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一体どうしろと  作者: 猫宮蒼
二章 攻略本とまではいかないけど攻略のヒントもない時点で人生の難易度は高め

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お友達から、も難しい



 アレクセイさんのテンションがいきなりアゲアゲになったのは、ちょっと前に私が教えたマーカーによるものだった。


 私はあれ、治癒魔法陣作ってオート回復させるためにこの人は対象の人物ですよっていう感じで魔法陣が回復させるかどうかを決める判定のために使ったけど、ルーウェンさんとディットさんはそういや念話に使ってたな、と思い出したのがアレクセイさんのまくしたてるような話を聞いている真っ最中。


 そういや収穫祭の時、何かそんな感じだったっけね……と思い出したもののそれを口に出せるような隙はなかった。


 なんでも念話の魔法自体は実はそれなりに貴族なら使う事が結構あるものなのだとか。

 とはいえ、精度はあまり高くはないのだとか。


 離れた状態で念話しようとすると場合によっては頭の中にノイズが走ったような雑音がする事もあるし、制御をミスると聞かれたくない相手にも念話が聞こえてしまう事もあるのだとか。最悪じゃん。

 むかーし、まだ携帯電話とかが主流じゃなくて家にある固定電話がメインだったころとかに通話してたら何かこう……混線とかで違う人の声が混じるように聞こえた、なんて話は聞いた気がするけどまさにそれ。

 念話を使わない人にはそうはならないらしいけど、例えば貴族の集まりの場で内緒で話し合いをしようとした場合、それぞれがそれぞれの相手に念話しようとして魔法を使うわけで。

 そうなると全然関係のない人の念話をうっかりキャッチ、とかそういう事は可能性としてはそこそこあるのだとか。


 場合によっては敵の思惑が思わぬ形で知る事ができました、みたいになるかもしれないけれど、同時に自分たちの状況筒抜けって事になりかねないわけで。

 まさしく諸刃の剣じゃん。

 政敵の情報をゲットできる可能性もあるけど自分の情報もバレる可能性あるよとか、リスク高すぎて怖くて使えないわ。


 混線状態にみたいになるのはあくまでも距離が離れた相手との念話の時だけで、例えば至近距離……お互いの手が触れ合えるくらいに近い状態でやればそこまででもないらしい。

 というか、そうならないようにそっと相手に触れた状態で直に念話すれば問題ないのだとか。

 うーん、声に出さない内緒話、と考えればそれはそれで、とも思うけどそう考えるととても使い勝手の悪い魔法だなぁ、念話。


 だってこれ、念話の相手はいないけどとりあえず念話の魔法発動させてたら他の場所で念話してる人の話が聞こえてくる可能性もあるって事よね。情報収集と言うか盗み聞きが割と容易……みたいになるやつじゃん。

 とはいえ、それだってあまり距離が離れた相手の念話は聞き取るのが難しかったりするらしいので、何もかもが筒抜け……とはいかないみたいだけど、それでも聞かれる可能性は存在している。


 けど声に出さないで会話できる、というのは状況によってはとても重宝するわけで。

 使い勝手が微妙な魔法の割に廃れていないのは、つまりそういう事だ。


 で、リースラント家で研究している魔法はそのマーカー無関係だったんだけど、先日私がルーウェンさんに教えた結果、そのマーカーでお互いに目印つけたら念話がとてもうまくいって尚且つ離れた距離でもノイズが走るような事もなく。

 また、アレクセイさんやリーゼロッテさんも念話状態にしたままルーウェンさんとディットさんの念話を傍受しようとしたようだけどマーカーを使った場合盗み聞きもできなかったのだとか。


 盗聴されなくなる、というのは大きい。


 ルーウェンさんは最初これを魔法研究の場で発表する方向性で考えていたらしいけど、急遽その案は封印されたらしい。

 うん、まぁ、使いどころによってはね……わからんでもないのよ。


 ちなみに家の中で離れた部屋からの念話も大変スムーズらしく、今までは研究資料を別の部屋に取りに行ったりしていたのが今は研究室であれこれ作業している傍ら、もう一人が研究資料を探してこれですかどれですか、という感じで念話しつつ進めているらしいので、時間短縮にもつながったのだとか。


 ちなみに何か貴族とか研究者たちが集まって行われる魔法研究の場ではこのマーカーを応用した念話アイテムを作成する事にしたらしい。

 要するに携帯電話みたいなのができるかもしれない、と。

 とはいえ携帯電話なら連絡先知ってる相手なら誰とでも、そうじゃなくても適当に入力した番号に繋がればその人とも会話は可能かもしれないけれど、このアイテムは対の状態にして持っている者、そして使用者登録した者だけでの会話に限定するらしい。


 まぁそうね、念話が場合によっては盗聴し放題、みたいな状態になってたのを道具を使う事でこの人との会話は他に漏れる事も無い、なんて事になればそれなりに需要は見込める。

 前世の携帯電話とかそういうのを知ってる身からすれば使い勝手悪いなと思う部分もあるけれど、でもこの世界で魔法で念話を、という相手からすれば充分に画期的だというのもわからんでもない。

 とはいえ、何事にも限度はある。

 念話だってマーカー無しの時点で離れてやろうとすればノイズが混じるらしいし、あまりにも距離が開きすぎるとそもそも発動すらままならないようだし。

 じゃあマーカー応用して作る道具だって使用限界距離とかあるわけで。


 うーん、そう考えると電話みたいにはいかないって事かな。

 トランシーバーとかそんな感じだろうか。

 正直トランシーバーも前世であまり使う事なかったからよくわからんけど。


 マーカーに関しては念話以外でも、もしかしたら他に使い道があるかもしれない、とアレクセイさんは考えているらしく、そちらも色々と研究しようと思っているらしいことは話の流れで理解した。

 うーん、でも他に何か使い道ってあったかな……ルーウェンさんに教えた時のあれこれくらいしか私思いつかないから新たな使い道とかさらっと出てこないぞ。


 で、何か知らんがこういうのを思いついてなおかつ新たな魔法として構成できるのは凄い! みたいに言われたわけだ。

 この人めちゃくちゃ褒めてくるな……?


 だから家にこないかって勧誘してきたってのもわからんでもないけど、勧誘お断りしたにも関わらずこのテンションよ……


 けどまぁ、話を聞いてるうちに何となくアレクセイさんの目論見は察した。


 本当ならアレクセイさん本人があれこれ魔法に関しての話をしたい、ってのが前面に出てるけど、そもそも私とアレクセイさん、それからリーゼロッテさんの関係はあくまでも知り合いの親、というやつだ。

 今日初めてお会いしたお二人よりはまだルーウェンさんやディットさんの方が仲が良い。

 二人から見た私も息子の友人、くらいの認識だろう。というかそっちのがしっくりくる。


 なので、魔法に関する話とかは勿論あれこれ交わしたいところなんだけど、そっちが乗り気じゃなさそうなんでそれについては無理強いはしないと。

 ぐいぐい来られないのは有難いな。


 けどこれからも息子たちとは仲良くしてやってくれ、とは言われた。

 そもそもそこまで仲良いか? って質問はするだけ野暮だろう。

 ルーウェンさんはともかくディットさんとはまぁ、そこそこ一緒におでかけしたりする仲ではある。ディットさんも私の事は一応友人認定してるっぽいし。


 つまり、何か他に魔法に関して面白そうな話があったらディットさんとかルーウェンさん経由で教えてね、って事かな……? と思って確認すれば、バレてしまったか、なんてにこやかに言われた。

 バレてしまったかも何もバレバレなんよ……


 なんだろう、私の立場ってあれかな。名探偵が事件の謎に行き詰ってる時に何気ない一言とか発してそれが事件解決のヒントになっちゃう……的なやつかな。

 そもそも結界を身を守るだけではなく攻撃に転じさせることができるとかいう発想とかも何かやたらべた褒めされたし、この人庶民が思い描く貴族とは何か違ってやたらよいしょが上手い。


 これは耐性のない人だったら乗せられるだけ乗せられて調子にのってホイホイ貴重な情報とかつるっと喋ってしまいかねない気がしてきた。これを無意識でやってるならともかく、恐らく意図してやってるだろうから油断も隙も無いなと思う。

 もしかしてこっちの世界の貴族にとっては必須スキルなんだろうか……ディットさんはともかくルーウェンさんを見てるとそうは思えないんだけれども。

 まぁ、期待されてるところ申し訳ないけど正直そんなすっごいヒラメキとかはないと思う。


 なんていうかすんごい勢いで褒められてるけど過大評価されてる感が凄い。

 まぁ一族の期待を背負って……みたいな立場じゃないから私としては気軽だけど、そうじゃなかったら期待が重すぎて潰れる可能性あるやつだわこれ。

 下手にこういう感じの家に生まれてきてうっかり前世知識で役立つ感じの情報ぽろっと漏らした結果この子は凄いわ天才かもしれない! とか持ち上げられてたら毎日がプレッシャーとかになってそうだな……

 両親が生きてたらもしかしてそんな展開があったんだろうか。

 いやでもうちそんな魔法の研究とかしてた感じしないし無いかな……?


 転生してからのスタート地点が割とハードモード感あったけど、そんな感じの家に生まれてたら毎日精神的にハードモードだったわけか……両親が死んで良かったとは思わないけどもしそうだったらどっちがマシだったんだろうね。



 とりあえずやたら褒められて自己肯定感だけが爆上がりしかけたものの、どうやら無事に帰る事ができそうでホッとしている。気軽に遊びに来てくれていいからね! とか言われたけど、ルーウェンさんとかディットさんにお呼ばれしたならともかくそうでもないのに気軽に遊びに行けるかって言われたらまぁ無理よね!


 友達の家に遊びに行ったら友達が出かけてて「すぐ戻ってくると思うから待っててちょうだい」とかって友達のお母さんに家にあげてもらったとして、そこでお母さんと和気藹々と会話できるかって言われるとハードル高いのと同じようなやつ。

 なのでそれに関しては適当に愛想笑いだけして濁しておいた。前向きに善処します。



 ちなみに帰る時はルーウェンさんとディットさんがわざわざうちの薬屋まで送ってくれたんだけど、そこでルーウェンさんからはうちの両親がすまない、と謝罪されてしまった。

 いやうん、テンション高くてちょっとついていけないな、って思った事もないわけじゃないけど、いいご両親だと思うよ……?

 でもディットさんはともかくルーウェンさんとあのご両親のノリは合わないのかもしれないな、とは思った。


 ハイテンションなアレクセイさんはこの短時間ですっかり見慣れてしまったけれど、ハイテンションなルーウェンさんはきっと私見かけたら三度見くらいすると思う。割と本気で。


 そう考えるといくら顔が似てるといってもなぁ、という話だ。ルーウェンさんが年を取ったらアレクセイさんみたいになったとして、あのテンションは継承されないだろうなって思うもん。もしあんなテンションになってたらそれはそれで何事!? ってなるかな。


 二人に送られて、別れ際に「またギルドで」と言われたので同じように返す。


 そういやボチボチ新年迎えるっぽいけど、良いお年を、とかは言う必要がない感じかな。

 多分明日か明後日には普通にギルドで顔合わせるだろうし。

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