第十話:最高傑作の終焉(終幕)
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第二地下室の闇は、もはや結莉に安らぎを与えなかった。その部屋は今や、彼女の存在が唯一無二ではないことの証明であり、代わりの利く「実験体」の一つに過ぎないことを突きつけていた。
【視点:風間結莉 — 執着の炎】
「私だけ……私だけが、愛されるべきなのよ!」
心の中で絶叫する。
私は目の前のコレクションを憎悪の目で見つめた。お父様が過去の残影を見続けるなら、私の存在は消えてしまう。この歪んだ歴史に、私の未来を壊させてたまるものか。
私は重い酸素ボンベを手に取り、叫んだ。
「お父様、私を見て! 他の誰でもなく、私だけを!」
――ガシャアァァァンッ!
私はそれを最初のガラス管に叩きつけた。液体が床に溢れ出し、冷たい静寂が破られる。私は狂ったように全てを破壊し始めた。過去の執着を粉砕し、自らの意志を刻み込む。
「結莉! 何をしているんだね?!」
源一郎が叫ぶ。その瞳が、自らの築き上げた「歴史」が瓦解していく光景に驚愕で見開かれる。
私は振り返り、狂気に満ちた微笑みを彼に向けた。
「これでもう私だけよ、お父様。貴方は永遠に私だけを見るしかないの!」
【視点:風間源一郎 — 墜ちた創造主】
私の世界が崩壊していく。結莉、私の最も完璧な創造物が、すべてを無に帰そうとしている。この裏切りを、私の意識は拒絶した。
「貴様……よくも私の全てを!」
私は彼女に掴みかかった。怒りと絶望に駆られ、私たちは混沌とした床の上で激しく争った。
「従順な人形でいられないのなら、私と共に滅びるがいい!」
【視点:風間衛土 — 終わりの目撃者】
俺は意識が遠のく中、この惨劇を眺めていた。結莉と親父が、瓦礫の中で互いを拘束し合っている。これこそが、奴らが求めた「完璧な家族」の終着点だ。
ふと見ると、詩織がガスバルブのそばに立っていた。彼女の瞳には、もう迷いはない。そこにあるのは、純粋な決意。彼女の手には、銀のライターが握られていた。
「さよなら、お兄ちゃん」
唇の動きだけで彼女が囁く。俺は微笑んだ。ようやく、すべてが終わる。
【視点:風間詩織 — 終焉を告げる者】
壁の声は、もう聞こえない。
私はガスのバルブを全力で回した。充満するガスが、争い続ける父様と結莉お姉様を包み込んでいく。
「父様が言ったの。完璧とは、これ以上何も変えられない状態のことだって」
私は静かに言い、ライターの火を灯した。
小さな火花が、大気を捉える。
――ドォォォォォォンッ!!!!!
凄まじい爆発が、風間別荘を突き破った。巨大な火柱が、地下室も、コレクションも、そして長年積み重なった歪んだ愛も、全てを一瞬で飲み込んでいく。その夜、軽井沢の地は激しく震えた。
何も残らなかった。ただ純粋な静寂だけが、そこにはあった。
実験は、完結した。
「最後までお読みいただきありがとうございます。次回の更新は明日、22:00を予定しております。また明日お会いしましょう!」




