その52~雪雄さんのメガネ…~
夜の屋上は、思っていたより静かだった。
昼間のキャラランドとはまるで別の顔をしているみたいで、
吹き抜ける風が、頭の中を少しだけ整理してくれる。
ぼくの隣には雪雄さん。
「夜風が気持ちいいですね。昼とは全然違います」とぼく
そう言うと、
手すりに腕を置いていた雪雄さんが、少し空を見上げた。
「はい。星が見えると……心が落ち着きますね」
たしかに。
レッスンのことや、次のステージのこと、
普段は頭の中が騒がしいのに、今は不思議なくらい静かだった。
「雪雄さんは、よく夜の屋上に来るんですか」
「たまに、ですね。静かで……考えごとをするのに、ちょうどいいんです」
「ぼくは練習で頭がいっぱいで……。こういう時間、大事ですね」
言葉にしてみて、初めて気づいた。
止まる時間を、ちゃんと持てていなかったんだ。
「翔太くんは努力家です」
雪雄さんが、ゆっくりと言う。
「でも、無理をすると続かない。
だから、時には立ち止まって、未来を見てほしいです」
「僕は昔からヒーローに憧れていました。
誰かを守れる存在になりたい。ずっと、そう思って生きてきました」
静かで穏やかな雪雄さんの胸の奥に、ある強い想いが伝わってくる。
「アイドルという道は少し違いますが……
“人の心を救う”という意味では、近いのかもしれませんね」
「雪雄さんらしいですね」
ぼくは、少しだけ笑った。
「ぼくは、ただ“歌いたい”って気持ちだけで、ここに来ました」
「その“純粋さ”が、強さになりますよ」
雪雄さんは、こちらを見て、はっきりと言った。
「翔太くんの歌には、人の心を動かす力がある。
だから――未来は、きっと輝きます」
「一緒に夢を叶えましょう」
「はい。……約束です」
夜空の向こうで、月がこちらを見守っている気がした。
少し間が空いて、
以前から気になっていたことをどうしても聞きたくなった。
「あ、あの……ところで、雪雄さん」
「なんでしょう?」
「以前から、ずっと気になっていたことを聞いてもいいですか?」
「はい」
「確か、雪雄さん……
キャラランドGENSEKIオーディションの時、時々メガネ、かけてましたよね?」
一瞬、雪雄さんが目を瞬かせた。
「La♪Ra・RISE!が結成されてから、
メガネ姿の雪雄さん、見ていないような気がして……」
「……気づいてました?」
少し照れたように笑ってから、首を振る。
「コンタクトにしたんですか?」
「いいえ。コンタクトはつけていません」
静かに続ける。
「実は、La♪Ra・RISE!に参加してからは、メガネを控えているんです」
「え……どうしてですか?」
「だって、アイドルやヒーローがメガネをかけてたら、変でしょ?」
一瞬、言葉に詰まってから、ぼくは首を横に振った。
「そんなことないです!」
思ったより、声が大きくなった。
「アイドルだって、ヒーローだって、メガネをかけていいと思います!」
雪雄さんは、少し困ったように笑った。
「そうですかね……
正直、あまり皆さんの顔も見えていなくて……」
風が、静かに吹く。
「メガネがかけられると、とても助かります」
「だったら……」
ぼくは、まっすぐ言った。
「メガネをかけて、ぼくたちが成長していく姿を、しっかりと見てください!」
雪雄さんは、しばらく黙ってから、
ゆっくりうなずいた。
「……そうですね」
そして、穏やかに微笑む。
「これからは、メガネをかけるようにします」
「そして、みなさんや、自分自身の成長や、ファンの皆さんを、しっかりと見ていきます!」
その言葉を聞いて、
胸の奥が、少し温かくなった。
夜風は、さっきより少しだけ優しかった。
*La♪Ra・RISE!キャラクター原案者*
英賀田 雪雄 :日花子
根古島 カノン :日花子
京極 真秀 :茶ばんだライス
折原 千鶴 :夏也 すみ
狭山 那音 :ギフカデ
Daz・Garcia :HUNGRY
赤河 辰煌 :ウニヲ
佐藤 翔太 :niko




