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一体どうしろと  作者: 猫宮蒼
一章 自衛のために好感度とかもっとわかりやすくしてほしい

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数少ない攻撃手段



 ちなみに自警団のリーダーの人がどうしているかと言えば、連日見回りを率先して行い遭遇した魔物を全力で追い払い――彼には仕留めるだけの実力は無かった――奮闘はしていたらしいのだが、いかんせん張り切り過ぎたらしく私たちが来るちょっと前に腰を痛めたらしい。


 こう、今日の夜には応援がつくから明日は少し休めるぞ! だから皆頑張れ! みたいな感じで他の仲間たちを鼓舞したものの、今までの疲れが蓄積されてちょっと限界超えちゃった結果ぎっくり腰に。

 なのでマトモに立って歩けないらしく現在自警団はサブリーダーさんが指揮をとっているというわけだ。


 そうだね、ぎっくり腰って名前に反して威力半端ないもんね。

 魔女の一撃とかって言われてるらしいし。

 下手するとマトモに二足歩行もままならないらしいからね、あれ。立っても真っ直ぐ背筋伸ばしてられなくて徐々に傾くとかって人もいるらしいし。


 治癒魔法でもあれ完全に治しきれないんだよね。治癒魔法にプラスしてよく効く湿布薬とか出せばどうにか……って感じだけど。もげそうになった腕くっつけるのはできるのにぎっくり腰が治せないとか正直ちょっと理不尽では? と思わなくもない。


 ともあれ、あの洞窟に関しては明日どうにかするとして。


「ところでエルテ、お前あの洞窟マジで潰すのか? てかできるのか?」

 今日は見回りに行くだけにしておこう、となったので昼間と同じルートで見回りを開始したんだけど、カイルさんがとても戸惑ってます、みたいな声で問いかけてきた。


「多分どうにか?」

「でもお前結界くらいしか攻撃手段ないだろ」


 おっと、カイルさんがとうとう結界を攻撃手段と言い切ったぞ。

 結界って本来身を守るためのものであって攻撃手段だとは言わないと思うんだけど。というかそれに関してはマトハルさんがいっぱいツッコミ入れてきたからもう今更でもあるんだけど。


「やだなぁ、ボクは非戦闘員ですよ。結界は自衛にしか使ってませんって」

「ダウト」

「そうだな。ダウト」

 ルーウェンさんまで便乗しだした!?


 いやでも実際身を守るのにしか使ってないと思うんだよね。犯罪者捕縛するのに使ったりもしてるけど、それだって直接生身で自分が向かうと危険だから安全策としてそうしてるだけで。

 あと犯罪者の尋問に関して使った事もあるけど、あれだって自分の拳で直接殴ると絶対先に私の拳がご臨終するから代わりに結界使ってるだけだもん!!

 決してそこらで歩いてる何の罪もないだろう人に喧嘩吹っ掛けるべくいきなり結界で殴ったりとかはした事がないもの!

 そう考えたら別におかしな使い方は一切してないよ!


「あの結界であの洞窟をどうにかできるのか?」

「流石にそれは無理じゃないですかね」

「じゃあ、どうやって」


 結界しか取り柄の無い奴が洞窟破壊とかできるのか、と直球で言われたので、私はここに来る時に事前に用意して作っておいたある物を取り出した。

 瓶の中にはほんのり赤みを帯びた液体が入っている。


「おい……おい!!」


 それを見たルーウェンさんが声を上げた。おっとルーウェンさんはこれが何かを理解しているご様子。

 いきなり叫ぶような声を出したルーウェンさんにカイルさんがちょっとびっくりしたような目を向ける。


「なんだよ、どうしたルーウェン。そんな声上げて」

「お前知らないのかこれ。火精霊イフリートの息吹だぞ」

「はぁ……はぁあ!?」


 二人とも実にいいリアクションである。


「えっ、これが? 火蜥蜴サラマンダーじゃなくて火精霊イフリート!?」


「あっ、その様子だとご存じのようですね」

「ようですね、じゃねーよ。えっ、本物か?」

「それは勿論」

「勿論、じゃない。なんてものを持ってるんだ」


 カイルさんは驚いてるし、ルーウェンさんはこいつマジか……みたいな顔をしてこっちを見ている。


 この瓶の中の液体、火精霊イフリートの息吹というのはゲームの中にもあったアイテムだ。

 火蜥蜴サラマンダーの息吹というのも存在している。


 ちなみにゲーム内では敵全体に火属性の攻撃をする攻撃アイテムだ。

 威力は火精霊イフリートのが高い。

 アイテムを使った時のグラフィックからして爆発物である事は確か。使った時にボガァン、みたいな音も出てたし。

 火蜥蜴サラマンダーの息吹はゲームだと序盤そこそこ使った覚えがあるけど、火精霊イフリートの方はあまり使う機会がなかったんだよね。っていうか、入手したのイベント報酬か何かだったし一度だけボス戦で使ったっきりだったかな。結構強かったから、バンバン使いたいところだったけど入手数限られてたから一回だけ使ってその後は出し惜しみしてたっけか。まぁ、その後使う以前に私がこうして転生しちゃったわけなんだけど。


 威力に関してはとんでもないとだけ言っておこう。

 火蜥蜴サラマンダーの息吹でももしかしたらそこらの岩とか破壊できる程度には威力があるはず。その上位互換でもある火精霊イフリートとなれば……使い方を誤れば人体程度なら余裕で吹っ飛ぶ。


 ただの火薬であればまだしも、これは液体。しかもほんのり赤い色をしているのはこれ、内部でじんわり発火状態にあるからなんだよね。

 下手な衝撃を与えると瓶ごとどっかんする。つまり危険物。

 そりゃまぁルーウェンさんの反応も当然と言えるかもしれない。


「いや、よくそれ持ってて無事だったな……?」


 カイルさんも一応現物を見た事がないけど存在は知ってたらしい。火蜥蜴サラマンダーの息吹は持ち運びもそこまで注意しなくて大丈夫だけど、火精霊イフリートの息吹は取り扱い要注意アイテムだ。ゲームの中ではそんな事なかったんだけどね。

 液状火薬と言ってしまえばそれまでの危険物を、カイルさんはやや引いた様子で見ていた。


 確かにちょっとした刺激で簡単に爆発するからね。持ち運んで移動するのも慎重すぎる程慎重に、ってしないと最悪持ち運んでるやつが吹っ飛ぶ。


「あぁ、馬車の中だと揺れるだろうし最悪爆発してた可能性ありますもんね」

「えっ、オレ下手したらあの時点で死んでた可能性あんの?」

 私と一緒の馬車だったカイルさんはその事実に気付いて今更ながらに身体を震わせた。やだなぁ、私だって危険物なの把握してるからちゃんと対策してますって。


「大丈夫ですよ。この瓶結界で包んでるので解除するまでは爆発しません」

「解除と同時に爆発するんだな?」

「そうですね」

「なんでそんなモン持ってきたんだ」

「魔物退治って言ってたしいるかな、って」


 そう言い切ってしまえば、二人はそこはかとなく困ったように眉を下げてはー、と深く息を吐いた。


 例えばこれが誰かしらの護衛で、とかならどうして持って来た、と言うのはわかる。下手したら護衛対象も危険に晒すかもしれないのだから、そんなもん持ってくるんじゃねぇ、とか言われるだろう。

 でも今回私たちがメルドーラまで来たのは魔物退治だ。海からやってくるサハギンたちを倒さねばならない。


 そう、海から。


 これがネックだなと私としては考えたのだ。


 だって海。水中。人間は水の中で自由に行動できるようにできてない。だから下手に水の中に入って相手のホームグラウンドで戦うのは不利。

 海からあがってきた奴だけを倒しても、全体の一部だけはどうにかなるけど、大抵は海に逃げ込んでほとぼりが冷めたらまたやってくる可能性もある。

 だからこそ、ここと関わらない方がいい、と向こうに思わせる程度には痛い目を見せなければならない。


 私は攻撃魔法使えないし、ルーウェンさんとか使える人が多少いるとはいっても、例えば海に雷落とすとかしても多分効果があるのは極一部。

 ある程度固まってそこにいる、ってのがわかればそれでもいいかもしれないけど、分散されて海の中に逃げ込まれたら各個撃破もままならない。


 となると、もっと威力のある攻撃を海に仕掛けてその衝撃で……って考えたところで思い出したのが。


 ガチンコ漁。


 前世では確か禁止されてる方法だったと思うんだ。こっちの世界ではどうだか知らない。

 石打漁だとかダイナマイト漁だとか言われてたりもするけど、ようは衝撃で一時的に魚を気絶させて、とかいうやつだ。魚も被害に遭うかもしれないけれど、サハギンたちにも効果はあるはず。

 火精霊イフリートの息吹をもちろん海水に放り投げたとして、水の中ではそこまでの効果もないとは思う。でも、水面ギリギリで爆発するようにしておけば、衝撃はかなりあるんじゃなかろうか。


 そんな風に考えて、一応持って来たわけだ。

 まぁ海に使うというよりは、何か無駄に魔物が潜むのにうってつけな場所になってる洞窟破壊に使う流れになったけど。


 私だって何の考えもなしにこんな危険物持ってきませんよ、というのを説明すれば、カイルさんは一応納得した様子を見せたけどルーウェンさんは難しい顔をしたままだった。


「だがそのアイテムは、気軽に入手できるものではなかったはずだが……?」

「そうですね。この日のために作りました」

「作った……?」

「えぇ、リタさんから作り方は教えられてたので」

「薬師だよな……?」

「火薬も薬って言葉入ってるから一応覚えとけって」


 そう言えばルーウェンさんは何故だか片手で額のあたりを覆ってしまった。まるで頭が痛いとか言い出しそうな反応ですね。


 そりゃ私だって最初はちょっとどうなんかな、って思ったよ。

 用法容量を守って服用するお薬とは完全に別物だもの。飲んだらアウトなやつだもの。塗ってもアウトだし。

 でも、私の使える魔法が攻撃手段の低いものばかり、というのもあったからかもしれないけど、リタさんは一応覚えておきな、って教えてくれたわけだ。身を守る手段はいくつあっても構やしないよ、とも。


 その言葉に私は「確かに」と納得したのだ。

 身を守る方法が結界だけしかないと、いざという時どうしようもなくなるかもしれない。私には攻撃手段がない、と知られたことでそれを逆手に取られる可能性もある。では、いざという時のために他の手段もあった方が絶対いい。


 実の所。この火精霊イフリートの息吹、作り方はめっちゃ簡単なのだ。正直、火蜥蜴サラマンダーの息吹と作り方全く一緒で材料も一緒。では違いは何か? 薬効効果を高めるために魔力を込める。成功すればそれは火精霊イフリートの息吹となるのだ。

 火蜥蜴サラマンダーの息吹はちょっとやそっとの衝撃じゃそう簡単に爆発したりしないから、こっちの方が世間一般では主流っぽいし、だからこそ作るだけなら問題はない。私はそこで更にワンランク上のアイテムにしてるけど。とはいえこうなると取扱注意になっちゃうので使う時まで結界で覆ってうっかり爆発しないようにしている。あまり大量に持ち運ぼうとするとその分結界も、ってなるから必要最低限しか持ち運ばないけども。

 数日結界で覆う事を考えると大量に持ち運ぶのは危険だからね。途中で魔力尽きて結界解除したらその時点でドカン! だもの。

 だから数日、それこそ十日くらいを想定して結界を維持できるなら、まぁ瓶一つや二つが妥当かなと。


 使わないまま持って帰る事になるようなら、こっそり海の中で爆発させるつもりでいた。不法投棄ではない。安全な処分です。


 ともあれ、何かちょっとドン引きされてる気がするけれど、それはそれこれはこれで今日のところは普通に見回る事にした。

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