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一体どうしろと  作者: 猫宮蒼
一章 自衛のために好感度とかもっとわかりやすくしてほしい

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大魔女の暇潰し



「お前にはいくつかの呪いがかけられている。そのうちの一つは両親がかけたものだ。

 そして、一つ呪いを紐解けば他の呪いも解ける可能性は上がる。

 だというのに……解呪しないというのかい?」


 レーゼリナは呪われているくせに全く危機感も何もあったものじゃない弟子が面倒を見ていたらしき相手を見る。いくら実害を感じないといっても呪いは呪いなのだ。それがどれだけ小さなものであったとしても、いつかどこかで何らかの弊害が出る。

 呪いによって逆に何か良い目を見たとしても、いずれどこかで反動によって更なる不幸に落ちる事だってあるのだ。

 だからこそ、呪われたと知った者は大抵その呪いをどうにかしようとするはずなのに――


 特に困っていないから、という理由で放置しているこの目の前の人物に、レーゼリナは余計なお世話であろうことを理解しつつも二度、忠告をした。

 一度目は気付いていないだけかもしれないと思ったからこそ。

 二度目は呪われている事を知っていながら何の対策もしようとしていないからこそ。

 三度目のこれは――彼女なりのお節介と言えばそうだ。


 本来ならば大魔女相手に呪いの解呪を頼もうものならその対価はとんでもないものになる。


 けれど、かつての弟子が面倒を見ていた相手となれば多少はまぁ、見込みはあるだろう。

 もしかしたら弟子と同じく魔女になれるかもしれない。自分と同じ大魔女の位置までやってくる逸材であるかもしれない。

 今はまだ大した事のない、それこそ卵の殻がまだくっついたようなひよこのようなものであったとしても、成長すれば化ける、なんてのはよくある話だ。


 正直暇を持て余しているといってもいい。

 だからこそ、丁度そこにいた都合の良さそうな人物に目をつけたのはある意味で当然の流れだった。


 だというのに、当の本人はそうまで言っても呪いはそのままでいいと言うではないか。


 理由を聞けばまず魔女に頼みごとをした時点で対価がどうなるかわからない、というとても現実的な言葉が口から出てきた。

 確かにそうだ。

 世の中には気軽に頼みごとをする者もいるけれど、相手が魔女であればその気軽な頼み事で身を滅ぼす者だっている。目先の利益にとらわれて対価を支払えず破滅する、なんていうのは時折存在する。

 呪われているという事実に動揺して咄嗟に藁をも掴む思いで飛びついた、などであればまぁ、こちらとしても対価に関してはそこまで大きく取り立てるつもりもないが、それでも。

 飛びついてくると思っていたのだ。


 更にはこうも言ってきた。


 過ぎた力は身を滅ぼす――と。


 元は自分の力のはずなのに、それを過ぎた力だと言い切ったこの人物に。


 レーゼリナは声を上げて笑った。

 身の程を弁えず巨大な力を欲する者は大勢いたが、自分の本来の力ですら過ぎたものだと言い切った目の前の相手に――それこそもう何年振りだろうかというくらいにレーゼリナは声を上げて笑ったのだ。


 今まで封印されたも同然だったその力を解放したとして、使いこなせる気がしない、と。

 それは聞きようによっては謙虚さすらある。

 レーゼリナがその言葉を聞いて思ったのは、謙虚さというよりは賢さだった。


 実の両親が我が子に呪いをかけるなど、普通はそうない。

 そうするしかない状況があったか、普通ではない状況だったか。

 そこらの魔女ならそのあたりまで知る事はできなかっただろうけれど、けれどレーゼリナは大魔女だ。

 絡みつくように存在している呪いの存在を目視できる。

 そして、そこからどういった理由で呪われているのか、また誰が呪ったのかを知る事が可能だった。


 とはいえ、知る事ができたのは両親がかけただろう呪いだけでそれ以外の呪いは一体誰がかけたのかもわからない。

 何せ絡みつく糸のようになっているその呪いの行きつく先がことごとく上なのだ。

 生きた人間が呪った場合は呪った相手と呪われた相手とを繋ぐように続くため、その糸は地を這う事もある。物理的な距離が開いている場合は上に伸びている事もあるが、それでも一直線に空に向かって伸びる事もない。


 そこから考えられる事は、呪いをかけた相手はとっくに死んでいるか――はたまた、レーゼリナですら手出しできないような遥か遠い場所に存在しているか。

 まさかな、と思った直後にかぶりを振る。


 だってそんな――死んでなお絡みつく呪いであればまだしも、生きているのに手出しもできないような遥か彼方遠いところからだなんて、それこそレーゼリナと同じ大魔女か、それよりもさらに上の――

 そんな相手にレーゼリナは心当たりがない。誰がかけたかわからない呪いではあるが、それはきっとこの者の前世から引き継いだ業か何かだろう。だからこそ、この呪いをかけた者が生きているはずはないのだ。


 目の前の人物は、呪われているという事実を突き付けられたとはいえそれがどんな呪いであるかなんて知っているわけではない。

 だが、薄々どんな呪いであるかを感じ取っているのではないだろうか。

 そうでなければ解呪に飛びつくはずなのだ。


 理屈で判断してるわけではないけれど、それでも本能的な部分で察知している。


 レーゼリナはそう感じ取った。


 引き際を弁えるどころか、踏み込んでいいものかどうかを理解できているのは長生きできる。引き際を見誤れば当然死ぬし、踏み込んでいいかどうかもわからず突き進めば最悪死ぬ。

 師を同じくしたとはいえ、魔女二人と共に暮らして何の問題もなかったらしいのもレーゼリナからすれば高評価。

 だからこそ弟子にすれば、それなりにいいところまでいくのではないか、と思えた。


 だがそんなレーゼリナの思惑など知りませんとばかりに、気まぐれで伸ばした救いの手をやんわりと遠ざけたのだ。

 これを笑わずして何を笑えというのか。


 気まぐれとはいえ大魔女が手を差し伸べるだなんて、滅多にない事だというのに!


 わかっていてやっているというよりは、無意識によるものだろう。

 だからこそ余計に笑えてくる。


「ふっふふ、いいねぇ、お前、面白いねぇ」


 かつての弟子であったローズマリーやリタとはまた違う方向性で見どころのある奴。


「気に入ったから、レーゼリナ様直々に色々と教えてやろうねぇ」


 相手が拒絶しようが知った事か。


「えっ、いやいいですいらないです」


 案の定そんな返答がやってきたが――


「お前の意思は聞いていないよ。これはアタシがやりたいからやるんだ。お前は精々巻き込まれていればいい」

「うっわ理不尽」


 うげぇ、とばかりに表情を歪める相手に、やっぱりレーゼリナはころころと笑うのであった。

 大魔女相手にこんな反応を示す奴なんて、何せそうそういないのだから。


「なぁに、呪いを解かなくていいというのならそうしておくさ。精々、その呪いを抱えたままどこまでできるかを見せておくれ」

「あっ、これもしかして面白い見世物枠扱いなんですね……?」

「わかってるじゃないか」


 己の立場を即弁えるあたり、リタよりも物分かりがいい。


 あはあはと笑うレーゼリナに、向こうも早々に諦めたのだろう。だがしかし、ついと顔を上げると、

「もしかしてこのままここに居着くつもりですか? だとしたら家賃払ってくださいね。生憎うち裕福じゃないんで」

「だっ、大魔女相手に家賃の請求とか、真顔でしてくるやつ初めて見たよ! お前、どこまで面白がらせるんだい……!」

「いや大魔女とか関係なしに居候されるならそりゃそうなるでしょ……」


 まぁ、そうなのだけれど。

 こういう部分はローズマリーに似ているな、と思いながらも、妙にツボに入ってしまって中々笑いから抜け出せなくなってしまったレーゼリナは――


 耐え切れないとばかりにテーブルに突っ伏した。

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