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兵士とAIの異世界帰還録  作者: 古河新後
1章 仁義と破壊の魔王
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第34話 因縁

 場は硬直していた。

 サハン城の広場に残った戦闘力は二分され、どちらが優れているのかを正確に導き出すには並大抵の洞察力では不可能。


 『人型強化装甲(アサルトフレーム)』がニ機。竜が1体。『角有族』の女剣士が一人。

 素人目には竜を保持する側が有利と言えよう。しかし、場に居る者の正体を知れば戦力は一気に傾くのである。


 竜と不確定者(アンノウン)は女剣士が何者なのかを知っていた。故に――


「っ!」


 突風が再び発生する。竜が翼を広げ、巨体を浮かび上がらせた。


「お前は逃がさねぇぞ」


 ファウストはアンノウンから目を離さない。少しでも迂闊な動きをすれば全能力を使って捉える準備は出来ている。


『……フフ』


 アンノウンの姿が消えた。『人型強化装甲(アサルトフレーム)』の『EMP』の効果時間が切れたのである。


「逃がさねぇって言ってるだろ」


 それでも、ファウストには見えていた。

 『人型強化装甲』には熱感知視界と振動検知による位置情報の把握機能が存在する。

 つまり『人型強化装甲』を前に『光学迷彩』は機能しない。


「避けろ! ファウスト!」


 ディザロアの声とアリスの警告(アラート)はほぼ同時だった。

 最初に巻き上がった時に広場にあった露店などの物資が今になって降ってきたのである。


「どんだけ高い所にあったんだよ!」


 回避行動に専念するファウストに対し、アンノウンは一度身体を(たわ)めた。

 そして、『人型強化装甲』の跳躍力を駆使して高く跳び上がる。

 竜はタイミングを合わせる様に宙に浮いたアンノウンを(さら)った。


“……”


 竜は一度、自分を見上げるサハンを見るが意に返さず、そのまま彼方へ飛行していく。






「……やれやれ、初戦(ファーストコンタクト)は失敗か」

『申し訳ありません。『EMP』で全機能を停止出来れば良かったのですが……』

「『人型強化装甲』は仕方ない。アレのプロテクトも他の兵器よりも群を抜いている。お前じゃなきゃ阻害すらも出来なかっただろうよ」


 故に元の世界ならまだしも、こちらの世界で奪われる事は無いと思っていた。


「だが、綻びは見えたな。ヤツの性能(ステータス)はどうだった?」

『本来の機能の三割程しか確認出来ませんでした。故意に使わなかった可能性はありますが』

「こっちの相殺に驚いてた感じだったな。ヤツは恐らく一人だ。AIは積んでない」


 『人型強化装甲』はアリスの補佐があって初めて100%機能する。生物の思考では能力を引き出すには限界があるのだ。


「捕獲は行けると思ったんだがな。まぁ、ノート博士も対竜戦闘は想定外だろうよ」

『ワタシは大尉の技量あっての生存だと思います』

「嬉しい事言ってくれるね」

「随分と余裕だな」


 ディザロアは『オーバーデス』をペンダントに戻し、二人の会話に入る。


「とりあえず、後は追える。アリスがヤツの反応を記録したから、一定の範囲に入れば検知出来る」

「具体的には?」

「飛んで行った方向を目指して痕跡を辿る。アレだけデカイ竜だ。目撃情報も着地の痕跡も隠すのは無理だろう」

「ある程度の計画は決まったか。移動か?」

「その前に情報を合わせるか」


 可能性は繋がった。今は焦って追いかけるよりも少し情報を精査する方が近道になるだろう。


「彼の素性も気になるしな」


 ファウストは竜の飛んでいった方向を見つめるサハンへ視線を向ける。

 しかし、彼を見たディザロアは驚きの眼を向けた。


「これはどう言う事だ?」


 彼女の声にサハンは振り向かずに応じる。


「やっぱり、君はロアか」

「知り合いか?」


 ファウストの疑問にディザロアは彼の正体を明かした。

 それを聞いたファウストは、額に手を当てて、


「色々と説明して欲しいものだな」


 サハンの情報が今回の真意に迫れると確信する。






 ダーレンはサハン城外で待機していた私兵と合流し、本隊のある地点まで馬車を走らせていた。


「ダーレン様、ドレイク様が『楔』を使いました」

「なに?!」


 馬車を降りて早々に受けた報告に目くじらを立てる。


「『(スパイク)』はまだ試作だ! 誰が許可を出した!?」

「それが……知らぬうちに持ち出されていたのです。気づいた時には置き手紙が」


 ダーレンは差し出される手紙を取ると内容を見る。


 “ちょっと借りるよん♪”


 わなわなと震えながら手紙を握る手に力が入る。『楔』は極秘中の極秘だ。現在は『竜族』に対しての効果を実験中なのである。


「総統閣下の意向を無視しおって……」

「戻って来ました!」


 サハン城から草原の駐屯地へ巨竜と、その背に乗るアンノウンが飛行してくる。

 そして、そのまま上空を通り過ぎて行った。


「……」

「だ、ダーレン様……」


 ダーレンは怒りを通り越して言葉が見つからない。

 

「ドレイク様から連絡です!」

「貸せ!」


 通信機兵から受話器を受けとる。


「貴様ァ! どう言う事だ! 貴様の行動は閣下の意向を全て破綻させる行為に等しいのだぞ! しかも『竜殺し』を折られ、失敗しただと?!」


 怒りの収まらないダーレンだが、次にはその怒りが消え去る程の情報を受けとる。


「……それは間違いなく『人型強化装甲』だったのか? ……そうか、わかった。先に“釜”の元に行け。後に合流する」


 ダーレンは受話器を置くと配下に命令を下した。


「これより“釜”を総統閣下の元へ持ち帰る。ここは撤収だ!」

「ダーレン様、『騎馬連隊』にはどの様に対応しましょう?」

「抵抗するなら容赦はするな。未だに剣と弓を持つ旧時代の者共に『機兵戦隊』の力を見せてやれ」

「了解。総員『魔装甲』を装備! 撤収班は荷物を運び、国境の部隊と合流! 戦闘班は“釜”に向かう!」


 ダーレンは諦めていた因縁が再燃した事に喜びを感じている。


「ノート・ブランドン。貴様よりもこのダーレン・スキンの方が優れていると証明してくれるわ!」

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