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18/30

第十七部最終回 発掘!・前編

※今まで嘘だらけの本作品ですがこの部分は本当です。

この回は前後編かつ、他の回と比べてシリアスな回です。(暴走したギャグアニメにたまーにありがちなあれです)

そういった雰囲気が苦手な方は閲覧をご遠慮ください。

「てえへんだ~っ! てえへんだ~っ! 助けとくれ~!」


伊勢海の商店街で、助けを求める声を上げる中年男性!


「やかましいッ! 誰が底辺だッッッッッッ!!」


開幕劣等感を爆発させてそれに答える青年は高田浩二!

35歳のこの物語の主人公である!


「違うよ高田。彼は『大変だ』って言っているのさ。決して高田を底辺以下の存在意義の無い最底辺作者呼ばわりしているわけじゃない」


「何ッ? 二藤はこの田舎者の言葉が解るのか!?」


「うん、完璧に理解できるよ。僕は日本語と田舎語の二カ国語を完璧に話せるんだ。二刀流だからね」


(クソ! 日本語すらまともに話せない俺に対する当てつけかッ!)


キレる高田を無視して二藤が中年男性に質問する!


「それで、一体何が起こったんです?」


「遭難だ~っ! 遭難だよ~っ!」





「訳のわからねえ相槌をうつんじゃねえッッッッッッッ!」


繰り出される音速の高田の拳を静止する手!

背後から登場したのは金髪騎士鎧美女のテンプレのヤスである!


「落ち着いてください高田さん! とにかくこの人の話を全部聞いてみましょう!」


「クソッ! しょうがねえな……おいオッサン! 要点だけ掻い摘まんでとっとと話せ!」


「実はオラぁ『スコッパー』なんだべぇ。オラには娘がいでよぉ、『大書庫』の発掘作業中に娘が行方不明になっちまったんだべぇ!!」


そう言って泣き崩れる中年!

小声で話し始める高田ーズ!


「(おいヤス! 知らない単語が出てきすぎだ!『スコッパー』と『大書庫』ってなんだ!?)」


「(『大書庫』というのは、小説家になろうの50万近い作品の全てが納められている深度6371kmの縦穴――――超巨大保管庫の事です!)」


「(おい、どういうことだ! 何故保管にそんな巨大な縦穴を作る必要がある! サーバーを用意すれば済む話だろ!)」


ヤスの言葉に珍しくまともな指摘をする高田!

伊勢海町に雪が降り始める!


「(そんな簡単な話じゃないんですよ高田さん! 電子媒体というものは文明が滅んだら経年劣化で、すぐ閲覧できなくなってしまうんです! なので、文明が頻繁に崩壊してサーバーが吹き飛ぶこの世界では、記憶に残りづらいマイナーな作品は紙や石版で保存をするのが基本なんです!)」


「(そうさ――そして、その大書庫に潜って名作を掘り出して公表する者達を『スコッパー』というのさ。『大書庫』はとても危険な場所なんだ。命を落とす者も少なくない。それでも作者が失踪してしまったり所有データを紛失してしまった場合、作品は『大書庫』にしか現存していないことになる。命をかけて発掘する価値は充分にあるということさ)」


「おいオッサン! そんな危ない場所に娘を連れて行ったのか!?」


「オラの娘はまだ見習いのスコッパーなのに『昔の“自分の作品”を掘り出したいから』って、こっそりオラについて来ちまっててよぉ……。オラは娘の尾行に気づいて一緒に引き返そうとしたんだけど、地上に戻る途中ではぐれちまったんだぁ! 頼むべぇ! あんたらなろうファイターだべ? 一生のお願いだぁ……一緒に潜ってオラの娘と、その“作品”の二つを探してけろ!」


「他のヤツに頼めッ! 作品を探すってことは関係ない作品にも目を通さないといけないんだろ? 赤の他人の作品を探して読んでいる暇なんてないッ!」


「ま、ぶっちゃけそうなんですよねー。作品が50万近くあるのに登録者数がたった100万人なんですもん。ただでさえ供給が圧倒的過多なのに小説の作り手が他の人の作品をわざわざ読みに行くなんて、普通はしませんからね!」


「オッサン、そういうことはなろうの読者達に頼めッ! あいつら面白い作品に興味津々だろ!」


「それができたら苦労しないべぇ……オラ達が『スコッパー』なんて呼ばれ方してる理由がそこにあるんだぁ……」


中年の言っている意味を理解できずに体を『?』マークに湾曲させる高田に、二藤が懇切丁寧な補則をたたき込む!


「高田。作品が多すぎる現状、わざわざ“数字の低い実績の無い作品”を一般の読者は好き好んで読もうとしないんだよ……。それに一般的な読者が大書庫に潜るのは余りにも危険すぎる。潜れるのは腕の立つ『スコッパー』か、戦闘能力の高い『なろうファイター』だけなんだ。――――助けてあげたらどうだい高田? 高田の投稿するゴ=ミのような作品でも、スコッパーが掘り返してくれるからこそ日の光を浴びることができるわけだしね」


(なるほど、俺のような底辺にとってスコッパーという存在は大切なんだな!?)


「よしわかった! じゃあ、もし俺が娘さんを助けてその作品を見つけることができたら俺の――“高田浩二の作品”を世間に紹介してくれ! 報酬はそれでいい!」


「えぇ!? アンタがあの高田浩二さんなんだべか!? いやぁ、高田さんの作品はちょっと………………スコッパー界隈でも掘り返すだけで正気を疑われて村八分にされるらしいから無理だべぇ」








「殺されてえかテメエ!」


「抑えて高田! 抑えてよ!!」


「その怒りは執筆に向けましょう!」


暴れる高田を押さえ込む二藤とヤス!


「うぅ……もう駄目だべぇ……オラ達野良のスコッパーなんて――誰も助けてくれないんだべぇ……この世界にヒーローなんていないんだべぇ………………」


そう言って絶望からその場に座り込む中年!


「仕方ない。オッサン――顔を上げなッ!」


はっとして、中年が顔を上げる!

そこに手を差し伸べる、我等が主人公高田浩二!






「――――――いくら出せる!?」





――――――――――――――――――――――――――――――――



かくして! 高田達は『大書庫』の入り口に移動する!


「――というわけで高田さん! ここがその『大書庫』ですよ! 凄いでしょ!」


「凄まじい大きさの縦穴だな! デカすぎて穴の外周の果てが見えないぞ!!」


そう言って高さを確認するために、執筆用のノートパソコンを放り投げる高田!

いつまで経っても落下の音は返ってこなかった!



『オーライ! オーライ! オーライ! いいぞ! その調子だ! もう少しで引き上げられるぞ~!!』




高田の視線の先には、穴の淵に立って作業する謎の集団!

最先端の巨大な重機を使って、穴の底から小型のハードディスクのような物を大量に引き上げている!



「おいオッサン! 穴の淵で工事現場みたいな事をやっている連中は何者だ!? あいつらが引き上げているのは普通の電子記録媒体じゃないか!」


「あれは『スコ速』だべぇ。チームを組んで地下『第一層』の発掘作業をする連中だベ」


「『スコ速』だと!? 聞いたことが無いぞ!」


「『スコ速』はジャンルは多岐にわたるけど、なんやかんやで一般常識や人倫からは逸脱していない安定感のある作品を取り扱っているんだよ。大衆向けの大企業ってところだね。読み返される頻度が高くて文明が崩壊しても再生される可能性の高い作品は、ああやってすぐ取り出せる地下『第一層』に保存されるんだ。この前、電磁パルス攻撃があったばかりで電子機器が全部死んだから、作品の復旧も兼ねているんだろうね」


http://scoopersokuhou.blog.fc2.com/


「スコッパー界隈も、一枚岩では無いと言うことか!」


「ちなみに高田さん! この縦穴は、地上で起きるどんな衝撃(ダメージ)も耐えることができる“物語のシェルター”も兼ねてるんです! そしてここに直接爆撃を行うことは国際条約で禁止されているんですよ!」


(なるほど。結構、考えられているんだな!)


「ところでオッサン! 娘とはぐれたのは地下の何層なんだ?」


「実は……『第三層』の入り口の前ではぐれちまっただあ……」


中年の『第三層』という言葉を聞いた瞬間に、息を呑むヤスと二藤!


「な……なんだ! どうしたッ!? どんだけ危ないんだその場所はッ!」


「高田。『大書庫』は便宜上、大きく分けて“10個の層”に分かれているんだけど『第三層』は人間が生存できる限界の危険域なんだよ。『第三層』から生還できた人間は二桁以下で全員記憶を失っていた。そして四層より下に行って生きて帰ってきた者はいないらしい、というか間違いなくいない」


「えッ!?!?!?!?!?!? 全部で十層あるのにか!? 八層とか九層とかじゃなくて三層で既に危険なのかッ! 一体どうなってるんだ!?」


なろうの闇の深さに驚愕する高田浩二!


「オラはこう見えて熟練のスコッパーなんだべ。だども、もしオラの娘の『昌子』が三層に行っちまったとなると、オラだけじゃあ手も足も出ないんだべ……」


「なるほど! それで俺達の出番なんだな! 心配するな! 報酬の500円があるからな!」


文字通り安請け合いしてしまっていた高田浩二!

かくして、彼等は巨大な縦穴を降りていくのであった!

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