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19 リキュールのうしろめたさ

「ねえ、ンドペキ」


 チョットマは、スマートモードで声を掛けた。

 特定の人物と話すときに使うモード。

 かなり遠いところにいても通信可能だ。

 相手がハイスコープを装着していないと使用できないが、繋がるかもしれない。


「どうした」


 そっけない返事がきた。

 声が少しざらついている。

 チョットマの心の痣が、また少し大きくなった。



「人は、部屋の中で死んだら、再生される?」


 再生はされる。

 完ぺきに政府の監視網を逃れることができるなら話は別だが、どんなジャンクショップに行っても、それほど高性能な通信遮断素材は売られていない。


 どの部屋もどの店も、ハイスペックシェルタなどと銘打った製品を使用しているが、そんなものは本当は役には立っていない。

 遮断できるのは、可視光線とその周辺の波長の光、そして数デシベル以上の音、汎用周波数の電波だけ。

 現に、兵士が使う通常の通信は、どのモードであれ、自分の部屋にいようが、レストランのプライベートルームにいようが、どこにいても繋がる。


 そんなことくらい、知っている。


 ただ、ンドペキ、あなたと話したかっただけ。



「おいおい、何を言い出すのかと思ったら」


 声が流れてくる。

 鼻にかかった少し高い声。

 小さな蜂の羽音のような。

 夕方になる前のけだるい午後を、もっとやるせない気分に変えてしまうような声。


 でもチョットマは感じる。

 戸棚の奥にしまいこまれたリキュールを盗み飲みしたときのような気分になる。

 甘くて、怖くて。

 少し後ろめたいような。



「当たり前じゃないか。俺達は、死ねないんだよ。たとえ、本人が死にたくなっても」

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