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一体どうしろと  作者: 猫宮蒼
一章 自衛のために好感度とかもっとわかりやすくしてほしい

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作業中の一幕



 ウルガモットへ無事に帰還して、収穫祭がいよいよ目前に迫ってきたある日の事。


 花祭り同様収穫祭でもそれなりに街を飾りつけたりするらしく、ギルドではせっせと飾りの作成に勤しむギルダーたちの姿があった。


 花祭りの時は花を編んだり細かく切ってフラワーシャワー用にしたりしていたけれど、今回はどんぐりとかの木の実やら色づいた葉っぱを使ったりしてリースっぽい物を作成していた。

 何か前世で見たデザインだな……って思ったけど、よくよく考えるとこれもうちょっと色合いをアレンジしたらクリスマスリースっぽくなるやつだ。葉っぱが赤とか黄色いやつだからすぐにそうと気付けなかったけど、もうちょっと緑色足したら完全にクリスマスの時に飾られてそうなやつ……! って言える。


 かくいう私も勿論そのリース作りに参加させられた。


 いやいいけど。お祭りで周囲の飾りに私自身目がいくかって言われたらそこまでじゃないかもしれないけど、見る人は見るわけだし、飾り付けが寂しいとなると盛り上がるものも盛り上がらないのかもしれない。


 花祭りの時は編むのに苦戦していたギルダーの皆さんでしたが、今回のリース作りはあの時と比べると思った以上に手早くできている。

 どっちかっていうと工作っぽい部分があるからそれでかな……って気がしている。


 大きさが一定じゃなくて大きいのもあれば小さいのもあって、こうやって作られたやつがテーブルの上にどーんと積まれてるのを見る分にはあまり何とも思わないけど、実際に飾りつけられたらいい感じになりそうだなとは思う。まぁお祭り当日は確実に飾りを見るより食べ物に目が行くんだろうけどね!


 どんなのが出るのかなぁ、リタさんが何か色々買ってきた去年の事を思い出すけど、どっちかっていうと保存食っぽいの多めだったもんなぁ。

 旬じゃない季節でも色んな食べ物が食べられます、みたいな前世ならともかく、この世界だとそれなりに制限あると思うんだよね。知り合い作フリゲと同世界観であれば望みはまだあるけど、でも前世の日本とまんま同じレベルでの供給は見込めないと思っている。

 だからこそリタさんも保存食多めに買い込んだんだと思うんだよね。

 勿論家でも準備はしてたけど、家で作る保存食って言っても限度があるし味の偏りもあるからね。


 自分の家の味、って飽きるわけではないけど、やっぱたまには違う味が食べたいなと思うわけで。


 とりあえずその日のうちに買ってその場で食べるタイプのをいくつかと、あとは保存食多めになるのかな……ある程度買ったら一度家に戻って荷物を置いて、もう一回、なんて感じになりそう。


 今年は正直あまり保存食作ってないからね、私。

 去年はリタさんもいたし、家の手伝いしながらあれこれ一緒にやってたけど、一人で作るとなると簡単なやつしかやってない。

 手間暇かかるやつを一人でやるにしても、そうなると時間がかかるんだよね。労力もそれなりにかかるし。


 それでなくとも薬屋やってギルドで手伝いして、って去年と比べると自分がやる事増えてるし。

 その上で更に家の事やって、保存食の準備して……とかやってられない。というか時間がいくらあっても足りない。

 今年は何だかんだギルドでそこそこ働いてお金も稼いでるのでその分保存食は金に物言わせて買う予定である。


 人生って大体時間に余裕がある時はお金がないし、お金がある時は時間がないよね。

 お金持ちの家とかだと金も時間も余裕あるかもしれないけど、我が家は一般家庭……と言い切るにも微妙だからな。リタさんと一緒に住んでた時は一般家庭の括りに入れても問題ないような気がしてたけど。


 収穫祭に思いを馳せながらせっせとリースを作る。

 花祭りの時と同じく、必ずこういう感じで作ってくれ、という細かなオーダーがあるわけじゃないので割と皆好きに作ってるっぽい。とりあえず飾る事が前提なので、それができれば後は個人の裁量に任せているといってもいい。

 こうして出来上がったリースを見ると、個性出てるな……


 力強さを感じるものから、一体どなたが作ったんです……? と思わず作者を知りたくなる繊細なものまで実に幅広い。

 細かな飾りが色々ついたやつとか、飾る時まできっちり保存しておかないといざ飾ろうとしたら壊れたりしない……? って不安になってくる。でも見てる分にはとても素敵……ってなっちゃうんだよなぁ……


 それと比べると私の作ったリースって可もなく不可もなく、って感じが凄い。

 誰が作ったんだろう、って思いを馳せられるような物でもなく、力作リースに隠れてにぎやかし要員のモブみを感じる。


「精が出るな」


 うーんもうちょっと派手さを出していくべきだろうか……なんて思っていたら後ろから声をかけられた。

 咄嗟に振り返ればそこにいたのはルーウェンさんだ。


「まぁ、ある程度は作っておかないとですし」

 自分よりも手先が器用そうに見えないギルダーの人たちも一生懸命作ってるのを見ると、自分もできる限りはやらねば、という気がしてくる。

 これが皆職人かな? って感じの作成スピードとクオリティだったら自分は逆に邪魔になるから……って感じでやらなかったに違いないけど。

 実際にとんでもクオリティな作品を仕上げるのは片手の指で数える程度のギルダーだけなので私もこうして気負う事なく作成を手伝えるというものだ。


 ルーウェンさんはテーブルを回りこむように移動するとそのまま私の向かいの席に腰を下ろした。

 そうして余った材料を手に取って、自分でもリースを作り始める。

 既に何度か作った事はあるんだろう。私よりも余程手慣れている。


 はわぁ……と声を漏らしそうになる感じで見ていると、ルーウェンさんは一度だけこちらに視線を向けてすぐさまリースに視線を落とした。


「この前のマーカーなんだが」

「あ、はい」

「一応やり方は聞いた。その上で、あれ使わせてもらって構わないか?」

「え? えぇ、全然構いませんけど」


 そう、例の黒化マッシュルームベアを倒した後から今日に至るまでは数日の間があった。

 その途中でルーウェンさんにはあのマーカーはどうやって発動させたのか、とか色々聞かれたのだ。ディットさんと共に。ディットさんはあの治癒魔法陣も気になるようだったけど、正直な話、一度に大量の怪我人を治さないといけない、という状況以外であれ多用するのはやめた方がいいと思っている。


 複数回治癒魔法を発動できる状態の魔法陣だ。しかもそれはマーカーの周辺である程度自立した移動をしている。要するに、普通に治癒魔法を発動させるよりも消費魔力量が大きいのは言うまでもない。


 よっぽど魔力が有り余ってるんですう! っていう人ならともかく、そうじゃない人がやると逆に非効率なんだよね。何せ魔法陣一つで複数回の治癒魔法を発動できるって事はつまり、魔法陣一つで複数回分の治癒魔法を発動させる魔力が勿論必要なわけだし。更にそれをある程度自由に動かすとなれば、更に魔力は消耗する。


 あまり数をこなせないタイプの治癒魔法使いの人がそれをやると、いつもより治癒魔法を発動できる回数が当然減る。怪我の度合いによって魔法陣が消耗するのも異なってくるので、下手したら大怪我した人を一人治したら魔法陣が役目は果たしたとばかりに消える事もあり得るわけだ。

 数人分の治癒魔法のつもりで魔法陣一つ作ったのに実質治したのは一人、なんていうのはとても割に合わない。それならいっそ素直に直接治癒魔法を使った方が余計な魔力を消耗しないで済む。


 なのであの時点ではとても便利そうに思えるマーカーではあったけれど、ぶっちゃけると使い道というか、使いどころをかなり選ぶ。

 私の場合は治癒魔法を使うために、って感じでマーカー打ち込むけど、ルーウェンさんは別に治癒魔法を仲間に発動させるために、とかそういう理由じゃない。

 どちらかというと、攻撃魔法にそれを使えないかと考えたらしい。


 うん、私もメルドーラでそれについて考えた結果、最終的に私は攻撃魔法が使えないので治癒魔法に使ったけど、ルーウェンさんならうまくやればそれこそ乱戦状態になっても攻撃魔法を使えます、なんて事になれば戦況を引っくり返すまでいかなくても状況を有利に持ち運ぶくらいはできるかもしれない。


 けど、何でそこでわざわざ私にマーカー使っていいか、なんて聞くんだろう?


 その疑問が顔にも出ていたらしく、ルーウェンさんは「そこら辺は知らないのか……」と若干呆れというよりは諦めに近い表情を浮かべる。


 既に世間一般に広まってる――という言い方も若干微妙だけど、まぁ昔から使われる事のある魔法に関しては詠唱とか代々伝わってるようなものなわけだ。

 だからこそ学校で魔法を教える事ができるわけで。

 もし発動させるための魔法の詠唱が一切わからないままであれば、それらは各自でみつけたまえ、という丸投げ方式になるわけだ。もしくは、学校ではなく魔法を使える人に弟子入りして教えてもらう方式。

 ただ、詠唱以外にも学校で魔法を教わる時は魔力の扱い方も教わるらしい。これもまぁ、魔法が使える人から直々に教わる事は可能。


 とはいえ、個人が教えられる事って限界があるわけで。

 弟子入りさせて下さい、って言ってくる人が一人や二人くらいならまだしも、数十人もやってきたら、となれば師匠も手が回らないなんて事もあるわけだ。


 師匠に教えを、と言ってくる弟子が全員同じことを教えてもらうのであればまだしも、攻撃魔法と治癒魔法で教わる部分は異なってくるし、魔力の扱い方、制御の仕方、を重点的に教えてほしい、みたいな弟子も混ざっていたら一度に全部は対応できないだろう。

 学校の場合も似たような部分はあるけれど、教える側が複数いれば手分けする事もできるし生徒側も授業で教わる以外の事が知りたければ放課後個別に聞きに行けば済む話。


 とりあえず学校では全体的に基本を学ぶ、という認識で間違っていないはず。

 そこから更に踏み込んで専門的な研究がしたい、だとかになればまたそれはそれで新たな進路相談という形になるんだと思う。

 師匠を定める場合は師匠の知ってる事のほとんどを教わったとして、それ以外の知識を得るためには伝手を探すかしないといけない。学校の場合はそういった伝手も先生経由でどうにかなるかもしれないけど、師匠の場合はそういう伝手がなかったら弟子が自分でどうにかするしかない。


 広く浅く、その後興味があれば多少の紹介は可能、ってのが学校であるなら、師匠は深く狭く、といった感じだろうか。少なくとも、この世界では、という話だけど。


 で、何か魔法に関しては昔から伝わってるものはさておき、新しく編み出したりしたものに関しては魔法研究してる貴族たちやら学者やらその他研究者などの発表で知られる事の方が多いのだとか。まぁ個人で秘匿して、って事もあるけど。


 ルーウェンさんの説明から、このマーカーに関して開発と言うか編み出したのは私なので、使用許可を得ようとしている、というのは理解できた。

 ついでに言うと発表会などでこのマーカー公表していいか、とも聞かれたのでオッケーだしといた。

 まぁ、好きにすればいいんじゃないですかね、というのが私の感想だ。


 特許みたいに何かこう……使用料とか入ってくるってわけでもなく、どっちかっていうと名声的な?

 そんな感じらしいけど別にそれに興味はないしなぁ。


 発表して恐らくリースラント家の功績になるかもしれない、とも言われたけど、別にどうでもいい。

 前世だったら敵味方勝手に区別して魔法が発動する、なんてゲームごまんとあったし、私が今回使ったやつもそこからの知識を引っ張ってきたにすぎない。

 私が一から苦労して編み出した、とかではないのだ。


「使いこなせれば便利でしょうけど、使いこなせなかったらマーカーって無駄に魔力を消費するだけに終わりますし、リースラント家の功績になったとしてボクが今後一切その魔法を使ってはいけない、って事でもないんですよね?」

「それは勿論」

「じゃあ、好きにすればいいんじゃないですか」


 そう言えば、あまりにもあっさり言われたからか拍子抜けした様子のルーウェンさんは、一度だけ「いいのか?」と確認するが、いいも何も、って話なんだよね。


 私にとっては便利なものだけど、他の人が必ずしも使いこなせるかは微妙なところだし。

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