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あの日、あのとき  作者: 佐藤ませーろ


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口の端

 左下の奥歯の隙間に食べ物が挟まるようになった。

 取ろうとしたがどうやっても取れなかった。

 そのうち気にも留めなくなった。


 ひと月経った頃、歯が浮くような違和感を覚えた。

 痛むことはなかったが塩梅はよくなかった。

 耐えきれず、近所の歯科クリニックに予約を入れた。


「虫歯ですね。ほら、ここに穴が」

 手渡された手鏡に映る奥歯の穴に探針が出入りしていた。


「麻酔をかけます」

 チクッと軽い痛みの後、唇がしびれてきた。


「口をゆすいでください」

 水を口に含んで軽くうがいした。


 口の端から水がぴゅーっと吹き出した。



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