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一体どうしろと  作者: 猫宮蒼
一章 自衛のために好感度とかもっとわかりやすくしてほしい

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存在意義についてのエトセトラ



 ところで季節はそろそろ春。そう、私がギルドに入った時点ではまだ冬だったわけだ。

 冬といってもこのあたりは雪国ではないので雪もそんな積もらなかったし、降ってもすぐ溶ける感じだったからそこまで話も出なかったけど、そんなんでも春が近づいてくれば浮ついた雰囲気が漂うようになるのもまた事実。


 冬の間でも薬草は採れるし、むしろこの季節じゃないと採れない薬草だってあったし、そういう部分では薬師として仕事する分には何かが変わるとかそういうのもなかったけれど。


 春になったら春に採れる薬草とかお薬の素材になりそうなものとかが色々増えるので、極力採取活動に精を出したいところだ。今のうちに採って、乾燥させたり粉末状にしたりして次の夏に採れる素材と合わせたりするお薬もあるからね。

 作れるお薬の数が増えるといっても、だからって売れるかどうかは別の話だ。

 けどなんとなく作れるなら作っておこうかな、のノリはある。長期保存可能なお薬とかはあっても困る物でもないだろうし。


 これはそう……ゲームの図鑑とかを埋める作業に近いものがあるかもしれない。


 普通に街の外に出てその辺で薬草探すのもいいんだけど、ついでだから薬草の採取依頼とか出てないかギルドに確認しに行く事にする。

 自分の分とついでに依頼の分も採ってくれば、依頼達成した時点で報酬も出るからね。


 そう思ってギルドに足を運んだわけだが……



「頼む、今回の依頼に一緒についてきてくれないか?」

 そう私に向かっていきなりそんな事を言い出したのは、何とマトハルさんである。

 え、私が? 何で? とわけがわかってない顔をしていると、マトハルさんはとても真剣な表情でこう言った。


「正直とても心細い」


 いやあんたそういうタマかーい、って突っ込みたかったけど、もし本当に何かとんでもなく苦手な任務とかギルド長に割り当てられてたら可哀そうなので流石に口には出さなかった。

 というか、軽いノリで私がそれを言えるくらいの親密さがないってだけの話なんだけど。


「一体どんな依頼なんですか……?」

 とはいえ、私も一応確認はする。だってもし私も無理、って感じのやつならいくらマトハルさんと一緒だろうと無理なものは無理と断る必要が出てくるわけで。

 例えば行き先は一杯虫がでる、とかいうとこなら極力遠慮したい。

 人の身体を這うような虫がいっぱい出る、とかだとお断りしたい。

 一匹二匹振り払ってる間に五匹くらい足から背中に向かって登ってました、とかそういうのあるような所とかなら断固拒否したい。


 気付かないうちに人の身体によじ登ってるタイプの虫ってよじ登られてる時の感覚ないから気付いた時にめちゃんこビックリするし、かといって時々唐突に登ってますよ、っていう感触をこっちに伝えて存在感出してくるようなのも無理。


 絶対自分に害のないってわかってるくらいの場所から眺める分にはまだ平気だけど、でもできる限り見たくないっていう程度に無理。


 それでもお薬のレシピの中に虫使うのがあるから、流石にそういうのに関しては我慢するしかないんだけどさ……作らなくていいなら作らないよ。必要最低限しか作らないよ……依頼があってとかじゃない限り作らないよ……だってヤだもん。

 それならまだヤモリの黒焼き使う方がマシかなって気するもん。ヤモリも正直どうかと思うけどね!?


 でも前世で魔法学校とかのお話でナメクジ刻んだりするとかいうのあったから、それに比べればまだマシかなって思わなくもないんだ……


 そんな風に私が虫関係なら何がなんでも断るぞ、と思っていたら、マトハルさんは深刻な表情のまま、

「この街の近くに盗賊のアジトらしきものが見つかったらしくて、その調査だ」

 なんて告げてきた。

 なんだ、盗賊のアジトか。


「単なる調査だからそこまで危険はない、と思いたいが万一そのアジトがまだ使われている場合、最悪そのアジトを利用している盗賊とかち合う可能性もある。オレ一人だと少しばかり心もとないんで、できれば一緒に来てほしい」


 とても真剣な眼差しでそう言われると、断りにくいものはある。

 確実に盗賊がいるというわけではない、というのはつまり、その盗賊たちがお仕事と称しておでかけしてる可能性もあるからだ。

 バッタリ遭遇しなければ、ただ今現在もそのアジトが使われているかどうかの確認だけ。

 使われているのであれば後日捕縛の準備もしたうえである程度の人数で踏み込む必要が出るし、使われてないのであってもそのままにしておけば他の盗賊が使ったり、はたまた魔物が巣として使う可能性もあるからそうならないように壊す必要もあるらしい。


 それが、この街の近くに、となると確かに放置したままにはできない。

 街のご近所にそんなものがあったら、常にそこから新鮮な盗賊たちが供給されて街がとても迷惑。


「いやマトハル、お前さん普段その程度の依頼一人でやってるだろ」

「おっと手が滑った! ギルド長、すまない」


 呆れたようにギルド長が口を挟んできたが、マトハルさんはするっと何かを取り出すとそれをギルド長の顔面に向けてスパーキンッ! していた。

 しかしギルド長も腐ってもギルド長なので、顔面キャッチは防いで直前で受け止める。


「……まぁ、そうだな。マトハル一人でも大丈夫だとは思うが、万一の事もあるしな。エルテ、もしよければ一緒についていってやってくれ。危険だと判断したらすぐ帰ってこいよ」

 にかっと笑って言っているギルド長ではあるが、いやあの、その手に持ってるの、お酒の瓶ですよね。今マトハルさんがぶん投げたやつ……

 ラベルになんて書いてるかまでは見えなかったけど、ギルド長からはしっかりと見えているはずだ。

 それを見るなりにっこにこになってるけど、いやあの、そんなあからさまに買収されます?


 っていうか、マトハルさん一人で大丈夫なやつなんですよねそれ。

 じゃなきゃ私という貴重な回復要員危険に晒す事になるわけなんですけれども……マトハルさん一人で大丈夫そうならなんで私ついてく必要が? という疑問は例え口にしても何か今のギルド長には聞き入れてもらえない気しかしない。

 いやいいけど。

 盗賊のアジトとか近所にあるとなると、薬草採取に行く際うっかりばったり遭遇、なんて事もあるかもしれないし、危険の芽は摘み取っておくに越した事はないし。


 かくして私はどこから何をツッコめばいいのかわからないうちに、マトハルさんとウルガモットの近隣にあるらしい盗賊のアジトへ行く事になったのである。

 途中で薬草見つけたらそれだけでも採取できないかな……


 折角外に出る以上、せめて何らかの素材はゲットしておきたい。



 ――ところで本当にマトハルさんが調査に、と言っていた盗賊団のアジトはウルガモットの近くだった。

 というか、こんな近くに!? というくらい近くだった。

 具体的に徒歩三十分。


 いや、徒歩三十分ってそれなりの距離だぞ前世だったら……とは思うんだけど、こっちの世界だと徒歩三十分とかは全然近所なんだよね。っていうかだよ? 盗賊がいざ仕事をするとして、ウルガモットから外に出る行商の人とか、はたまたウルガモットに来る途中の商人とかその馬車とか、狙うとしてもこんだけ近いとさぁ、マジで危ないわけ。

 これがアジトがそこそこ遠くて街の様子を探りにくるだけでも時間かかります、とかだと盗賊が目をつけたもののタイミング悪くて手を出せなかった、なんて相手もそれなりに出てくるとは思うのよ。あらかじめ目をつけてそいつを確実に狙う! とかいうのはさておき。

 でも、近所って事は街の出入りとか探るのも比較的簡単だし、アジトが近いとなると仲間との交代も容易。

 襲った相手の金品強奪してアジトに速やかに逃げ帰るのも、追手がいなければあっさりアジトへ到着できるしすぐさま金品をアジトに隠す事ができてしまう。


 最初から盗賊を警戒して護衛もつけてる相手を狙うのは避けて、こいつはいけると思った相手を襲うにしても、アジトが近いのであれば仲間も集まりやすいし、何より助けを呼びに行く相手が出たとしても速やかに逃げる事も可能になる。


 アジトがこれまたうまい具合に見つかりにくい感じに偽装されてるし、そうなれば盗賊を追って来た者がいたとしてもこれ気付かない可能性高いよなぁ……って思ったわけだ。


 むしろよく見つけたなこのアジト……


 というかだ、ここのアジト流石に手放したりしてないだろうし、いるんじゃないかなぁ……とも思うのだ。

 いやだって、街の近く。獲物の吟味し放題。アジトは隠れ家的な感じで見つかりにくい。とくれば、手放す理由ある?

 街の中で盗みを働くにしても、騒ぎになる前、自警団や騎士団が出張る前に逃げてしまえばアジトの場所も近いわけだし途中でバテて追手に追いつかれるなんて事もなさそう。


 とはいえ、中にいるにしろいないにしろ、調査に来たわけだしこのまま帰るわけにもいかないのだろう。


 マトハルさんは音もなくいかにもな洞穴ほらあなの中に入っていく。

 盗賊のアジトって事前に言われてなかったら、熊か何かの動物の巣だと思ってスルーするようなものだ。

 私もマトハルさんの後に続いてついていく。安心してください。足音は私も消してあります。


 進んで少しすると、壁に燭台置きが取り付けられているのが見えた。

 入口からすぐの所にあるとここは人が使ってますよって言ってるようなものだけど、ある程度中に入ってからなら、外からちょっと見ただけでは人が使ってるとは気づかれない。

 うぅん、思ってたより手の入った場所だな……ただ身を隠すだけの場所ならそこまでする必要はない。けど、こうやって灯りだとかを用意しておいたりするって事は、それなりに出入りもするし長く使う予定なのだろう。

 使い捨てアジトならわざわざこんな壁に灯りを、なんてやらずに毎度ランタンだとかを用いれば済む話だ。

 いや、ランタンの準備が面倒だから、という可能性もあるけれど、何度も利用する場所であるなら暗くても身体が覚えるとかそういうのもあるだろうか……?


 そこら辺私は盗賊じゃないのでわからんが、とりあえず奥には盗賊が数名いた。

 そう、いたのである。


 えっ、これどうすんの? 人数確認してそのまま帰るの……? と思ってもマトハルさんに聞きようがない。声出したら確実にバレるわ。

 今はまだ通路の陰になるような感じで向こうに気付かれてないけど、音出した時点でバレるわ。


 どうするのかな、って思ってたらマトハルさんは足音消した状態で駆けだして、盗賊たちに奇襲仕掛けた。


「なんだおまえ」

「うわっ!?」

「ぐぇっ」

「ひぃっ、くるな、く――」


 一瞬で四人程血飛沫とともに倒れる。


 …………いや、強いな!?


 足音消して走るとか流石に私は無理だ。でもマトハルさんはそれを実際にやらかして、一瞬で距離を詰めて盗賊たち四人を仕留めた。

 死んでる……のかな? 生きてても正直あの怪我じゃマトモに動けないだろうな、とは思う。

 いっそ楽にしてやった方がいいのでは? とも思える。


 四人が倒れて、まだ残っていた三名程が各々武器を構えたが、それでもマトハルさんの方が次の行動に移るのも圧倒的に早かった。構えた武器を弾き飛ばして、返す刀で残りの三名も切り捨てる。


 一分とかからずに七人が倒れた。


 いや、強いな!?


 私ついてくる必要あった?

 というか私の存在の意味は?


 っていうか調査に来たはずなのに普通に盗賊退治して終わったな?

 うごごごご……調査とは……一体……


 と私が危うく世界の法則が乱れるとか言い出しかねない状況に陥っていたが、それはすぐに中断された。


 何故なら――


「おっとそこまでだ。動くなよ。動いたらこいつがどうなるかわからんぞ」


 背後から伸びてきた腕が私の首に巻き付いて、拘束されたからだ。


 あーね、はい。状況はバッチリ把握したわ。

 この七人が全員ではなかった、と。

 恐らくお仕事か下見かわかんないけど盗賊団のボスとかそういうのが出てて、こいつらは留守番だったと。

 で、今私の後ろにそのボスとかその他の部下がいるって事ねオケ把握!


 いや、人質になってんじゃん。

 私がついてきた意味、とは……?

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