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兵士とAIの異世界帰還録  作者: 古河新後
1章 仁義と破壊の魔王
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第58話 その層に居る太古

「世界の為に」


 そう言ってお母さんは供物になった。

 わたしもお母さんと同じように世界を良くしようとした。

 でも……世界は何も変わらない。わたしも気がついたら、見る影もなく痩せ細っていた。

 “釜”を作ったのは、本当にお腹が減ったから。

 道の隅でソレを置いて座っていれば気の向いた人がほんの少しだけ食べ物を入れてくれる。

 でも、釜が満たされる事は一度もなかった。

 そして、わたしは……死ぬ寸前で彼と出会った。


「! 貴女様が何故こんな所に!?」


 それは後に最初の『歪の魔王』となる男――フローリアンだった。






「君は……ルルベルか?」


 ファウストの問いかけに少女――ルルベルは肯定する様に頷く。


「てことは、ここを管理しているのは君?」


 すると、ルルベルは指を2本立てる。


「二回」


 そして、横を指差す。すると渦を巻くように何もない空間が開くとそこにはファウストの世界があった。


「帰る? それとも――」


 ルルベルは次に黒い球体を指差す。


「構う?」

「質問をいいか?」

「いいよ」


 感情が感じられないルルベルの口調はどこか事務的だった。


「黒い球体(これ)はディザロアか?」

「彼女は……自分の十字架に耐えられなかった」


 この中で自由に動くには、己の中にある罪に対して向かい合うことが出来るかどうかであるのだ。


「二回ってのは?」

「二回だけ……どっちかに還してあげる」

「人数は?」

「好きにしていい」


 『破壊の呪い』も消えた。元の世界に戻る障害は無くなったのだ。


「OK」


 ファウストは迷い無く、黒い球体へ近づく。


「いいの?」

「何がだ?」

「彼女に……声は届かない」


 その言葉にファウストは笑って答える。


「戦場で泣いてる子供がいるなら、側に居てやるのが兵士の役目だ」


 そう言ってファウストは黒い球体へ入って行く。






 SKA-4は戦域での戦闘行為を続けていた。

 部族を集結させようとするスーラン達は追撃する敵軍から距離を置く事しか出来ない。


「アリス、隊長が亜空間から戻ったら敵のど真ん中だ。それまでに地上を制圧したい」

『地上の援護を』


 アリスは集結しようとも敵軍の追撃に後退を続ける騎馬連隊をモニターに表示する。

 マークは機体旋回させ、低空で最前線を横から通過する様に飛行する。


「前線を焼く」


 機体の上部が開き、火炎榴弾(ナパーム)が吐き出された。

 SKA-4の通過した後が盛大に燃え上がると前線に炎の線(フレイムライン)を作り、敵軍の進行を妨げる。


『標的、四時』


 アリスはアマテラスに押し込まれているシャロンの援護を提案した。

 マークは上昇しながら射角が合わさった瞬間、『凍結(フローズン)ミサイル』をアマテラスに撃ち込む。


「ドラゴンを助けたなんて、誰も信じないな」


 炸裂と同時に拡散した冷気によってアマテラスの身体は大きく抉れた。

 その隙をついてシャロンが『破壊の風槍』でアマテラスを撃破する。


『ありがとう。助かったよ』

「うお?! 無線か!?」

『骨振動による通話です』

『僕はシャロン。その鉄の鳥すごい機動だね。どれだけ速くなる? ホンとどっちが速いかな?』

「喋れるのか……?」

『驚いた? 僕も驚いてるよ。クラウディアの許可無しに飛行するって結構非常識――』


 その時、警告が鳴り復活したアマテラスの熱線を避ける様にシャロンとSKA-4は左右に別れる。


「簡単には行かないと思ったが」


 アマテラスはSKA-4を狙って後方から熱線を撃ちながら追って来る。


「さっきよりも動きが良い」


 同時にアマテラスは騎馬連隊に対して熱波を放った。シャロンはソレの阻止に回ざる得ない。


「どこまで着いてこれる?」


 SKA-4は垂直に上昇。その後をアマテラスは追う。互いに速度を上げ、機体の出力は“70%”、“80%”、と限界に近づく。






 アマテラスはまだ追ってくる。

 その様は地上から見たら一筋の光が天に還る様に見えただろう。そして――


「なんだ?!」


 空の“ある層”に侵入した時にアマテラスがナニかに攻撃された。

 削られる様に部分部分が消滅すると、最後には形を維持できなくなり火の粉へと変わるがその火の粉さえも残さず消滅する。


『危険です。ただちに降下を』


 アリスは『竜族』を越えるエネルギー量と反応を類似したものを記録していた。


 ソレはSKA-4に影を落とす程に巨大な怪鳥である。

 大きく羽ばたく四つの翼。四つ眼の内の二つがSKA-4を見るがそちらには攻撃すること無く通過していく。


「……地球とは違うって改めて実感したぜ」


 肝を冷やしたマークは機体を降下させた。






 アーフィアは眷属(アマテラス)が完全消滅させられた事に驚きを隠せなかった。


「まさか……『太古(エンシェント)』?」


 となれば、鉄の鳥は“あの層”まで眷属(アマテラス)を引っ張って行ったのか――


「……ガリア。貴方の懸念は正しかったわ」


 この事に関しても後に友と話し合わなければならない。

 だが今はこの戦いに勝利することが最優先だ。今の状態で制御できる眷属は1体だけ。


「さぁ、アナタの力を存分に奮いなさい。『スサノオ』」


 アーフィアの言葉と共に亜空間が黒く染まり、そこから新たな眷属が出てきた――

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