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一体どうしろと  作者: 猫宮蒼
一章 自衛のために好感度とかもっとわかりやすくしてほしい

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その呪いは放置の方向で



 出されたお茶を一口飲んで、レーゼリナはふぅ、と小さく息を吐く。

 そうしてこちらを見て、

「まぁまぁだね」

 なんて言ってのけた。


 まぁ、お茶を淹れる事ってそんなないから……前世は基本ティーパック。茶葉からティーポットに入れて蒸らして、なんて事はしなかったのだから、お茶を淹れるスキルが高いわけでもない。そもそもこっちの世界のお茶も庶民でも手を出せる値段の物はあるけれど、基本は嗜好品。

 一応リタさんのお師匠って事もあるからお客様用のちょっといい茶葉使ったけど、これで文句言われたらブチ切れるところだった。


「それはさておき、お前が呪われてるというのは前にも言ったと思うのだけれど」

「そうですね。自覚はないですけど」

「普通呪われてたらそれなりに自覚が芽生えたりすると思うんだけどねぇ……」


 まるで変な生き物を見るような目を向けられたけど、いや、だってそれ、下手したら自滅一直線じゃん。


 前世は魔法なんかの不思議パワーはお話の中の存在で、でも呪いは存在していた。

 とはいえ、それが本当の呪いか、と問われれば微妙なところだ。

 例えば丑の刻参りした誰かが呪っていたのがよりにもよって私でした、みたいな感じで呪われている! って知ったなら、何らかの悪い出来事があった時にもしやこれが呪いの……!? なんて思う事はあるだろう。

 あとは学校卒業して数年会ってなかった人が実は自分を恨んでいて……とかそういう話を聞いてからちょっとした出来事全部がもしかして……ってなるパターンの話も聞いた事がある。

 でもそういうのって大体今の人生が上手くいってない時が大半だと思うんだよね。


 呪い関係なくロクな人生じゃない人が今の自分の人生がいいものじゃないのは呪いのせいだ、って思い込んでく感じ。もっと根本的な原因があったとしても、呪いのせいにしてずるずると……っていうのがよく聞く話のオチというかなんというか……


 でもって私は呪われてるとこの人に言われたけれど、別段そんな感じはしていないから放置したままだった。前にも思ったけど、言われたタイミングが前世の記憶思い出した直後とかなら信じたとは思うよ。あの時点がまさに転落直後、みたいな感じだったし。けど今はこうして衣食住足りてるし生活にそこまで不便してないし。これで下手に私呪われてるのね……とかって信じ込んでちょっとしたイヤな事があるたびに呪われてるから……って思い込んでいくようになったら、それこそ誰かの思う壺のように思える。

 勿論何らかの魔術的な何かが原因である呪い、というのもこの世界に存在してたとしておかしくはないから、そういうのは放置しておけないかもしれないけど、そうじゃないなら放置一択。

 んでもって呪術的なもの、というのが私にかけられてる感じはしないんだよね。だから今の今まで放置したまま、っていうのもあるけど。


「まぁお前にかけられた呪いは想いの力のみで確かにそこまで深刻なものじゃあない。けど、呪われてると知らせたのにそのまま放置してるってのはアタシもある意味初めてだよ……」

 そこは普通もっとこう、慌てて呪いを解く方法を知ろうとするもんじゃないのかねぇ……なんてぼやかれる。


 いや、ぼやかれましても。切羽詰まった状況じゃないっていうのが正直な話だし……


「その呪いを解く事ができれば、もしかしたらお前は今よりももっと魔法を使いこなせるかもしれないというのに……」

「え、何それどういう事ですか?」


 呪い、という言葉からてっきり不幸が訪れるだとか、何かこう、肝心なところで上手くいかないだとか、人生のターニングポイントで何らかの失敗をしてしまうだとか、そういう方向性でしか想像していなかったけれどどうやら思っていたのとは少し違うらしくて、つい反応してしまった。

 いやだって呪いって大体そういう感じのやつでは?


 そもそも今だって確かに結界と治癒魔法くらいしか使いこなせていないけれど、それだって別に不自由してるわけじゃない。けれどこの身にかけられている呪いは、どうやら私の魔法に関して何らかの制限をかけている……という風に受け取れる。少なくともこのレーゼリナの言い方では。


 私が興味を示したのを見て、彼女はニヤリと笑う。


「お前にかけられた呪いは一つじゃない。いくつかの呪いが絡み合っている。だが、そのうちの一つは間違いなくお前の両親がかけたものだろう」

「両親が……?」

「あぁそうさ。お前の力を封じるような呪いだね。どうだい? アタシならその呪い、解く事ができなくはないよ?」


「……やめときます」

「どうしてだい!?」


 私が断るとは思っていなかったのか、レーゼリナは声を裏返らせて問いかけてきた。


 いやだって……


「まず、魔女が何の対価もなく親切でそんな呪いを解くなんて事してくれるとは思えないっていうのが一つ」

「ま、まぁ、確かにその呪いを解くにあたって弟子になってもらおうとは思ったけれど」

「弟子にしてどうするつもりですか」

「お前ならアタシと同じ大魔女になるのも夢じゃない。そしてそんな優れた存在を育てたとなればアタシも他の魔女連中に鼻が高いからね」


 長く生きてると後継を育てるくらいしか愉しみがなくなってくるんだよね、とか言っているが、正直何だかとても大変そうな予感しかしないのでその言葉に頷いて是非弟子に! とは言うつもりがない。

 普通に、って言っていいかもわからないけど魔女となるのも大変そうなのに、その更に上、大魔女ともなれば一体どれだけ厳しい修業が待ち構えている事か……冗談ではない。

 私は別にそういうの目指してないのでお断り一択だ。


「私の力を封じる、というのが攻撃魔法がこれっぽっちも使えない事に起因しているというのなら、わざわざ解く必要性もありません」

「どうしてだい。不便だろう?」

「そりゃまぁ、土はともかく水はちょっとしか出せないし風も精々がそよ風程度、飲み水の確保と洗濯物を乾かすくらいはどうにかなるけどそれだけで、火の魔法に至ってはこれっぽっちも発動する気配がありません」

「だったら」

「けど火打石で火をつけるのもすっかり慣れましたし、そういう意味では困ってないんです」


 そもそも外で野宿するような事がまずない。

 いや、ないわけじゃないんだけど、自分一人だけで、という状況にはならないので火を熾さないといけない場合は大体他のギルダーさんがやってくれる。

 私が火を魔法で出せなくて困ったのは、思い返せば親戚の家に引き取られる事が決まったあの日、馬車から放り出されて彷徨って、おばあさんと出会うまでの話だ。

 あの時と同じような状況に陥ったとしても、今の自分ならそこまで困る事もない。


「それからもう一つ。

 過ぎた力は身を滅ぼしますから」


 そう言えばレーゼリナは思ってもいない事を言われた、みたいな顔をした。


「過ぎた力って……もとはお前の力なのにかい?」

「はい。自分の力であっても、です」


 そりゃあね?

 こうして異世界転生した以上、その世界で魔法があるっていうならそりゃあね?

 使ってみたいって思うのはあると思うよ?


 ありとあらゆる魔法をマスターしたい、とかそういう風に思うのはあると思う。だって前世じゃ魔法なんてのはあくまでも二次元の話だ。実際にあるわけじゃない。

 もしかしたらあるかもしれないけど、世間一般に浸透しているわけじゃない。無い、と思われている世界なので仮に使える人がいたとしてもそれは大っぴらにはしないだろう。下手にそんな力ひけらかしたら良くて見世物悪くて実験動物扱いになりかねない。


 ともあれ、幼い頃漫画やアニメで見た魔法とかそういうのに憧れた事がある以上、使えるなら使ってみたい! と思うのはある意味で当然だと思っている。

 でもさ、仮に私がその呪いとやらを解かれて攻撃魔法が使えるようになりましたよ、という状態になったとして、だ。


 ……正直使いこなせる気がしないんだよね。

 今までがほら、生活の役にかろうじて立つかなー? くらいのやつしか使えなかったってのもあって、ルーウェンさんを筆頭に攻撃魔法を使ってるギルダーの人たちのように攻撃魔法が使えるかってなると……なんだろう、成功するイメージが皆目思い浮かばないんだ……


 仮に攻撃魔法を使ってる自分を想像してみても、なんていうか……いっそ一思いに殺してやれ、みたいな感じになりそうでですね……?

 逆にこっちが危険人物扱いされて迫害されるのでは……? という想像しか浮かばないんだよね。


 人を一瞬で火だるまにしたりだとか、氷漬けにしたりだとか、ミキサーにぶち込んだみたいにずたずたに切り刻まれる光景とかが余裕で想像できるだけに、そんな攻撃魔法を使うようになったら何か警戒されそう。無駄に。

 って思えるんだよね。


 私の事だから、仮に攻撃魔法が使えるようになったとしてそれも確実に無詠唱で使えるように練習したりすると思うんだけど、その過程で確実に危険人物扱いされる気しかしない。

 強い力を持つ者ってよっぽど周囲と上手くやってかないとすぐに危険人物扱いか、遠巻きにされて人が近づかないかの二択では? と思えるわけで。


 今の私はそりゃ確かにちょっとこう……一部の人から遠巻きにされてる感こそあれど、でもそこまで危険人物認定はされてないのよ。使える魔法が結界と治癒魔法だけだから。

 でもこれに攻撃魔法が加わってみ? 今まで普通に接してくれた人も遠巻きになりそうな予感しかしない。


 そんな想像が簡単にできる時点で、攻撃魔法は使えないままの方が良いのでは……? と思っても仕方のない事だと思うんだよね。

 別に私、強大な力を持つが故に迫害される、みたいな悲劇のヒロインみたいな立場になりたいわけでもないし。っていうかその立場の場合、下手すると闇落ちフラグが待ってるしそうなったら危険な魔女扱いされて討伐待ったなし、ってなりそう。

 生憎波乱万丈な人生は望んでないので、平穏にまったり暮らしたいならやっぱり攻撃魔法を使えるようにする、というのはなんか立ててはいけないフラグの予感しかしない。


 うっかり魔法の扱い失敗して結界で殴るつもりが攻撃魔法発動させて相手を火だるまにしてしまいました、なんて事になったらそれこそたった一度の失敗であったとしてもごめんで済まないだろうし最悪お尋ね者になってしまうかもしれない。


 結界の扱い失敗するくらいならまだ自分ですぐさまリカバリーできるけど、攻撃魔法が発動した直後にリカバリーできるかってなったら……治癒魔法ですぐに治したってどうにかなる気がしない。


 そこら辺考えるとやっぱり……手段が増えるのはいい事のように思えるけど、私の場合はデメリットが大きいって思っちゃうんだよねぇ……そもそも私そこまで色んな手段を駆使して、って感じじゃないし。


 っていうあれこれはレーゼリナに説明してないけれど、仮にも大魔女相手にそんな説明したところで納得されるとも思えないし……私はとりあえず笑って誤魔化す事にした。

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