第23話 ティナと死神
「これは美味い!皆も食べてみよ!」
「沢山在りますのでどうぞ」
ティナによって料理されたそれは通常の料理にブランチの心臓を混ぜて作られた肉料理であった。
何も知らない魔人族の者達はそれを美味い美味いと口にする。
「ほぅ・・・これはまた斬新な味付けですな」
「うむ、悪く無い」
「心なしか魔力が回復しているようにも感じますな」
その言葉にティナは口元を見えないように歪め説明をする。
だが本当の事は言わない、魔力を持つ人間の心臓にを食べると食べた物に魔力が宿ると言う事は・・・
そして、これこそがティナが計画する最後の1ピースになる事をこの場の誰も気付かない。
「これは益々この国に必要な存在になるな」
「そう言って頂けると嬉しいですわマナ様」
そう魔王マナが話してその肉を口にする。
そうしている間にティナは次の獲物の料理に堂々とおかしくなり草を目の前で混入させる。
ダブルの効果で偽ティナが見えている者には本物のティナの姿は一切見えないのだ。
こうしてティナの連続殺人は開始された。
魔王マナと共に狩りに出ておかしくなり草で混乱している者をマナが狩る。
そして、それを料理としてティナが出す。
それは続けられた・・・
勿論徒歩数時間で辿り着ける距離に在る魔王の城からティナは一定感覚でリムルダールの町へ移動してそちらの進行状況も確認する。
計画通りヨハンは魔剣を量産し始めているのを確認し魔王の城へ戻るティナ。
ティナが居ない間は魔王マナも偽ティナと共に狩りに出たりしていた。
その間、偽ティナは一切言葉を話さない。
だが普段から口数を遭えて減らして偽ティナが話さないのを誤解させる作戦も予定通り上手く行っており無事にティナの予定通りの速度で魔人貴族達は次々とマナの手によって殺されティナによってマナの魔力とさせられていた。
そうして、ティナはその日を迎えるのであった・・・
「すまな・・・い・・・ティナ・・・・・・私はもう・・・・長くな・・・い・・・・・せめて・・・・君だけ・・・・で・・・・」
柱の影に身を隠した状態でティナは魔王マナの最後の言葉を聞いていた。
気配で天井に死神が来ている事も確認したティナは死体が大量に転がる部屋の中央に移動してダブルの効果を完全に解き放つ。
その瞬間この場に居る者だけでなくこの世界全ての者に掛けられたダブルの効果が解除され偽ティナは完全に消え去った。
「ティナ、もう十分ですよ。予定数の魂は集まりました」
その言葉を聞いて今そこに居るのに気付いたと言わんばかりの表情でティナは死神の声のした方を見上げる。
「もう疲れたわ」
「はい、私の言いつけ通りによく頑張りましたね。さぁ一緒に戻りましょうか」
その言葉を聞いてティナは首を横に振って返事を返す。
「嫌よ、もう私はあそこには戻らない。もう私の両手はこんなに血に塗れてしまった。もう元の私には・・・」
「駄目ですよ、貴女はお気に入りなのですから・・・」
「私を解放する気は無いんでしょ?だったらこうするまでよ!」
そう言ってティナは2本の短剣を取りだした。
そして、小声で呪文を唱える・・・
「この場に居る者の体から抜け出た魔力よこの剣に宿りその力を示せ!」
そう、この『完魂相殺の短剣』を完全に使用するには異常なほどの魔力が必要なのだ。
特に対象が神とも呼ばれる存在であるからこそティナはこの瞬間の為に魔人貴族達を殺して魔王マナにそれを喰わせてその魔力を上げさせていた。
2本の短剣に込められた魔力が満タンになりティナはそれを持ち替えて自らの胸に突き刺した。
物理的な痛みは確かに在る、だがティナは歯を食いしばってその場に蹲る。
死神が以前口にしていた『治療関係に至っては苦手分野で肉体を持たないと使えない』その言葉が全てである、更にティナが死ぬようなことにならないようにする筈なのだ。
だからこそティナは痛みに耐えながら呻き声一つ口から出さずにその場で蹲ってそれを待つ。
「ティナ、言った筈ですよ。貴女はお気に入りなのです。死なせはしませんよ」
その言葉と共にティナの直ぐ前に1人の男性が現れた。
老年の男性は顔を見なくても死神がその姿を仮として使っているのは既に知っていたティナは近付くのを短剣を抱きしめながら待つ・・・
死神がその手をティナの肩に触れさせて傷を癒そうとしたその時であった!
「それを・・・待ってたわ!」
「なっ?!」
死神の顔を見る事もせずにティナは全身全霊の力でもう一本の短剣をその男性に突き刺した!
身長も立ち位置も前回見た時に理解していたティナはすぐさま死神の心臓に突き立てられた短剣と自分の心臓に刺さっている短剣を周囲の魔力を使って発動させる!
だがそれを邪魔するかのように死神はティナの頭部を鷲掴みにして壁に投げる!
しかし、既に魔力が込められた2本の短剣はその効力を発揮していた。
「なっ?!これは?!」
死神は自らの体に起こっている異変を直ぐに理解した。
その表情を見てティナは深い笑みを浮かべるのであった。




