弐拾参話 キノコのやま(いけません)
評価・感想などをいただくととてもうれしいです。
内政経験者リクルートの方はやはり柳沢殿の紹介で何とかなった。まあ短時間で一五万石もの大名になってその後も領地を維持し続けられた柳沢家やはり半端無いな。
「田中喜古と申します、伊奈家の推挙によって参りました」
関東郡代を代々世襲する伊奈家に柳沢殿が依頼して連れてきたやはり武田旧臣ルートの人材だ。元は同じ武田旧臣の窪島家の出で農家と絹販売をしていたが東海道の川崎宿の本陣名主田中家に養子に入った人物だ。正に地方巧者として我が家の内政の指導をしてくれる。ん?田中って暴れん坊が将軍になった世界で田中丘隅と名乗っていた農政家じゃないよね。そして、その教えを受ける面々もやって来た。窪田助太郎と石坂平次である。彼らは八王子千人同心十家の分家筋の若者で中村平六の下について貰う。
後は萩原平馬の下で働く護衛役達でこちらも千人同心頭分家の志村平三と河野藤五郎だ。志村家は東村山のアイ-ンなコメディアンの先祖らしい。河野家は元々は伊予から甲斐の武田に仕えた変わり種の家だそうだ。二人とも一刀流の使い手だそうだ。残念ながら天然理心流は幕府後期に起こった流派でまだ存在しない。
「田中殿、よろしく御引き回しお願いいたす」
中村平六が頭を下げると田中は頷き、皆を見回しながら口を開く。
「某もまだ若輩者ですが、これまでに教わったことを全てお伝え申す。いつでも御領地を頂いても問題なきようにいたしましょう」
これで、家臣団の基礎は出来るかな?出来たらいいな。
□
そうしていると日野屋が引っ越したばかりの屋敷を尋ねてきた。
「殿、報告が御座います」
「藤兵衛、そんなに畏まるなよ、いつも通りにいこうぜ」
「それなら御人払いをお願いします」
「へいへい」
人払いを済ませると藤兵衛はこちらに近づき聞こえるぎりぎりの小声で言った。
「キノコ計画、成功を修めました」
「そうか!やったか、してどの種類もか!」
「はい、量産の目途が立っております」
凄いな、椎茸位ならうまくいくと思ったがぶなしめじやキクラゲも成功させたのか。
「御領地が頂ければそこで栽培が出来ますな」
「それまではそちらで栽培するしかないな、それまでは少量市場に流して流通を確保しておくか」
「大阪に試しに送っておりますが大層な引き合いがありまして非常な高値で取引されております」
「そのうち定期的に出荷していれば栽培しているのに気が付くか。栽培法を探られないように気を付けないとな」
設備などの模倣する奴は出てくるだろうが雑菌を殺すための消毒とかは簡単には理解できないだろうから暫くは独占は出来るだろうな。
「ある程度経ったら商品販売よりもキノコの種を販売するようにして行くようにしよう」
「成程、入口を抑えるというわけですな」
藤兵衛は長年の付き合いだけあってよく分かっている。量産の暁には紀伊國屋文左衛門に販売を頑張ってもらおう。え、キノコ贔屓だって、タケノコはどうしたって。お菓子じゃないんだしそこは争う意味ないと思うんだけど。
□
大阪
彼らの作ったキノコは大阪の商人らの目に留まりその品質と安定した販売量に注目が集まる。淀屋、天王寺屋、鴻池など名のある豪商たちはその出所を知りたがり探りを入れてくるのであった。
「運んできた問屋を尋ねた所江戸から送られて来ていることが分かった。送っている商人は近江の日野屋、その江戸の支店だ」
「江戸からということは関八州のどこかで大量に取れる山でも見つかったか」
彼らには椎茸を始めそれらが栽培できるということを知る者は居なかった。
「日野屋か、堅実に商売をしているようだが所詮は近江商人、我らの前には頭を下げるしかあるまいて」
こうして日野屋と背後にいる源三は彼らに捕捉されたのであった。
その頃源三らは
日野屋の持参したキノコを使って宴会を開いていたのであった。
「いや~キノコ鍋最高に旨いです」 「串焼きの椎茸も旨いです、こんな食べ方があったんですね」
彼らは肉厚の椎茸の肉詰めに舌鼓を打ち、キクラゲの歯ごたえに驚きながら食べるのであった。
彼らが大商人たちの注目を受けていると知るのはもう少し先のこととなる。その時どうなるのかは今は誰もわからない。
現在感想返し等は出来かねますのでご容赦ください。
この作品に登場する人物は全て創作によるものですので、現実の歴史、史実について関係はございません。




