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コアソウル

「クライムさん、後ろを向いていただけますか?」


「はい」

サンドラに言われるまま背を向ける。


「失礼します」

サンドラの手が背中に添えられたのがわかった。


「ヒーリングの魔法で他者の傷を治療しているご自身の姿をイメージしてみてください」


「わかりました」

目を瞑り、イメージする。

(なんだ‥?胸の辺りが温かいような‥)


何かはわからないが、胸の辺りに感じるものがある事だけは分かる。

(これがコアソウル?)


「イメージできましたか?」


「はい」

サンドラの手が背中から離れる。


「これでクライムさんのコアソウルに職業が刻まれ、回復魔法士となりました」

(これだけ?)


確かに何かを感じはしたが‥。


「ふふっ。不思議ですか?ヒーリングが使えるようになっているはずですよ。試してみましょうか」


口には出さず、念じてステータスを開いてみる。

職業が回復魔法士となっており、スキルにロウヒーリングが追加されていた。


(まあゲームなら転職は一瞬で出来たわけだしこんなものなのかも)


「まず、自分自身の魔力を感じることからです」


「はい。なんとなくわかります」

教わらずとも、何か力の流れのようなものを身体の中に感じる。

(この感覚が魔力ってことかな)


「その魔力をヒーリングの魔法力として変換するようなイメージのまま、ヒーリングと唱えます」


「えっと、『ヒーリング』」

唱えた瞬間、身体から白い光が放出される。対象は特に意識していなかったため、自分自身に魔法がかけられたようだった。

(あー、これはケガしてなくてもなんか暖かくて癒されるかも)


「バッチリです。他者の傷を癒す場合はその相手を意識しながら放てば大丈夫です。ただ、ヒーリングの魔法は距離があると効果が届きませんのでなるべく近づいて使用するように心がけてくださいね」


「わかりました」


「それと、魔法を使うときの注意なのですが」

サンドラが急に真面目な顔になる。


「魔力が枯渇した状態で無理に使おうとすると体に負担がかかります。具体的には貧血のような立ちくらみが起こって、しばらく動けなくなります。ひどい時には意識を失いますのでくれぐれも気をつけてください」


「それは経験したくないですね。気をつけます」

(ということはMP切れても頑張れば少なくとも1回は魔法使えるってことね)


「はい、それではわたしからは以上になります。引き続き、リーグザールさんお願いします」


サンドラに促され、リーグザールが前に出る。


「やり方は同じだ。今度は攻撃魔法を使用して戦う自分をイメージする。背をこちらに」


「はい」

リーグザールの手が背中に触れる。

(イメージ、イメージ‥ファイアでいいかな)


ファイアの魔法でモンスターを攻撃する姿をイメージする。

胸の辺りに暖かいものを感じるのは先ほどと同様。

(ん?なんか‥)


回復魔法士を刻んだコアソウル。

今になってはっきりと知覚できるようになっていた。


そして、それとはまた別のコアソウルの存在が感じ取れる。

(なるほど。今度はこっちのコアソウルに攻撃魔法士が刻まれるって訳か)


「イメージできたか?」


「はい。多分大丈夫です」


「よし。ではストーンの魔法が使えるようになっているはずだ。試してみよう」


念じて開いたステータスの職業欄には回復魔法士の下に攻撃魔法士が追加されており、スキルにはストーンと、魔法障壁(低級)の表示。


「ストーンは石礫の魔法だ。拳ほどの大きさの石を前方に飛ばすイメージでストーンと唱えるんだ」


「はい。こうかな?『ストーン』」

手を木の的へかざし、魔力を魔法力へと変換する。


かざした手の平から拳ほどの大きさの土色の塊が出現し、前方へ射出された。


スピードはかなりのもので、100キロ以上は確実に出ている速度に見えた。

一瞬で木の的に到達し、的には大きな穴が空いていた。


(うわ、これ結構な威力だぞ)

魔法を放った感動よりも先にその威力に驚かされた。


初期魔法でこの威力とすると、ゲームで最強クラスの魔法が仮に使えたとして、その威力はどれほどのものになるのか想像もできない。

(当然敵も魔法使ってくるんだよな。食らったら普通に死ねるぞこれ)


ゲームでは魔法は必中。

防ぐには障壁魔法か、魔法抵抗値の高い防具を装備する必要があった。


「よし。攻撃魔法士としても問題なさそうだな」


「はい。サンドラさん、リーグザールさん、ありがとうございました」

2人に頭を下げつつ礼をする。


「これからは冒険者仲間ですね」

サンドラは優しい笑顔で応える。


「攻撃だけではなく、障壁魔法も忘れるなよ。反属性を身に纏うイメージだ」

リーグザールは先輩としてのアドバイス。


「はい。咄嗟に展開できるよう練習しますね」


「終わったみたいだな」

離れたところで談笑していたガンドフとミルーシャもいつの間にか近くに来ていた。


「はい。あらためてお二人もありがとうございました」


2人にも軽く頭を下げつつ礼を言う。


「これも仕事ってやつだ。俺としては将来有望な後輩に会えて楽しかったぜ。まあ、個人的には前衛職を選んで欲しかったがな」

ニヤリと笑うガンドフ。


「そうそう。後輩くんの面倒をみるのも先輩冒険者の務めなのだよ」

ミルーシャは少し冗談っぽくも聞こえる調子で腰に手を当てて胸を張った。


「無事に終わりましたし、そろそろギルドに戻りましょうか」

サンドラが言う。


「りょうかーい。お腹もすいたし、戻ってご飯にしようよ」

ミルーシャと同じく、少し小腹が空いていた。

気づけば昼時はとっくに過ぎているようだった。


「よし、今日は俺がおごろう。リーグも来るだろ?」

「ああ。だが、自分の分は払うぞ」 

「やったー!」

「よろしいんですか?ガンドフさん」


などと話しながら、4人は街へと続く道へ向かって歩き出した。


(腹も減ったけど、せっかくだから残って魔法の確認してみるかな)


「あの、私は少し残って魔法を練習していきます。あとでギルドには報告に行きますので」


「えークライムくんもご飯いこうよ」

ミルーシャが戻ってきて腕を引っ張る。


「ミル!クライムさんごめんなさい」

サンドラがあわててミルーシャを引き離す。


「あはは。いえいえ」


「魔法に興味があるんだったな。いい心がけだ。実戦に出る前に、今の自分の魔力量を把握しておくことも重要だからな。君なら問題ないとは思うが、くれぐれも魔力の限界値を見誤らないよう注意することだ」


リーグザールの的確なアドバイス。


「はい。気をつけます」


「ったく真面目なやつだな。クライム、お前さんにはまた今度おごってやるよ!」


ガンドフは気前よく笑った。


「はい。ありがとうございます。そのときはぜひ」


手を振って4人を見送る。


「さーて、やってみますか」


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