久保は久保(昔)
「ラジオの裏側で」の久保が瀬田と出会う前のお話です。
「ごめん、スマホの画面見えちゃったんだけど、それ知ってるんだ?」
ちょっとマニアックなキャラだし、知ってるやつがいて、ちょっとテンション上がる。
「……え?」
隣に座って、頬杖をつくと、相手の顔を見て思わず笑みがこぼれた。
びっくりしてるのが、なんかおかしくて。
「陸さんも、これ知ってるんですね」
少しだけ、身体が近づく。興奮してるのか、目が潤んでる。
なんか、俺まで楽しいかも。
「グラス、空じゃん。同じのでいいよね? イチさん、もう一杯、お願い」
コトンと音がして、隣にグラスが置かれた。
「陸也、お前は追加いるのか?」
「あっ、同じので」
それだけ言うと、相手のスマホを覗き込んだ。
「これ、微妙にブサイクなのがいいんだよな〜」
画面を指で軽くなぞる。
「え?陸也って言うんですか?」
「そうそう」
新しいグラスを受け取って、すぐに口をつける。
「てっきり陸って名前なんだと思ってました」
「あ〜。なんか、みんな言いにくいんだって。勝手だよな。で、いつの間にか陸になったってわけ」
「そうなんですね」
また、少しだけ、身体が近くなる。
「でも、これ知ってるの、ほんと仲いいやつだけなんだよ」
「え?なんか、陸さんと仲良くなれた気がして嬉しいです」
「陸也って呼んでもいいよ」
途端に顔を赤くして照れてる。
……なんか、かわいいな。
気づいたら、耳元に顔を近づけていた。
「このあと、いい?」
今日も、なんとなく誰かと居たくて。
通い慣れた店のドアを開けると、イチが挨拶してくれた。
「いつもの、お願い」
注文を済ませて、カウンターに座ると……。
「おっ、また会ったな」
この前の「ブサイクキャラ」のヤツだ。
まぁ、知らない中でもないし。とりあえず隣に座るか。
「あっ、陸也さん」
身体が触れるぐらいの距離と、やけに甘ったるい声が耳につく。
「今日もここで飲んでたんだな」
「陸也さん、来ないかなって。今度、一緒にどこか行きませんか?」
あ〜。やっぱりこうなるか。
大きな溜息が出た。
「ごめん、俺、楽しい時間が過ごしたいだけなんだよ。
だから、そういうのは……いらないかな」
コトンと目の前にグラスが置かれた。
イチさん、タイミング良すぎだろ……。
甘ったるさを流し込むように、グラスを煽る。
「イチさん、同じのもう一杯くれる?
……あと、誰かいい子いない?」
久保を「花」に例えると…とイメージして書いたお話です。
「トリカブト」でした(笑)
花はすごく綺麗なんですよ。トリカブト…。




