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084 宝島~ブレドウィナー⑧~

「さて、話を魔法に戻そう。」

 

「まだ続きがあるのかよ……。」

 

 誠は少しうんざりしたような顔でシゲへと問いかける。

 

「まぁ、ここまで来たら致し方ない。説明を全てさせてもらう。そもそも『魔法』という概念が拙いんだ。世の中にあってはならない。」

 

「黒魔術とか、魔女狩りとかそういう話ではなくて?」

 

「あぁ、そういう問題じゃない。少し考えればわかる話なんだ。例えば誠に『絶対切れる剣』とか『一騎当千の力』や『一人で国家転覆できる力』なんてのがあったとしよう。まぁ、無敵だね。一人で国だろうが世界だろうが滅ぼせる。人類を絶滅させたいと思えばそれも可能。そんな力があったとしよう。」

 

「悪くない話だ。でも途中で飽きそうだ。」

 

「心情は別の話だ。その力があったとしても変えられる事ってのは所詮、『人の理《ことわり》』を超えることはできない。例えば宇宙空間で戦えるとか、月を真っ二つにできるとか、そうはならない。」

 

「そうだろうな。」

 

 誠はいかにもといった感じで話を聞く。

 

「一方で魔法を考えてみよう。よくある設定としては『空気中にある水分を魔力で集めて放出』とか『空気中の酸素であるO2と水素のHが結合して水を生み出すことも、熱を生み出して放出』で、それを魔力で行うと。」

 

「妥当な話だと思うけど? 科学的には矛盾はないでしょ。」

 

 ステファとしては納得できる内容だと思ったし、妥当だと思った。

 しかしシゲは険しい表情で話を続ける。

 

「いいかい。大気中の水分を『消費』するんだ。この水分はひょっとしたら明日、村に降る雨の水分かもしれない。その水分は山を越えた先の村に降る雨になるかもしれない。そんなのを連続で行われたらどうなる? 村には雨には降らず、干ばつが起こり作物は育たない。例えば帆船に乗っているが風がない。風を起こそうと思えば空気を暖めてやれば冷たい空気が暖かい空気の下に入るように風が吹く。じゃあ暖められた空気はどうなる? 積乱雲となって明日の嵐に繋がるかもしれない。そうなったら自分の帆船はよくても、次に出た船は嵐で沈没するかもしれない。『魔法』ってのはね、システムに干渉する(・・・・・・・・・)力なんだ。」

 

「システムに……」「干渉……」

 

「そう、人の理ではなく『世界の理』を書き換えてしまう可能性を持つものなんだ。幸いLAOの中では魔法を使用しても予定調和で雨は降るから干ばつは起きないし、予定調和で嵐が起こるときは起こるし、起きない時は起きない。ただ、これを現実世界で発生させるとなると、世界が書き換わる。月の満ち引きすらも変えられる。人を呪わば穴二つ。そのくらい呪というのは強いし、魔法というのはとても危ないものなんだ。」

 

「それでハナに貼ったあの呪符は?」

 

「システムアラートを発生させる呪符だ。脳管理システムに対してアラートを出して、脳保管カプセル内の酸素濃度を強制的に上げることができる。」

 

「リアルに干渉できるのかよ……。」

 

「誠に、以前教えた回復術師教会のアレあっただろう?」

 

「あぁ、あの虚無の世界な。」

 

「俺はあれを最初1週間休みなく続けた。」

 

「馬鹿じゃねぇの!」

 

 そのきつさを知っている誠は思わず叫んだ。

 

「そこまで影響があるとは思ってなかった。馬鹿と言われれば否定はしない。その時に運営に呼び出されてね。脳管理事務局としては、LAOというゲーム内の穴を突いて脳の異常疲労を発生させるのは困るらしい。そこで脳疲労が発生した時はこの呪符を使ってシステムに干渉してくれと。そうすれば脳カプセル内の酸素濃度を増やして脳の活動保持に全力を注いでくれると。」

 

「脳って酸素じゃなくてブドウ糖じゃないの?」

 

「維持管理といっても様々だな。セロトニンが必要な場合もあるだろうし、鬱患者が脳だけでLAOの世界に来た場合は投薬もスケジュール通りに行われる。LAOの中でAIと会話するカウンセリングも実施されているがね。」

 

「脳と魔法、そして世界への干渉か。これは……。」

 

「そう。本来は1ゲームプレイヤーの背負えるものではない。だから四神についても、ルナを介してであれば陰陽師のスキルとして使用する事は躊躇いがないが、それをプレイヤーである仲間に使う事には抵抗があった。強ければよい。カッコよければよい。そういう問題ではないんだ。その人が世界に、システムに干渉する呪《しゅ》となり得るのであればそれは俺の望む仲間の形ではない。」

 

「ワシはやりすぎたかのう……。」

 

「本当だよ、ハナに唆されたとはいえいきなりガブリはやり過ぎだ。」

 

 そういってシゲは小さく笑う。

 

「ボクも四神が欲しいのだけれど?」

 

「シンクロ率をこちらでコントロールする方法があるならば、ステファにも四神の権利を渡しても構わないのだけれど……。運営と相談してみようかな。」

 

「シゲさん、運営と連絡取れるのですか? 私はプレイヤーになった時に運営への連絡は禁止されましたよ?」

 

 驚いたのは元開発関係者のルカである。

 

「積極的には連絡は取らないけれども、バグがあった時は連絡している。最初は一般ユーザとしてバグ報告をちまちましていたんだが、どうやら俺は報告回数が多いらしい。何度もやり取りしているうちに担当がつくようになってしまった。」

 

「相変わらず斜め上のゲームの仕方をしているな。」

 

「だから廃人といわれるんじゃ。」

 

 そんなシゲの魔法談義をしていると、うーんという声が聞こえてきて皆が一斉に振り返る。

 みるともぞもぞとハナが動き出し、上半身を起こして頭を抑えながら軽く振る。

 

「酷い目に遭った。まだ頭がガンガン痛い……。」

 

「暫くは横になっていた方がいい。寝れるなら寝たほうが回復も早い。」

 

「そうする。」

 

 シゲの言葉に従ってハナはまた体を横にして目を閉じる。

 LAOのゲームというのは不思議なものである。脳だけになっても睡眠だけは必ずとらねばならない。

 シゲのような例外を除けば、睡眠というのは脳に休息を与える。

 

「そういえば、ブレドウィナーの周囲にあったバリアは解けたな。」

 

「そうじゃな。ハナが次に起きて戦えそうなら行くのか?」

 

「ボクは一旦引いてもいいんじゃないかと思っている。潜水艦まで戻り体勢を整えて、たとえもう一回ピラーの破壊からやり直しになったとしてもそれは問題にはならないと思う。」

 

「それも一興。次にハナが目覚めた時の状況によりけりかな。ペイン、医者としての見解は?」

 

「俺は脳外科じゃないしな。本人が何というか次第……いや、ハナの性格を考えると引くことはないのか。シゲが言えば従うのだろうけど。」

 

「判断は任せたよ、リーダー。」

 

 そういって俊也はシゲにすべてを丸投げする。周囲の仲間もうんうんと首を縦に振り賛同する。

 

「ハナの性格から考えると続行一択じゃないか……。」

 

 そんなシゲの呟きは嘆きにも近いものだった。

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