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異世界単騎特攻  作者: 桐之霧ノ助
起死回生の第三章
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準備

 俺はティファが雑務室を出て行った後、朝になるまで作戦を練った。

 俺の足りない頭だから良く出来た作戦ではないだろうが、何も考えずに動くよりはマシである。

 まず、記録石を奪い取る。

 何事もなく奪い取れればいいが、アレはこの部隊の中にある物の中で最重要である。きっとセキュリティもかなりキツイのだろう。最悪、騒ぎになっても構わない。誰かが駆けつけてくる前に逃げ出してしまえば、『空躍(くうやく)』で行方を眩ますことが出来る。

 そして、行方を眩ます前にティファを回収しなければならない。昼間は仕事を抜け出さなければならないので隠密的にも夜の方が良いだろう。

 そしてまずはフェンリルだ。

 一度行ったことがあるのでイメージすれば大体の場所には行けるだろう。だが敵情視察の意味で王都本拠地からは少し離れたところに拠点を持ちたい。ティファを守るためにも戦場に直接彼女を連れていくわけにはいかない。これは三つの覚悟の一つだ。


 俺は三つの覚悟を立てた。守らなければならない制限と言っても良い。

 一つ目、何者にも優先して周りにある全ての者を守る。

 俺の敵はフェンリル国の国民でも、プロメテウス国の国民でもない。身の回りに居る誰かへの危害を加えようとするものが俺の敵である。だからその敵を排除する。例えそれがどんなものであろうが立ち向かう。立ち向かわずに全てを救えるならそちらの方が良い。

 二つ目は、使いこなせる範囲しか『鬼化』を使わない。

 あの時、鬼化を解除しようと思っても出来なかった。鬼化を解除するためには赤目を潰さなければならないのかは分からない。だが、両腕発動した時点で今の自分には戻すことが出来ないということは分かっている。

 俺の意識が戻ってから、爪の先を鬼化してみた。爪を切れば元に戻すことが出来ると思い慎重にやってみたのだ。その時は元に戻すことが出来た。

 俺は体を元に戻せる感覚を掴んだ。そのギリギリを追求してみたが、指先までが限界だった。

 3つ目は世界を救うこと。

 これは俺に課せられた使命だ。あのヤト爺ですら成しえなかった事をする。1つ目と2つ目が出来た上で世界を救う。

 絶対条件は如何なる状況にも対応するために、俺が生存し続けることである。


 記録石を奪い取ったあとは、フェンリル国へ侵入。

 存在や目的を隠しながら、王を強襲し3つの石の一つである地動石を回収する。

 3つ目の石ももちろん回収する。確か生命石と言っただっただろうか。手順はさほど変わらないだろう。

 プロメテウスに関してはまだ謎が多い。行き当たりばったりになるかもしれないが、そこは仕方がないだろう。元より覚悟は出来ている。


 誰にも伝えないのが一番いい方法ではあるのかもしれない。だが、最低限伝えておかなければいけない人間もいるだろう。

 卓男には一応明日伝えておこう。多分卓男なら誰にも言わないだろうしベルモットにも口封じしてくれるに違いない。

 決行は明日の夜だ。決めたら早い方が良い。先に伸ばせば伸ばすほど計画が漏れやすくなる。特に俺の場合は口が緩い。

 明日は身支度と卓男にこの事を伝え、石を奪って逃げる!


 --------------------


「なら拙者も行くでござるよ。」

「私も着いていこうかしら。」

「えぇ......」


 卓男は何か言い出すかもしれないと思っていたが、まさか一緒に来るとは思わなかった。それにベルモットまで同調するとも思っていなかった。


「どうせこの国にいたって田熊氏が居ないのであれば意味が無いでござる。なら一緒に行くでござる。」

「正気か?」

「それは拙者に聞く前に自分の胸に手を当てて考えるでござるよ。」


 そう言われたら返しようがない。勝てる確証など無いのだから、無謀な挑戦である。


「お前達を危険に晒すことになる。」

「それはそうでござるが、田熊氏に比べれば微々たるものでござる。」

「大体、お前達を連れていく手段がない。」

「田熊氏が拙者達を担ぎ上げれば良いだけのことでござろう。田熊氏ならそれは出来るでござる。それにティファ氏も行くなら一人や二人増えても問題ないのでは?」

「......ティファが行くことは話してないはずだぞ。」

「あー......それは。」

「私が話したのよ。」


 聞き覚えのあるドアの音だ。

 せめて聞かれたくない話をしている時ぐらいゆっくり扉を開けて欲しいものである。


「他に誰も聞かれてないだろうな。」

「普通はそれも管理しておくべきことなのよ?......大丈夫よ。こんなところに現れる人なんて普通は居ないわ。」

「あと他には誰にも、」

「話してないわよ。あんたなら多分卓男に伝えると思って話しておいたのよ。」

「それはどうも。」


 出来れば俺の口から明かしたかったのだが、卓男には心の整理をする時間があったわけである。ティファはエスパーか何かなのだろうか。


「まぁ、あんたの考えることぐらい分かるわよ。突拍子もない発言を除けばね。」

「本当にエスパーじゃないのか?」


 思わずそう返答してしまった。


 卓男とベルモットが着いてくるのはデメリットとメリットで言えばメリットの方が大きい。

 デメリットとしては守らなければいけない対象が増えること、食いぶちが増えること、大所帯になること。多分この程度だろう。

 メリットとしては武器が作ってもらえることである。武器の他にも色々なものを作ってもらえるかもしれない。俺にはどうやっても出来ないことである。

 ベルモットは国の案内も出来るかもしれない。


「田熊氏のお役に立てるのであれば、引こずられてでも着いていくでござるよ!」


 デュフフwwと気持ち悪い笑みを浮かべながら卓男が手を差し出してくる。


「私が一人でここに居るのもおかしいでしょう。なら貴方達に着いていくわよ。もっともらしい理由を言えと言うならいくらでも出てくるわ。」


 そう言いながらベルモットは卓男と反対の手を差し出した。

 口下手な俺に残された選択肢は二人の手を同時に握り返すことだけだった。


「よろしくお願いするわ。」

「田熊氏、これからも何卒ご贔屓に。」

「......ああ、よろしく。」


 俺は何だか詐欺師に騙されたような感覚に陥ったが、気のせいだということにした。


 --------------------


 そしてその夜。

 卓男に鍵を開けてもらっていた記録石がある部屋に忍び込む。

 ドアを音がしないように開けた。

 目の前には水晶玉。

 それと――


「ボルドー団長。」

「久しぶりだな。田熊。まさかこんなところで会うとは思ってもみなかった。」


 俺はこの世界に来て、魔法の強大さとトラウマを植え付けた人物に、一番会いたくない場所で出会った。

次回、ボルドー隊長vs田熊です!

圧倒的な力の差でねじ伏せられた相手に勝つことはできるのか!?鬼化は指先以外使えませんよ!!

でも負けることは許されない。

田熊、第2のリベンジマッチが始まります!

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