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拾玖話  見つけた(上)


 水戸の御老公と大岡越前、前世でのTVドラマでは絡むことはなかったけど2人は同じ時代の江戸に居たんだなと改めて思わされたな。最も現実では御老公は隠居して権中納言(黄門)になってからは水戸の西山荘で暮らし、忠相は養父である忠右衛門殿が隠居してから出仕しているから会う機会は無かったんだけどね。


 俺と忠右衛門殿が柳沢殿に出会った為に忠相が出仕することとなった為起こった事だものな。ちなみに「遠山の金さん」こと遠山景元は忠相が亡くなってから大分経ってから生まれてるから絡むことはない。「鬼平犯科帳」の長谷川平蔵はギリギリ忠相と掛かってるけど5-6歳位で忠相が亡くなるから会うことはないだろうなあ。


 御老公が帰られ忠相たちも帰宅した後、夕食を家族と取り書見の間に行く、荻生惣右衛門から渡された書物を読むためにだ。


「拾遺叢書」とだけ表紙に書かれた書でそう厚く無くさらっと読めそうな分量に見える。


 俺は最初のページを捲り読み始めるのであった。



(※以下源三が読んだ視点)


 読み始めてすぐにこの書物が写本でなく初代が記した書であることに気が付いた。以前初代が残した自分の経歴と立ち位置、神君様に仕え、その後を記した御免状とセットの書を見つけたがあれは御免状の説明の為に書いたものでこちらはその後神君様の薨去(三位以上の方はそう呼ばれる家康は生前従一位死後正一位)後に全て落ち着いた後に書かれた物で有ると書いてある。


 そして序の後に書かれた一文が「いつか子孫の誰かがこの書を見て理解する者が現れる事を祈る。三百年後かも知れないが{逆行転移}と言う言葉が判る者が現れん事を」とあった。


 「見つけたよ」割と直ぐだったけどね。


 この書を残した初代が「見つかっちゃったか」と笑っているのが幻視されたよ。


 そして続きを読み進めていく。



(※以下源三が読んだ視点) 


 榊原旗本家初代 榊原蔵人源善 この名乗りはこちらに来てからの名乗りだ。元々は唯の榊原蔵人、親が贔屓の役者の名前から蔵人と名付けたのだそうだ。この地には数え十六の時に来た。元の地はここより遥かに遠い地、帰ることも叶わぬ地だった。この年になっても今でも夢のような地であったと思う。


 この地に来たことは正に事故、そのように今は考えるようにしている。降り立った地は尾張と三河の国境に当たる場所。丁度その地に姉川の戦より本領に戻る途中であった神君様に御目通り叶ったことが私の幸運なのか悪運なのかは未だ判らない。


「康政よ、同じ榊原を名乗る者、其方の係累ではないか?」


「さて?某も縁戚を全て把握しておりませぬが、少なくとも知る者の中には居りませぬな」


「殿、こ奴は風体も不審な者、康政の縁戚を騙り殿を害そうとする者の差し向けた者では?」


「忠勝よ、儂らを騙り害そうとするものならばむしろ目立たぬような風体で近づくのではないか?」


「そ、それは」


「殿、この者は不慮の事故でここに居るのではないかと某は思いまする。康政の縁戚であるかは判りませぬがそうであった時には康政も困りましょう、とりあえず岡崎まで同道させては?」


「数正はそう思うか。蔵人よ、取り合えず岡崎までは連れて行こう、その後は又考えようぞ」


 こうして殿に同道して岡崎まで来たが遥か遠くから来た故に当然ながら身寄りはおらず、殿に頼んで城で働かせてもらうこととなった。


「康政よ、この間拾った蔵人はどうしておる?」


「は、かの者計数に巧みで最初は苦労しましたが文字も読み書きできます、台所方として働いておりますが拾い物であったと喜ばれて居ります。武芸の方は…からっきしでして、元は寺にでも居たのでしょうか?学校に通っていたと申して居りましたが」


「学校、といえば足利学校か?」


「そうではないようで、どこかの隠士が建てた学堂の出身者かもしれませぬな」


「それならば台所方では勿体なくないか?」


「そうですな、曳馬(浜松城)に戻る時に連れていき間者でないか様子を見てから取り立てますか?」


「そうじゃな、領国が増えた故使える者は取り立てぬとな」


 浜松城に移りそしてその日を迎える。


「三方ヶ原へ向かった殿の軍勢が武田の攻撃を受けとる!武田に謀られたのじゃ」


「儂は殿を迎えに行ってくる、留守居を頼む」


「夏目殿!」


 家康を迎えに夏目吉信が配下の二十五騎を従え浜松城の門を潜り抜けていく。


「あの~ご城代」


「なんだ、蔵人どうしたのだ?」


「いえ、殿をお迎えし武田に備える準備ですが…」




 家康は辛うじて浜松城近くまで逃げ延びていた。多くの家臣たちが殿として武田に立ち塞がり、迎えに来た夏目吉信が身代わりとして武田を引き付けての少なくない代償を払った結果であった。


「武田の追手は撒いたようだの、夏目や成瀬、田中らに助けられた。多くの家臣を失い惨めな敗戦じゃ、浜松の城は無事であろうか?」


 城の方を見ると夜なのに明るい、そして耳を澄ませると何やら物音が聞こえる。


「はて?何があったのだ?」


 城に近づくと規則正しく並べられた松明に旗を並べた城壁。開け放された大手門、そして櫓にて規則正しく叩かれている太鼓。家康は思わず呆けたような顔になりその風景を見ていた。やがて城方の方で家康に気が付き家臣たちが駆け寄ってくる。


「殿、ご無事でしたか!」


「うむ、夏目らのお陰で命を拾ったわ、だがこの有様は?」


「実は榊原蔵人が殿らが迷わずに浜松に帰り、武田を迎え撃つにはこの{空城の計}しかあるまいと準備したのでございます」


「なんと、あの蔵人が!」


驚いた家康が大手門から城に入ると門内は逆茂木が置かれその後ろに弓を持った兵が並んでいた。


「これも蔵人の手配りか?」


「は、武田が攻めてくるのであればまず大物見(威力偵察隊)が来ると予想して少ない城兵でも守れるように配置したのだとか」


家康は舌を巻く思いであった。


 その後松明に誘われたかのように散り散りになった徳川勢が城に戻ってきた。



 その頃浜松城を伺う一団が居た。


「大手門を開け放つとは迂闊な、攻め込みましょう」


「いや、待て。松明と旗を見て判らぬか、整然と並び門前は掃き清められている。とても敗残の城ではない」


「そう言われれば」


「うかと攻め込めば死地に入る事となろう、引き上げる」


 武田の驍将山県昌景はそう言って踵を返すのであった。こうして浜松城の危機は去った。

 

 武田の本陣に戻った昌景は主信玄の元に行き城の様子を報告した。


「成程な、空城の計を使い我らを退けるか。家康の元にも知恵者が居るようじゃな」


「空城の計であればこのまま攻めれば城は落ちるのではありませぬか?」


 武田の後継である勝頼が尋ねると信玄はゆっくりと首を振った。


「勝頼よ、そう思わせて家康は我らを浜松に呼び寄せたいのだ。織田家の為の時間稼ぎ、我らが城攻めに時間を費やしている間に織田は体制を立て直す。京の御所様と和睦してこちらに兵を向ける余裕を作るつもりよ。我らはそれには乗らぬ。三河を攻め浜松を孤立させればいずれ城は落ちる」


 武田勢は浜松には向かわず、三河へその進路を向けたのであった。




「蔵人よ良き働きであった。お陰で浜松は救われた。この功で其方を士分として召し抱える」


「有難き幸せでございます」


「とは言えもう少し武芸を磨かんとな、弓はともかく槍くらいは振れるようになっておけよ」


「習ってはいるのですが…」


「まあ良い、向き不向きがあるからな、不思議なことに武田は浜松には来ぬようだな」


「恐らくは三河に進み岡崎と浜松との繋ぎを断ち切るつもりでしょう」


「それは困るな、其方ならどうするかな?」


「小勢で夜襲を仕掛けるなどして足止めを図るべきでしょう、対陣が長引けば武田は兵を退くしかございませぬ」


「そうだろうな、問題は効果があるかどうかだが」


「幾許かはあるでしょう、年を越して武田を岡崎まで越させなければ何とかなります」


「どうしてそう言い切れる」


「信玄公の命数が尽きるからです」


「な!なんとっ、だが何故判る」


「判るとしか言いようがありませんが」


「本当なら有難いが」


「どちらにしても、織田様が動けねば出来ることは限られております」


「確かにな、其方の言が正しいかは年が明けてからじゃな」


 武田は年が明けて直ぐに三河へ侵攻し野田城を落とすなどしたが停滞した後引き上げていった。


徳川は虎口を逃れた。




 うわ、半分まで読んだら凄いことが書いてある。初代、予備知識も無しに戦国時代に送り込まれるなんてとんでもハードモードじゃないか、しかも空城の計を考えて実行させたり信玄の命数を測ったのは完全に未来知識だよなあ。後半もとんでもないことが書いてありそうだ。




現在感想返し等は出来かねますのでご容赦ください。


この作品に登場する人物は全て創作によるものですので、現実の歴史、史実について関係はございません。





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― 新着の感想 ―
水戸黄門には暴れん坊だった若い吉宗を改心させるエピソードがある 大岡越前の第一話は暴れん坊だった若い吉宗を懲らしめるエピソード もしかすると御隠居と忠相がエンカウントしていた可能性が…?
天下人の家康にいきなり出会うのはイージーモードだな。 非常識レベルの知識チート持たせるのは現実感がないので別枠とすれば、三方ヶ原後の空城の計を軍略としてなのか歴史事実としてなのか知っている段階で普通に…
地元民だから、水戸の西山荘には違和感が強い。
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