
チョットマは背を向けて、ブルーバード城門へ戻り始めた。
自分の部屋は、もうすぐ近くだったが、この男に後を付けられる恐れもあると思ったからだ。
それにサリの部屋にも、もう一度寄ってみたいと思った。
さっきも見に行ったけど。
うれしいことに、男は後を追ってこようとはしなかった。
ああ、無性に、あなたの声が聞きたくなったよ。




