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兵士とAIの異世界帰還録  作者: 古河新後
1章 仁義と破壊の魔王
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第53話 戦場の魔王

 シャロンはアマテラスと空中戦にて相対していた。

 炎に包まれる身体。舞う度に落ちる粉塵は他の物質に触れれば瞬く間に発火させる。

 存在の定義が不明な魔物。しかし、それ以上にシャロンには疑問に思うことがあった。


『なんで、空を飛べる?』


 この世界(フリーレリア)において、飛行する為には『雲の魔王』が持つ特殊な魔力を必要とする。

 その為、空を飛ぶには『雲の魔王』との契約が必要なのだ。


 しかし、アマテラスからは魔力による痕跡を一切感じない。


『『ルルベルの釜』は、無尽蔵のエネルギーを生むってガリアの爺ちゃんが言ってたけど――』


 昔、封印の更新に来ていた『未来視の魔王』と偶然出会った時にその話を聞いていた。

 そして『歪の魔王』は世界を滅ぼす四体の魔物を創り出したと――


『これがその内の一体だとしたら』


 アマテラスが飛び回るだけで世界が焼かれる。『雲の魔王』による飛行制限もかからないのなら、この場で逃がすと大変な事になる。


『破壊の風槍(ガラーム)!』


 シャロンは魔力を溜め、己が持つ“破壊”の魔力を混ぜた風の槍を射出しアマテラスを貫く。

 『破壊の風槍』によって、アマテラスの身体は抉れて二つに分かれ、燃え消える様に落下していく。

 しかし『ルルベルの釜』のエネルギーによって、身体は再び再構築された。


『それって……卑怯じゃない?』


 それどころか、先程よりも巨大になり、炎の色もオレンジから青に変わっている。

 吐き出される熱線はシャロンの姿を覆う程に強大なモノになる。


『ぐぅぅ……』


 『風の壁(カラーン)』にて受け止め、熱を散らすが、止まらない放射に次第に鱗が焼かれていく。






「くっ……」

「流石に、これは予想出来ねぇな」


 ファウストは爆発の収まった戦場でディザロアを助け起こし、改めて周囲を見る。

 敵軍の内部まで入り込んでいた騎馬連隊は敵兵器の爆発によって前衛は機能を失っていた。

 すると、より強大になったアマテラスがシャロンへ向けて夜を照らす程の熱線を吐き出した。


「シャロン様の負担を減らす! 一旦下がり隊を再編。『風破』にて再突撃するぞ!」


 偶然にも軽傷で済んだスーランは全体の状況を把握しつつ、取れる最善手を大隊に告げる。

 自分たちを粉塵から護る“風膜”はシャロンが自らの魔力で施しているのだ。一度、最前線から離れる必要があると判断する。


「退く様だ」

「ここにいても足手まといにしかならねぇかもな」


 ファウストとディザロアも各々の探知能力で騎馬連隊の動きを察する。

 しかし、『ルルベルの釜』より発生する敵軍が再び戦線を上げてくる。


「上手くいかないってのはわかるけどな……」


 勝利への活路。シャロンを抑えられている以上、このまま戦えばジリ貧にしかならない。


「アリス、制限解除も視野に入れる」

『……了解』


 空の敵に対して自分たちは援護する術を持たない。

 無限の軍勢に取られた制空権。

 この時点で負けだ。引き際を考えなければ――


「ディザロア、お前は生き延びる事を考えろよ?」

「いきなりなんだ?」


 怪訝そうな顔をするディザロアにファウストは、フッと笑う。

 その時、だった――


「――間近で見ると……益々変ね」


 二人の間を遮るようにアーフィアが現れる。

 亜空間を使った短距離転移。故にアリスもディザロアも出現を感知出来なかった。


 アーフィアは両手を二人にかざすと引き離す様に衝撃波を放つ。


「何者だ?!」

「! おいおい……冗談もいい所だ」


 ファウストとディザロアは突如として現れたアーフィアに驚きの眼を向ける。


「私は『歪の魔王』アーフィア」


 正装を身に纏うアーフィアは『ルルベルの釜』を添える様に持つ。

 二人は目の前のアーフィアがこの戦いの最終目標であると瞬時に察した。


「『歪の魔王』? それはハン組長に倒されたハズだ」

「そんなことはどうでも良いわ。今、ここに私は居るでしょう?」


 ファウストは人形状態のライザーハンと同等の圧をアーフィアから感じて冷や汗が流れる。


「驚いたわ。まさか……アナタの存在を世界が認めたなんて」


 アーフィアは異物を見るような眼でディザロアを見る。


「……何が言いたい?」

「偶然の産物? いいえ……そう考えると辻褄が遇わない……意識なのかしら? 一度全てを」


 ディザロアは敵であると認識し、魔剣をアーフィアに振り下ろす。

 ファウストも千載一遇の好機として『ルルベルの釜』を奪う為に接近する。


「何をしているの?」


 魔剣の振り下ろしは指二本で止め、ファウストには近くのATT-2に砲撃させて接近を阻害する。


「ぐっ……」

「ファウスト!」

「私を前に余所見?」


 アーフィアはディザロアを魔力のみで浮かせるとそのまま地面に叩きつけた。


「がっ……」

「アレはマズイな」


 ファウストは敵の砲撃を振り切り、アーフィアへ接近。自分を巻き込む距離では撃つことは出来ないハズ――


 その時、アリスが上空からの熱源反応を検知。シャロンを狙うアマテラスの熱線が流れて目の前を凪ぐように焼いた。


「チィ!」


 咄嗟に足を止める。

 ディザロアはアーフィアの魔力により、無理やり押さえつけられ、上手く息が吸えない。


「くっ!」


 押さえつけられつつも魔剣を振るうが、その刃が届く前に意識を失った。


「殺さないわ。何が起こるかわからないもの」


 アーフィアはディザロアの身体を浮かせると、亜空間を開き彼女を放り込む。


「寿命で死ぬまで夢の中にいなさい」

「そいつは、許せねぇな」


 ディザロアの入れられた亜空間の入り口にファウストも飛び込もうと接近する。

 しかし、目の前に別の亜空間が開かれ、別の場所へ転移された。


「戦いを終わりにしましょう」

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