プロローグ
気が付いた瞬間、視界が白く塗りつぶされた。
――熱い。
いや、そんな生易しいものじゃない。肌を焼くような熱風が、肺の奥まで満たしていく灼熱だ。
逃げ惑う足音と、程なくして聞こえてきた人々の悲鳴。もはや何を言っているのか聞き取れないほどの絶叫だった。
何かが崩れる音がして、ここが建物の中だと朧げに理解する。熱でぐにゃりと歪む視界の端に、火災の赤とは違う、不自然なまでに白い閃光が走った。
そして、爆発音。
それは遠くで一度発生したかと思うと、立て続けに何かに誘爆しながら、凄まじい勢いでこちらへ迫ってきた。
立たなくては。逃げなくては。
本能的な恐怖に突き動かされたとき、右手に重みを感じた。それは誰かの、細い手首だった。
誰だ?
その顔を見ようとした刹那、すぐ背後で耳をつんざくような轟音が轟く。閃光が、またしても目の前を白く霞ませた。
「はや……、逃げ……ろ!」
喉が焼けて声が出ない。
それでも、この手だけは離しちゃいけないと本能が、いや、それ以上の深い場所にある何かが叫んでいる。
涙さえ蒸発するような絶望の中で、俺は目の前に倒れている黒い影に覆い被さり、必死にそいつを庇い続けた。
――助けたい。助けなくちゃ。
――だって、だってお前は……っ!
頭上で巨大な爆発が起きた。次の瞬間、後頭部に硬い衝撃を受け、視界が真っ暗になる。
意識が、ぷっつりと断ち切られた。
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