悪魔
人影はピクリとも動かず、ただじっとその場に立ち尽くしていた。俺は目がチカチカしていて、まだ相手の姿をしっかりと、とらえられないでいる。やっと目が暗闇に慣れたところでようやく相手の姿を視認できた。
「人……間?」
目の前には一人の少女が凛と立っていた。その立ち姿は大人のそれと似ている。顔立ちは整っていて、大人びている。だが総合的に見ると、高校生くらいに見える。悪魔と人間との老化の違いがあるというのが定番なので、その少女は実は俺よりも年上なのかもしれない。
「私はイブリース・ア・シャイターン。イブとお呼びください、マスター」
マスター? あ、俺のことか。この歳になって、マスターと呼ばれることがあるとは。小学校のごっこ遊び以来である。なんだかムズ痒い感じだ。
「そのマスターってのやめてくれないか?普通に名前でいいよ。えーと、イブ」
「はい、分かりました。慎哉様」
慎哉、そう呼ばれただけなのにドキッとさせりてしまった。でも、様付けはないな。まぁ、マスターよりはマシか。美しく透き通る声。目の前の少女はどう見ても人間で、悪魔には見えない。黒色の髪は腰の辺りまで伸びており、光沢を放っている。美少女。その言葉が当てはまるような少女が俺のパートナーなのだ。
そういえば、俺が悪魔と契約した理由をまだ聞いてなかったな。そんな理由はファンタジー世界なら、闘うためなのだろうが、この世界ではどうなのだろう。
「それでは早速、ディールをしていただきましょう」
櫻井は俺とイブに触れると、また新たな場所に連れて来られた。そこは先程も来た街のど真ん中である。目の前には人と悪魔が立っており、俺を見据えている。俺がそれを悪魔と判断したのは容姿が人のそれとは極端に違っていたからだ。
その悪魔はあまりにも大きすぎる。三階建ての建物並みの大きさがある。いわば巨人だ。全身は毛で覆われており、顔は人のものではなく、牛のような顔になっている。よく神話で出てくるようなミノタウロスや牛魔王のような感じだ。やはり、武器は斧である。
「それではディールの説明をします。心臓部にターゲットのマークがあると思います。そこに攻撃を加えた人が勝者となります。攻撃の方法は問いません。剣で斬るのもよし、銃で撃つのもよし、素手で殴るのもよし。当てたもの全てを攻撃と致しますので、威力によって勝敗が決まるわけではございません。制限時間は10分です。それではディール・スタート」




