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弐拾弐話  どうしてそんなに出世してるんですか?

 柳沢殿から湯島聖堂が建てられそこに学問所が置かれることとなったと話があった。


「御老中の大久保様らの連名で上様に言上がありましてな、学問所を作り武士の子弟の教育と学問が身に着いたかどうか吟味を行い御引上げするかどうか決めるそうです。上様もまさか彼らがそう申し出てくるとは思わず驚いておいででしたが、良き事であるとお取り上げになりました」


「それは驚きですな」


 そう答えると柳沢殿は居住まいを正されてこう言った。


「それも偏に貴殿のお陰ですぞ」


「まさかそのような、某は大した事などはしておりませぬ。我が家の初代の書を読み解いただけですぞ」


 すると、柳沢殿は首を横に振りこちらをじっと見た。


「貴家の初代の功は上様も某も理解しております。ですが貴殿が居らねばその知見も功績も世に出なかったでしょう。それは貴殿の功と言っても過言ではない。上様は貴殿を御庭番頭に引き上げられたことを喜んでおられますが同時にそれでも報いるに足らぬとお考えです。某もそう思っておりますのでいずれは伺候席を得ることにもなるでしょう」


 はい?伺候席?確か大広間とか、帝鑑間とか大名が座る席だよね。この人何言っちゃんてんだろうな。

 

「今のうちにそれに見合うような家中にせねばなりませぬな。いや御心配召さるな、まだまだ良き家臣の候補を見繕いますからな」


「はぁ」


何言っちゃんてんだろうこの人、又武田遺臣辺りから探してくるのかな?というか本気で大名にしちゃう流れなの?


「あ、それと某月が替わりましたら御加増頂けることになりました。上様の御恩に益々お答えしなければと思っております」


 なんでもいきなり2万石ほどの御加増だそうで、お先に諸侯の仲間入りですかそうですか。


「そうそう、大岡忠相殿も家督はまだですが上様が早く上げよと言われてまして、やはり月が変わったところで書院番になりますぞ」


忠相の出世も爆上がりだ。もしかして町奉行コースでなく側用人コースになったのかも知れない。


 俺は頭を抱えながら帰宅するのであった。




「え!御加増?」


家に帰って家族に報告すると親父を先頭にびっくりしてる。喜びを通り越して困惑が勝ってるようだ。


「殿、急に領地を頂いても我々もどうすればよいのか…」


 文官系トップの中村平六も困り顔だ。蔵米取の禄を管理するだけから領地の上がりで領地経営を回さなくては行けないからなあ。新規召し抱えでも経験者は少ないだろうし。


「柳沢殿が連れてくる人材に期待しないといけないか」


「是非!是非地方巧者の方を連れてきてもらわなければ」


そんな要求されても代官経験者が浪人してるわけないしなあ。取潰しになった大名家辺りの人材でも居ればいいけど。


「あのー私のような同心の娘が正室でもいいんでしょうか?」


 美代が不安そうな顔をしている。


「あーあたい、私のような町人の娘もふさわしくないよね」


 由も不安そうだ。


「まあそこは大丈夫だろ」


 武田遺臣の八王子同心なら柳沢殿が文句言わせないから。側室はまあ、将軍様の大奥にも町人から側室になった人がいるから問題ないだろ。そう言うと二人とも安心したようだった。


最悪美代がどこかの旗本か小大名の娘分ということにしとけば問題ないでしょ。そこは柳沢殿が何とかしそうだ。

それより引っ越し準備中だったのにさらに引っ越し決定なの?やっと書庫が出来たから移そうと思ってたのに。


いつになるかわからないが備えはしておいた方が良さそうだ。



その頃大岡家では


「源三殿の加増の件急ぎすぎではないかな」


忠真が言うと忠相が頷きながら答える。


「某もそう思いますが実際源三殿の御働きはそれに見合うものと上様も柳沢殿もお考えなのです」


「領地持ちの旗本ならば家臣も幾許かは経験があるから良いがこの間までは従者一人しか居なかった家だからな、柳沢殿には何かお考えがあるのかな?」


「聞いては居りませんが恐らくは…」


「余り急がぬ方が良いと思うがの」


「それは同意します」


二人とも源三のことを気に掛けているのであった。



一橋内 柳沢家屋敷


先年西の丸下より移った屋敷にて柳沢保明は源三を支える人材の吟味を行っていた。


「やはり蔵米取より知行に変わった事で困ることもあろうからな、詳しい者を付けねばなるまい」


 彼自身小禄より今や大名にならんとする勢いの家故その辺りは誰よりも詳しいのであった。保明は手の者が調べて来た報告書を見ながら考える。


「なるたけ若く優秀な者を付け、実務にたけた者に後見させれば良いか」


こうして源三は自業自得とは言え本人の思いとは違い更なる出世の道へ嵌っていくのであった。



現在感想返し等は出来かねますのでご容赦ください。

この作品に登場する人物は全て創作によるものですので、現実の歴史、史実について関係はございません。

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