第2話「傭兵の青年と奴隷少女2」
第2話「傭兵の青年と奴隷少女2」
セルウァーはフード付きの外套をアモルに着せると、宿から出て商店通りへ向かおうとしたが、そこで一つ問題が発生した。
アモルがふらふらと歩いていた事だった。
「大丈夫か?」
セルウァーがそう問いかけるが、アモルは「大丈夫です」と答えるだけだった。明らかに大丈夫ではなかった。
「う~ん、どうしたものか。服とかもどうにかしたいって思ってたんだけどな」
今、アモルが来ているのは診療所で出された簡易的な服だった。だから、どうにかしてあげたいと考えていたのだ。
それに一番の問題はアモルの髪だろう。
セルウァーはそう考えながらも、アモルの姿を改めて見てしまう。
肩甲骨辺りまで伸びた綺麗な銀髪に、垂れ目がちな蒼色の眸に、小ぶりな桜色の唇。顔も小顔で全体的に整っている印象を与えられていた。美少女とはこう言った少女のことを言うのではなないだろうかと、セルウァーは思ってしまう。しかし、それは良い意味でも悪い意味でも目立ってしまうということで、この少女を追っている追っ手たちにもすぐに見つかってしまうということだった。
これもどうにかしないとな。見つかったら元も子もない状態になってしまうのだから。
セルウァーはそこまで考えると、アモルに向かって手を差し出した。
「嫌かもしれないけど、手を繋いで行こう。これからのことを考えると、すぐさまどうにかしないといけない問題が山積みだからな」
それに対してアモルは、セルウァーの手をじっと見て固まっていた。
「やっぱ嫌だったよな」
セルウァーのその言葉に、アモルは首を横に振った。
「嫌ではないんです。ただ戸惑ってしまって。奴隷のわたしが主人さまの手を握るなんて、滅相もないことだと思ってしまって」
アモルの言葉に、俺は苦笑を浮かべてしまう。
「そんなことを気にする必要はないんだよ。だって、アモルはもう奴隷なんかじゃないんだから。って言ってもすぐには受け入れられないことだと思う。だから、これから少しずつ受け入れて行ってくれれば良いって俺は思ってる。だからさ、今はそんなことは忘れて飯を食べに行こう。お腹空いたんだろ?」
アモルは恥ずかしそうに、首を縦に振った。
セルウァーはそんなアモルの手を握って、ふらつかないように注意しながら、商店通りに向かうために宿を後にした。
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セルウァーは取りあえず、アモルを服屋に連れて行った。この状態で外を歩かせるわけにもいかなかったからだ。
そこで白と青を基調とした上下を購入する。そして髪の毛は茶色い髪のウィッグを付けて銀髪を誤魔化すことにする。そして、足首に付いてしまった枷の痕の痣は靴下を履くことによって誤魔化せる。そして、そこに靴を履けば完全に元・奴隷とは思わないだろう。
まあ、完全解放されたわけではないので、まだ奴隷と言われれば奴隷なのだが。
そこの所もしっかりと考えていかないとな。
セルウァーはそう考えながらも、目の前に立っているアモルの姿を見た。着慣れない服を着ていて落ち着かないのか、アモルは顔を真っ赤に染めてもじもじとしていた。
「大丈夫、ちゃんと似合っててかわいいぞ。それに時期に慣れてくると思うし」
セルウァーの言葉に、アモルはさらに顔を真っ赤に染めあげるのだった。
そんなアモルの姿をセルウァーは不思議そうに眺めているのだった。
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アモルのカモフラージュを終えた後、セルウァーとアモルは近くにあった酒場に入ることにする。
しかし、そこでも問題が発生することになった。この街【ターソン】は奴隷制度を認めている国だ。なので、街中でもそう言った者が歩いていることは多々ある。それを見たアモルが怯え立ちすくんでしまい、なかなか中に入ることが出来なかったのだ。
やっとの思いで中に入り、そこで適当に料理を頼んで食べることにしたのだ。
「アモル、気にしなくていいんだからな。この街は奴隷制度を認めている国だ。この街じゃあれが普通だ。誰も気に留める者がいないほどに普通なんだよ。だから、アモルも気にしないでほしい」
彼女には酷な話だろうなっとセルウァー自身も思ってはいたが、そう言ってやる他になかった。
そんなこんなで店員によって頼んでいた料理が運ばれて来た。
目の前に並べられた料理の数々を見て、アモルは眸を輝かせて料理を眺めている。
きっと、奴隷時代はろくなモノも口に出来なかったんだろう。それに、奴隷が一緒にこうして食卓を囲むこともなかったから、戸惑っているんだろうな。
セルウァーはどうしたものかと頭を悩ませてしまうが、今やることは一つだなっと考え直した。
「食べていいんだぞ」
セルウァーの言葉に、アモルは驚いた表情を浮かべた。しかし、それでもアモルは料理に手と付けようとはしなかった。
まったく気にしなくても良いと言うのに。そう言えば、服屋で服を買ってやった時も、奴隷のわたしなんかにとか言っていたっけ。やっぱり、なおさらアモルを放ってはおけないな。
セルウァーは、中々食べようとしないアモルに「ほら」と料理を勧めることにする。アモルはアモルでそれでも食べようとはしなかったが、体は正直なようで、再びお腹の虫が盛大に響き渡った。
「ほら、お腹空いてるんだろ。食べていいんだぞ」
セルウァーはもう一度、アモルのことを促した。すると、アモルは恐る恐ると言った感じで、目の前の料理を口にした。その途端にアモルの表情が破顔する。
一口食べる度に、アモルは美味しそうな幸せそうな表情で料理を食べ進めていた。それは見ているこっちまでが幸せそうな気持になってくるそんな表情だった。
セルウァーも、そんなアモルの姿を見ながら食事を進めていく。
「あっそうだ。アモル、少し良いか」
「はい」
「ここで食事を終えたらすぐにでもこの街を出ようと思うんだ。そうしたら、ずっと西の街に行こうと思うんだ。そこには俺の知り合いがいるし、何よりもそこの街は奴隷制度反対の色が強い街だ。だから、アモルも住みやすい街だと思うんだ。だからさ、アモルも一緒にその西の街に行かないか?」
セルウァーの言葉に、アモルは驚きで両目を見開いている。
「そこなら、アモルもきっと安心して暮らせると思うんだ」
セルウァーは西の街【バルジャン】のことを思いだしながら、アモルにそう提案した。
この街にいたらアモルは、追っ手に怯えながら暮らすことになる。それに身寄りだってないだろう。
それに比べて西の街【バルジャン】に行けば、その心配も軽減される。だからこその提案だった。
アモルは迷うそぶりを見せている。そして、しばらく悩んだ後、アモルは答えを出そうとしたが、言葉が出てくることはなかった。それどころか、アモルの肩は震えている。そのことにセルウァーは気が付いていた。そして、アモルが震えている理由にも心当たりがあった。
きっと今入って来た男の二人組がアモルを追っていた追っ手なのだろう。明らかにアモルはその二人組を見て固まっていたような気がしたから。
「アモル、あれが……」
セルウァーが声を潜めて、アモルにそう問いかけると、アモルはこくりと頷いた。
やっぱりか。
セルウァーはため息を飲み込みながら、その二人組の様子を注意深く観察していく。その二人組は、どこかきょろきょろとして何かを探しているようだった。
明らかにこの酒場に食事を食べに来たわけではないことが伺える。やがて、その男たちは二手に分かれて、次々へとテーブルに座る人の顔を覗いていく。
完全にアモルことを探している!
セルウァーはそう答えを出すと、そっとアモルに囁きかける。
「アモル、奴らが出てくまでここで持ち堪えるぞ。それに、今のアモルは色々と偽装してるから奴らが気が付くはずはない。だから、ここは耐えてくれ」
セルウァーの言葉にアモルは頷くが、血の気が失せて今にも倒れそうだった。
そうしている間にも、男の一人がセルウァーとアモルが座っているテーブルに近付いてきている。
セルウァーとアモルの間に緊張が走る。そして、二人の所に来た男はそのままアモルのことを覗き込んだ。
まずいかッ⁉
セルウァーは背中に冷や汗が流れる感覚に襲われる。
目の前に座るアモルも、セルウァーと似たような状況になっていた。いや、当事者なためその緊張はおいそれと計り知れるものではなかった。
「似ているが違うか」
男はポツリと溢すと、テーブルから立ち去ると他のテーブルに向かった。時間にして数分だっただろうか。
男たちは一通り見て回ると酒場を後にしていった。
セルウァーとアモルは酒場から男たちが出て行くのを見送ると、溜めていた息を吐き出した。
何とか乗り切った。しかし、危なかった。
セルウァーはあんな間近で見られるとは思ってなかったので、やっぱり、色々と工夫を凝らしておいて良かったと心の底から思ってしまう。
アモルはアモルで気が抜けたようにイスの背もたれに寄りかかっている。
そりゃあ、ああもなるわな。アモルはアモルでばれるんじゃないかって気が気じゃなかっただろうし。
やっぱり、早急に行動を起こすべきだな。
「ほら、アモル。残りも早く食べちゃおうぜ」
「はっはい!」
セルウァーがそう促すと、アモルは慌てて料理を頬張っている。料理を食べるアモルの姿はどこまでも幸せそうだった。
セルウァーはそんな姿を見て、セルウァーも幸せな気持ちになるのだった。
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酒場での食事を終えた二人は、すぐさま行動に移るために、商店通りにある道具屋や武器屋で旅路の支度を整えていく。
この街【ターソン】から、目的の街【バルジャン】までは、どんなに上手く馬車を乗り継いだとしても、一週間ほどはかかってしまう旅路になるのだ。なので、ここで準備を怠ると、無事に【バルジャン】までは辿りつけなくなってしまうのだ。そんなことは何としても避けたいところだった。
セルウァーは自身の装備を見て、特に問題ないと判断する。アモルの方も先ほどの服屋でこのことを想定した服とブーツに、それに魔獣や魔物避けの効果が付いている外套を買い与えている。これだけの装備なら厳しい旅路と言う訳でもないので、大丈夫だろうとセルウァーは判断した。
「よし、これで準備は完了だな。アモルはどうだ?」
「わっわたしも大丈夫です!」
アモルが慌ててリュックを背負う姿を見て、セルウァーは思わず笑みを零してしまう。
「アモル、焦らなくても大丈夫だよ」
セルウァーが見かねて、アモルにそう声をかけると、アモルはアモルで恥ずかしそうに笑っている。
セルウァーも笑い返すと、自身の荷物を改めて確認しておく。
長い旅路になりそうだと、荷物を確認しながらセルウァーは思っていた。
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