32『とりあえずのお土産』
温泉効果のおかげかとてもよく眠れ、そして翌朝(とはいっても本当にいまが朝かどうかはわからない)を迎えた。
女性陣は朝風呂を楽しんでから脱衣場で防具などを身につけて戻ってきた。
「地下30階層はこの20階層のような休憩フロアじゃない……つまりまだボスモンスターが健在だ。そいつを倒さないと新記録となる31階層以降には行けない」
30階層に向けての出発準備は終わっている。
俺は今回のゴールをみんなに伝えた。
「勝てばレベルは大きく上がる。それより深い階には手付かずのアイテムボックスがある。新記録達成の念写も残せる。ただ、もし倒せたとしてもちょっと潜ったら帰ろう。復路のことも考慮するとその辺が限界な気がする」
全員は頷いた。
このダンジョンはどこかのギルドがボスを倒して進み、手づかずのアイテムを回収して帰る。その後はボスがいなくなったフロアが全ギルドにとっての野営地となる。それの繰り返しで攻略されていた。
我々だって、これまで4回あった5の倍数階でボスと戦わずに済んでいるのは、過去にどこかのギルドが倒してくれていたおかげだった。
その「どこかのギルド」になれたら最高だ。
「じゃあ、出発だ!」
21階層へとつながる階段を降りていく。
あれだけ沢山のギルドが挑んでいたけれど温泉がある20階層に辿り着けたギルドは、西新宿ギルドと五郎の元所属ギルドの他は2つだけだった。
「五郎は30階層のボスと戦ったことはあるのか?」
「ああ、一度だけある。よくわからないままにやられて命からがら逃げたんだ」
「よくわからない?」
「どこのギルドもそいつの正体が掴めてねぇ。なにしろ姿が見えねぇのに突然大量の石が当たってくるんだ。ボスフロアには遮蔽物がないから防ぐこともできない。仲間のひとりは大きめの石で脚の骨を砕かれて引退したよ」
「見えない敵に……当たってくる石か……」
俺たちは迷いつつも下の階層へとどんどん潜っていった。
その途中で大きな成果があった……まだ開けられてないアイテムボックスの発見だ。
中にあったのは、直径がブローチくらいのボール状の魔石を金のチェーンで吊るしたペンダントだった。
真希がそれを首にかけたので、俺はなにか特殊効果が付与されてるのかを尋ねた。
「どうだ? なにかありそうか?」
「……わからない。もし何もなかったら売ればいいわ。現在の魔石相場はグラム3万円だから……これひとつで250万円くらいの価値はあるもの」
もしボスモンスターに歯が立たなくて帰っても、一応お土産はできたわけだ。
少なく真希にとっては最低限の目標達成だ。
そう考えると、一気に気持ちが楽になった。
そしてついに30階層へとつながる階段の手前まで来た。
やはり全員の顔には緊張が見える。
さて降りるか……と思ったその瞬間。
階段を上がってくる男たちがいた。ハチマキ男率いる五郎の元同僚たちだ。
全員鎧は凹み、傷だらけで、頭から血を流している者もいた。
「五郎さん……やっぱダメだったよ。どうやったって勝てっこない」




